航空保安無線施設の電波的性能 | |||||||||
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アンテナー |
システム名称 | 地上装置 | 機上装置 |
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VOR | アルフォード | 水平ダイポール(小型機) 埋込E形、バランストループ形、角形(大型機) |
ILS-LLZ | LPDA (ENRI)、 LPDA (ILS-80T型) LPDA (ILS-91型) コーナーリフレクタ |
水平ダイポール(小型機) 埋込E形、バランストループ形、角形(大型機) |
ILS-GP | GPアンテナ | 機首ベントダイポール |
マーカー | 水平ダイポールスタック | 埋込キャビティ形、機体外部船形 |
DME | 垂直円筒ダイポールスタック | 外付ブレード形 |
A/G-VHF | 垂直ダイポール | 外付ブレード形 |
A/G-HF | ロンビック | 尾翼埋込ループアンテナ |
NDB | T形、垂直形 | 埋込ループアンテナ、機体外ループアンテナ |
MLS | 電子走査アンテナ | ホーンアンテナ |
GPS | パッチアンテナ | ヘリカルアンテナ |
MTSAT | パラボラ | パラボラ、スロットアレー、パッチアレー、 |
ASR等1次レーダー | パラボラ | − |
SSR | オープンアレー | 外付ブレード形 |
ACAS | − | 埋込4素子フェーズドアレー |
機上気象レーダー | フラット、パラボラ | − |
電波高度計 | − | ホーンアンテナ |
余裕があればハム用アンテナについても取り上げてみたいと考えています。
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○ LPDA(ENRI) (Log Periodic Dipole Antenna)
更新日 | 内 容 |
2007.02.19 | 1.外観、 2.構造、 3.単体特性、 5.特徴 |
2007.03.20 | 4.14個のアレー特性追加 |
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図1 LPDAアンテナ写真 |
2.構 造
アンテナの特性を解析するには、正確な構造図が必要です。空港へ行って計測することができないので、写真等を参考にして寸法を図2の通りとしました。
一般的なLPDAは、上側のブームは給電用同軸ケーブルの中心導体に接続され、下側のブームは同軸ケーブルの外部導体に接続されます。ブームはエレメントの支持と、エレメント間の伝送線路というの2つの役目を持っています。ブームの特性インピーダンスZ0は、ブームの直径dと2本のブームの中心間の間隔Dで次式により決定されます。今回の計算では、50Ωとしました。
Z0=273 log10(D/d) 〔Ω〕
−−−−−−−− | 図2 ローカライザ用LPDA構造図 |
3.アンテナ単体特性の計算結果
計算値と測定値の比較を表1に示します。
測定値は、独立行政法人(元運輸省)電子航法研究所報告No.48、「LPDA型ローカライザ空中線の性能評価について」石橋寅雄、山田公男、横山尚志、中村正明、(1985.1)の表2から引用しました。同報告書は、次のホームページで閲覧できます。
http://www.enri.go.jp/report/kenichi/index.htm
電子航法研究所の測定値は、組織名「ELECTRONIC NAVIGATION RESEARCH INSTITUTE」の略称をとって、今後ENRIと標記します。
AVITECでの計算値は、AVITECと標記します。
表1 計算値(AVITEC)と測定値(ENRI)の比較
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周波数110MHzにおける、E面パターンを図3に、H面パターンを図4に示します。
測定値は、上記ENRI報告書の図6の最大利得を、同表2の平均利得11.4dBiに換算してあります。
なお、方位角の取り方は±が左右逆になっています。
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図3 周波数110MHzにおけるE面パターン |
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図4 周波数110MHzにおけるH面パターン |
・ 図3及び図4の放射パターンを見ると、計算値と測定値は、かなり似ています。
・ 表1のVSWRを見ると、アンテナの中心周波数が低い方にずれているようです。
・ アンテナ素子の正確な寸法を入れて再度、計算してみる必要があります。
4.アンテナ14個のアレー特性の計算結果
比較的短い滑走路用に開発された14個のLPDAで構成される1周波方式TYPETの水平面指向性を図5〜図7に示します。
アンテナ単体は上記3の特性をもつものと仮定し、アンテナ素子間隔を実用アンテナと同じく1.636m(110MHzで0.6λ)としました。
各素子への給電電流比と位相は下表のとおりです。
素子番号 | L7 | L6 | L5 | L4 | L3 | L2 | L1 | R1 | R2 | R3 | R4 | R5 | R6 | R7 |
キャリア電流 | 0.09 ∠0° |
0.08 ∠0° |
0.24 ∠0° |
0.19 ∠0° |
0.46 ∠0° |
0.23 ∠0° |
1.0 ∠0° |
1.0 ∠0° |
0.23 ∠0° |
0.46 ∠0° |
0.19 ∠0° |
0.24 ∠0° |
0.08 ∠0° |
0.09 ∠0° |
サイドバンド電流 | 0.28 ∠+90° |
0.30 ∠+90° |
0.52 ∠+90° |
0.45 ∠+90° |
0.68 ∠+90° |
0.41 ∠+90° |
1.0 ∠+90° |
1.0 ∠-90° |
0.41 ∠-90° |
0.68 ∠-90° |
0.45 ∠-90° |
0.52 ∠-90° |
0.30 ∠-90° |
0.28 ∠-90° |
図5は、キャリア放射パターンです。横軸は方位角を示し、0度は滑走路中心線方向、90度は中心線と直角の方向を示します。放射パターンは滑走路中心線に対して左右対称なので片側の90度分のみを示してあります。青色の曲線はAvitecの計算値です。赤色の曲線は「航空無線施設ハンドブック(技術編)、ILS資料-3、図1、(a)」および「ILS理論、2.1.2、第2.1-9図、(a)」に記載されている特性を引用したものであり、アンテナ素子は無指向性として計算されています。
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図5 LPDAを14個並べたときのキャリア放射パターン |
図6は、サイドバンド放射パターンです。青色の曲線はAvitecの計算値です。赤色の曲線は「航空無線施設ハンドブック(技術編)、ILS資料-3、図1、(b)」および「ILS理論、2.1.2、第2.1-9図、(b)」に記載されている特性を引用したものであり、アンテナ素子は無指向として計算されています。
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図6 LPDAを14個並べたときのサイドバンド放射パターン |
図5、図6とも方位角が12.5度以上では、青色パターンのほうが赤色パターンより電界強度が大きくなっています。この差の原因は、アンテナ単体の特性の違いと、LPDA素子相互間の結合度の有無によるものと考えられます。(下表を参照してください。)
前述の独立行政法人(元運輸省)電子航法研究所報告No.48、「LPDA型ローカライザ空中線の性能評価について」石橋寅雄、山田公男、横山尚志、中村正明、(1985.1)の図9に、24素子のLPDAの測定値と計算値の比較曲線があるので参考にして下さい。方位角10°をこえると、相対電界強度の測定値は計算値より徐々に大きくなることがわかります。同報告書3.3(a)には「コースから±10度以上の角度では、図9からわかるように、隣接素子による放射パターンの広がりのため、設計値と3dB以上の差が生じている。」と記述されています。(なお同報告書における計算値は、素子相互間の結合度を考慮しているのか不明です。)
区 分 | 青色パターン (Avitec計算) |
赤色パターン (ハンドブック) |
単体素子の種類 | LPDA | 無指向性 |
素子相互間の結合度 | 有り | 無し |
図7は、放射パターン計算値(Avitec)を極座標表示したものです。赤色はキャリアパターン、青色はサイドバンドパターンです。
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図7 LPDAを14個並べたときのキャリア及びサイドバンドパターン |
5.LPDAの特徴
LLZ空中線としてLPDAを選定した理由を、ENRI報告書(付録1.C)から引用します。
(1) 相互結合度が小さい。
LPDAは他の空中線素子と比較して相互結合度が小さいと考えられているので放射パターンは電力
分配機の給電電流比によってほとんど決定される。そのため調整工事の能率化を図ることができる。
(2) 広帯域特性を有する。
広帯域特性を有するため、着雪、着氷、鳥害等の環境変化に対して空中線の特性変化が少ない。
(3) 電波的透明度が高い。
PT-24型空中線(コーナーリフレクタ型)、及びウエイブガイド空中線と比較して電波的透明度が高く、
将来MLSを併設する場合に有利である。
(4) 空中線の設置高を低くできる。
空中線の設置高を2m(従来型は3m以上)程度とすることができるため、設置場所の敷地条件が緩
やかである。
(5) バックコース抑圧度を高くすることができる。
素子パラメータを適切に設定することにより従来型空中線と同程度にバックコースを抑圧できるので
後方放射の影響を受けにくい。
○ LPDA(ILS-80T型) (Log Periodic Dipole Antenna)
更新日 | 内 容 |
2008.07.25 | 1.外観、 2.構造、 3.単体特性、 4.14個のアレー特性 |
本LPDAの写真および構造データは、酒徳忍氏(航空保安大学校・岩沼研修センター)のご厚意により提供頂きました。厚くお礼申し上げます。 |
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図1 ILS-80T型空中線外観写真 | |
本LPDAの写真は、酒徳忍氏(航空保安大学校・岩沼研修センター)のご厚意により提供頂きました。厚くお礼申し上げます。 |
2.構 造
アンテナの主要な寸法を図2に示しました。
ブームは直径(外径)3cmの中空円形パイプです。
放射素子には直径1cm〜1.4cmのアルミ中空パイプが使われています。各素子は上下のブームに接続されています。各素子の長さおよび間隔の諸元は省略しました。
給電点は短い素子側(下図では右側)の上下のブームの端です。給電用同軸ケーブルの中心導体は上側ブームに、外部導体は下側ブームに接続されています。
ブームは長い素子の位置から外側(下図では左側)に約30cm延長されており、ほぼ中間の約15cmの点でショートバー(短絡片)により上下のブームは短絡されています。
−−−−−−−− | 図2 ILS-80T型ローカライザ用LPDA構造図 |
3.アンテナ単体特性の計算結果
計算値と測定値の比較を表1に示します。
測定値は、ILS-80T型空中線の社検データの例です。計算値はAVITECと標記しました。計算値は112MHzでの平均利得7.8dbiが規格を満たしていませんが、それ以外の値は規格値以内となっています。
表1 ILS-80T型の計算値(AVITEC)と測定値の比較
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図3は周波数110MHzにおける、E面パターンを示します。
(a)図は測定値であり社検データから引用させて頂ました。測定データをみると±60度以上の方位角では、24個のアンテナの放射パターンはかなり異なりますが、LLZの有効な方位角は±35度以内であるので、この差異は実際上全く問題にはなりません。
(b)図はAVITEC計算値です。±60度以内の方位角では、(a)図の測定値とほぼ一致しています。
(a) 測定値 (社検データ) | |
ーーーーーーー | |
(b) AVITEC計算値 | |
図3 ILS-80T型の周波数110MHzにおけるE面パターン |
図4は周波数110MHzにおける、H面パターンを示します。
(a)図は測定値であり社検データから引用させて頂ました。測定データをみると±60度以上の方位角では、24個のアンテナの放射パターンはかなり異なりますが、この差異は実際上全く問題にはなりません。
(b)図はAVITEC計算値です。±60度以内の方位角では、(a)図の測定値とほぼ一致しています。
(a) 測定値 (社検データ) | |
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(b) AVITEC計算値 | |
図4 ILS-80T型の周波数110MHzにおけるH面パターン |
4.アンテナ14個のアレー特性の計算結果
比較的短い滑走路用に開発された14個のLPDAで構成される1周波方式の水平面指向性を図5〜図7に示します。
アンテナ単体は上記3の特性をもつものと仮定し、アンテナ素子間隔を実用アンテナと同じく1.636m(110MHzで0.6λ)としました。
各素子への給電電流比と位相は下表のとおりとしました。
素子番号 | L7 | L6 | L5 | L4 | L3 | L2 | L1 | R1 | R2 | R3 | R4 | R5 | R6 | R7 |
キャリア電流 | 0.09 ∠0° |
0.08 ∠0° |
0.24 ∠0° |
0.19 ∠0° |
0.46 ∠0° |
0.23 ∠0° |
1.0 ∠0° |
1.0 ∠0° |
0.23 ∠0° |
0.46 ∠0° |
0.19 ∠0° |
0.24 ∠0° |
0.08 ∠0° |
0.09 ∠0° |
サイドバンド電流 | 0.28 ∠+90° |
0.30 ∠+90° |
0.52 ∠+90° |
0.45 ∠+90° |
0.68 ∠+90° |
0.41 ∠+90° |
1.0 ∠+90° |
1.0 ∠-90° |
0.41 ∠-90° |
0.68 ∠-90° |
0.45 ∠-90° |
0.52 ∠-90° |
0.30 ∠-90° |
0.28 ∠-90° |
図5は、キャリア放射パターンです。横軸は方位角を示し、0度は滑走路中心線方向、90度は中心線と直角の方向を示します。放射パターンは滑走路中心線に対して左右対称なので片側の90度分のみを示してあります。
緑色の曲線はILS-80T型のAvitec計算値です。青色のLPDA(ENRI)のAvitec計算値とかなり一致しています。
青色の曲線は前述のLPDA(ENRI)のAvitec計算値です。
赤色の曲線は「航空無線施設ハンドブック(技術編)、ILS資料-3、図1、(a)」および「ILS理論、2.1.2、第2.1-9図、(a)」に記載されている特性を引用したものであり、アンテナ素子は無指向性として計算されています。
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図5 ILS-80T型LPDAを14個並べたときのキャリア放射パターン |
図6は、サイドバンド放射パターンです。
緑色の曲線はILS-80T型のAvitec計算値です。青色のLPDA(ENRI)のAvitec計算値とかなり一致しています。
青色の曲線は前述のLPDA(ENRI)のAvitec計算値です。
赤色の曲線は「航空無線施設ハンドブック(技術編)、ILS資料-3、図1、(a)」および「ILS理論、2.1.2、第2.1-9図、(a)」に記載されている特性を引用したものであり、アンテナ素子は無指向性として計算されています。
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図6 ILS-80T型LPDAを14個並べたときのサイドバンド放射パターン |
図5、図6とも方位角が12.5度以上では、青色および緑色パターンのほうが赤色パターンより電界強度が大きくなっています。この差の原因は、アンテナ単体の特性の違いと、LPDA素子相互間の結合度の有無によるものと考えられます。
○ LPDA(ILS-91型) (Log Periodic Dipole Antenna)
更新日 | 内 容 |
2008.07.25 | 1.外観、 2.構造、 3.単体特性、 4.14個のアレー特性、 |
本LPDAの写真および構造データは、酒徳忍氏(航空保安大学校・岩沼研修センター)のご厚意により提供頂きました。厚くお礼申し上げます。 |
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図1 ILS-91型空中線外観写真 | |
本LPDAの写真は、酒徳忍氏(航空保安大学校・岩沼研修センター)のご厚意により提供頂きました。厚くお礼申し上げます。 |
2.構 造
アンテナの主要な寸法を図2に示しました。
ブームは断面が正方形の中空パイプであり、1辺の長さ(外径)は2cmです。上側ブームと下側ブームの中心間隔は2.5cmです。従って上下2本のブームの間には5mmの隙間(空間)があります。
放射素子には直径1cm〜1.4cmのアルミ中空パイプが使われています。各素子は上下のブームに接続されています。各素子の長さおよび間隔の諸元は省略しました。
給電点は短い素子側(下図では右側)の上下のブームの端です。給電用同軸ケーブルの中心導体は上側ブームに、外部導体は下側ブームに接続されています。
ブームは長い素子の位置から外側(下図では左側)に約30cm延長されており、中間より左側の約21cmの点でショートバー(短絡片)により上下のブームは短絡されています。
−−−−−−−− | 図2 ILS-91型ローカライザ用LPDA構造図 |
3.アンテナ単体特性の計算結果
計算値と測定値の比較を表1に示します。
測定値は、ILS-91型空中線の社検データ(未入手)を記入の予定です。計算値はAVITECと標記しました。
表1 ILS-91型の計算値(AVITEC)と測定値の比較
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図3は周波数110MHzにおける、E面パターンを示します。
(a)図は測定値として、入手できましたら社検データを記入の予定です。
(b)図はAVITEC計算値です。
未入手 | |
(a) 測定値 (社検データ) | |
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(b) AVITEC計算値 | |
図3 ILS-91型の周波数110MHzにおけるE面パターン |
図4は周波数110MHzにおける、H面パターンを示します。
(a)図は測定値として、入手できましたら社検データを記入の予定です。
(b)図はAVITEC計算値です。
未入手 | |
(a) 測定値 (社検データ) | |
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(b) AVITEC計算値 | |
図4 ILS-91型の周波数110MHzにおけるH面パターン |
4.アンテナ14個のアレー特性の計算結果
比較的短い滑走路用に開発された14個のLPDAで構成される1周波方式の水平面指向性を図5〜図7に示します。
アンテナ単体は上記3の特性をもつものとし、アンテナ素子間隔を1.636m(110MHzで0.6λ)としました。
各素子への給電電流比と位相は、ILS-80T型と同一の下表としました。
素子番号 | L7 | L6 | L5 | L4 | L3 | L2 | L1 | R1 | R2 | R3 | R4 | R5 | R6 | R7 |
キャリア電流 | 0.09 ∠0° |
0.08 ∠0° |
0.24 ∠0° |
0.19 ∠0° |
0.46 ∠0° |
0.23 ∠0° |
1.0 ∠0° |
1.0 ∠0° |
0.23 ∠0° |
0.46 ∠0° |
0.19 ∠0° |
0.24 ∠0° |
0.08 ∠0° |
0.09 ∠0° |
サイドバンド電流 | 0.28 ∠+90° |
0.30 ∠+90° |
0.52 ∠+90° |
0.45 ∠+90° |
0.68 ∠+90° |
0.41 ∠+90° |
1.0 ∠+90° |
1.0 ∠-90° |
0.41 ∠-90° |
0.68 ∠-90° |
0.45 ∠-90° |
0.52 ∠-90° |
0.30 ∠-90° |
0.28 ∠-90° |
図5は、キャリア放射パターンです。横軸は方位角を示し、0度は滑走路中心線方向、90度は中心線と直角の方向を示します。放射パターンは滑走路中心線に対して左右対称なので片側の90度分のみを示してあります。
黒色の曲線はILS-91型のAvitec計算値であり、緑色のILS-80T型のAvitec計算値と方位角80度付近までほぼ一致しています。
青色の曲線は前述のLPDA(ENRI)のAvitec計算値です。
赤色の曲線は「航空無線施設ハンドブック(技術編)、ILS資料-3、図1、(a)」および「ILS理論、2.1.2、第2.1-9図、(a)」に記載されている特性を引用したものであり、アンテナ素子は無指向性として計算されています。
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図5 ILS-91型LPDAを14個並べたときのキャリア放射パターン |
図6は、サイドバンド放射パターンです。
黒色の曲線はILS-91型のAvitec計算値であり、緑色のILS-80T型のAvitec計算値と方位角80度付近までほぼ一致しています。
青色の曲線は前述のLPDA(ENRI)のAvitec計算値です。
赤色の曲線は「航空無線施設ハンドブック(技術編)、ILS資料-3、図1、(a)」および「ILS理論、2.1.2、第2.1-9図、(a)」に記載されている特性を引用したものであり、アンテナ素子は無指向性として計算されています。
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図6 ILS-91型LPDAを14個並べたときのサイドバンド放射パターン |
図5、図6とも方位角が12.5度以上では、青色、緑色、黒色パターンのほうが赤色パターンより電界強度が大きくなっています。この差の原因は、アンテナ単体の特性の違いと、LPDA素子相互間の結合度の有無によるものと考えられます。
更新日 | 内 容 |
2007.02.19 | 1.外観、 2.構造、 3.単体計算結果、 5.特徴 |
2007.04.02 | 4.アレー特性 |
図1 LLZ用コーナーリフレクタアンテナ写真
2.構 造
コーナーリフレクタアンテナの構造図を図2に示します。
(図2は、電子航法研究所報告、No.3、「ILSローカライザ空中線の研究」石橋寅雄、山田公男、横山尚志、1971.3、ページ4、図1を引用しました。)
反射器は60度のコーナーリフレクタの変形であり、直径4ミリメートルの銅線を水平に15センチメートルの間隔で張ってあります。
11個のダイポールアンテナを用いており、中心ダイポールとその両側ダイポールとの距離は1/2波長、その他のダイポール間隔は3/4波長です。中心ダイポールは先端を折り曲げて放射パターンのビーム幅を広くしています。
(電子航法研究所報告、No.3、「ILSローカライザ空中線の研究」の図1を引用しました。)
図2 ローカライザ用コーナーリフレクタアンテナ構造図
3.アンテナ単体の指向性
コーナーリフレクタと1個のダイポールアンテナアンテナを用いた測定値(ENRI)と計算値(Avitec)の比較を表1に示します。
測定値は、上記の電子航法研究所報告No.3の図2から引用しました。同報告書は、次のホームページで閲覧できます。
http://www.enri.go.jp/report/kenichi/index.htm
ENRIの測定値は、約1:17.5の縮尺模型実験を行って得られたものです。反射板は全長1m(実周波数に換算すると17.6m)のアルミニューム板とし、その中心に半波長ダイポール1個を取り付けてあります。実験周波数は1950MHzです。
Avitecの計算は、周波数110MHzで行いました。また、反射板は幅10m、直径4ミリメートルの導線を水平に間隔10センチメートルで張ったものとしています。一般に、水平導線の間隔は波長2.73mの1/10以下の27.3センチメートル以下であれば良いとされています。
周波数110MHzにおける、E面パターンを図3に、H面パターンを図4に示します。このアンテナの場合、E面パターンは水平面指向性に相当し、H面パターンは垂直面指向性に相当します。
図3及び図4の放射パターンを見ると、計算値と測定値は40度まではかなり似ています。
日本のローカライザのサービス範囲は滑走路中心方位±35度であり、図3のE面パターンをみると当該角度内においては計算値を使っても支障ないと思われます。
ENRIの計算値は記載しませんでしたが、図3及び図4の測定値を用いて放射パターンをフーリエ級数により解析し、級数の係数を求めて、素子単体の近似式を導いています。4項のアレー特性のENRIのパターン計算においては、この近似式を用いて計算をおこなっています。
なお、ENRI報告書では、空中線利得の測定値は約9dBであったと記されていますが、計算では10.5dBiとなりました。
また、入力インピーダンスの計算値は、45.1-j120〔Ω〕です。
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図3 周波数110MHzにおけるE面パターン |
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図4 周波数110MHzにおけるH面パターン |
4. 11素子コーナーリフレクタ空中線のアレー特性の計算結果
上記の図2に示した11素子コーナーリフレクタ空中線の水平面指向性を図5〜図8に示します。
各素子への給電電流比と位相は下表のとおりです。電子航法研究所報告No.3の表2と同じ値を用いました。
素子番号 | L5 | L4 | L3 | L2 | L1 | C | R1 | R2 | R3 | R4 | R5 |
キャリア電流 | 0.200 ∠0° |
0.386 ∠0° |
0.629 ∠0° |
0.854 ∠0° |
1.0 ∠0° |
2.2 ∠0° |
1.0 ∠0° |
0.854 ∠0° |
0.629 ∠0° |
0.386 ∠0° |
0.200 ∠0° |
サイドバンド電流 | 0.369 ∠+90° |
0.616 ∠+90° |
0.769 ∠+90° |
0.667 ∠+90° |
1.0 ∠+90° |
0.0 | 1.0 ∠-90° |
0.667 ∠-90° |
0.769 ∠-90° |
0.616 ∠-90° |
0.369 ∠-90° |
電子航法研究所報告No.3の図4から引用したキャリア(青色)、サイドバンド(赤色)、DDM(黒色)の水平面合成パターンの計算値を図5に示します。
サイドバンド放射パターンは、コース幅を4度に設定したときの値であると記載されています。
上記3.で記したとおり、ENRIでは、図3及び図4の測定値を用いて放射パターンをフーリエ級数により解析し、級数の係数を求めて、素子単体の近似式を導き、この近似式を用いて11素子の合成パターンを計算しています。
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図5 キャリア、サイドバンド、DDMの計算値(電子航法研究所報告No.3の図4から引用) |
Avitecでの、上表の電流分布で給電したときのキャリア、サイドバンド、DDMの水平面合成パターン計算値を図6に示します。
計算においては、図3及び図4に示した素子単体の指向性を用いず、11個のアンテナ相互間の影響を直接計算して合成パターンを求めています。コース幅の計算値は約4.8度となりました。
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図6 キャリア、サイドバンド、DDMの計算値(Avitec計算値) |
電子航法研究所報告No.3の図10から引用したキャリア放射パターンの計算値(緑色)及び航空機による測定値(赤色)のグラフ内に、Avitec計算値(青色)を記入したものを図7に示します。同報告書によれば、このデータは新潟空港内に実験用空中線を仮設して収集されたものであり、『航空機による測定は約5海里の半径、高度1000ftで周回飛行したときのILS受信機のAGC出力を受信機入力電圧に換算して放射パターンを測定した。』と記載されています。このときの航空機の仰角は約1.9度となります。空間におけるこのようなデータは極めて貴重なものです。データを引用させて頂いたことを感謝します。Avitecの計算値は、大地の導電率5×10-3、比誘電率13、仰角1.9度です。
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図7 キャリア放射パターンの実測値と計算値(電子航法研究所報告No.3の図10から引用) |
電子航法研究所報告No.3の図11から引用したサイドバンド放射パターンの計算値(緑色)及び航空機による測定値(赤色)のグラフ内に、Avitec計算値(青色)を記入したものを図8に示します。
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図8 サイドバンド放射パターンの実測値と計算値(電子航法研究所報告No.3の図11から引用) |
5.PT-24コーナーリフレクタ空中線の特徴
(1) 空中線後方への放射が少なく、後方の電波反射体によるコースの乱れが少ない。
(2) 利用範囲が、±35度に限られる。
(3) 空中線利得が大きいので、送信機出力が35Wと小さくても良い。
(4) ウエイブガイド空中線と比較して壊れやすい構造であり、航空機が衝突しても安全である。
(5) 空中線頂部の地上高は、3m以上必要である。
更新日 | 内 容 | |
2007.04.19 | 1.外観、 2.構造、 3.単体計算結果、 4.地面を考慮した放射パターンの計算結果、 5.特徴 | |
2008.08.04 | NEW | 「3.アンテナ単体の指向性」に実測値(社検データ)を含んだ表1を追加した。説明文にも修正を加えた。 |
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図1 2周波方式グライドパスアンテナ写真 |
2.構 造
コーナーリフレクタアンテナの構造図を図2に示します。
反射器は、90度のコーナーリフレクタの変形であり、直径4ミリメートルの銅線を水平に5センチメートルの間隔で張ってあります。
放射器は、3個のダイポールアンテナを直列に配置し、中央のダイポールと左右のダイポールとの間には約半波長のフェージングライン(移相器)が設けてあります。給電は中央のダイポールのみに行います。
このアンテナは、反射器付コリニアアンテナまたは反射器付フランクリンアンテナと呼ぶことができます。実際のアンテナは、降雪、風雪、塩害等による電気的特性の変化を避けるため、3個のダイポールアンテナと移相器はFRPのカバーで覆ってあります。
なお、位相器部分の詳細な構造は不明です。
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図2 グライドパス用コーナーリフレクタアンテナ単体構造図(単位m) |
3.アンテナ単体の指向性
グライドパスアンテナ91D型の実測値データは、酒徳忍氏(航空保安大学校・岩沼研修センター)のご厚意により提供頂きました。厚くお礼申し上げます。 |
計算値と測定値の比較を表1に示します。
表1 GPアンテナ(91D型)の測定値と計算値(AVITEC)の比較 F=332MHz (測定値追加2008.8.4)
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図3は、91D型空中線の周波数332MHzにおける水平面パターンと垂直面パターンの実測値(社検データ例)です。
実測データは18種類あります。内訳は、2(E面、H面)*3(周波数329, 332, 335 MHz)*3(3段のアンテナ)です。ここでは、1個のアンテナについて、中心周波数332MHzのデータのみを抜粋しました。
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(a) 水平面パターン(実測値:332MHz) |
(b) 垂直面パターン(実測値:332MHz) |
図3 グライドパスアンテナ91D型単体の実測パターン例 (周波数:332MHz) |
図4は、周波数332MHzにおける、空中線単体の水平面パターンの実測値と計算値です。
緑色のパターンは、実測値です。中心方位±20度以内では青色のパターンとほぼ一致しています。±20度から±90度へと方位角の増加に伴って両者の差が大きくなります。
青色のパターンは、コーナーリフレクタ付の3個のダイポールを等振幅・同位相で給電したときの計算値(Avitec)です。移相器は無いものとして計算しています。『ILS理論』(航空保安大学校岩沼分校編集)3.1.2項の放射特性の計算は、この方法を用いています。
赤色のパターンは、図2に示した移相器付アンテナの中央のダイポールのみに給電したときの計算値(Avitec)です。長さ約1/4波長の移相器部分からの電波放射が存在すると仮定しているためアンテナ軸の方向にかなりの電界強度が存在しています。また、移相器のジャンパー部分(長さ約4p)は電流分布が最大であるため放射パターンに若干の影響を与えているものと思われます。
図4をみると、グライドパスアンテナの位相器部分は、電波放射が抑圧されるように設計されているものと考えられます。
なお、グライドパスの水平面内のサービス範囲は中心方位±8度です。
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図4 周波数332MHzにおける水平面パターン(緑色は実測値) |
図5は、周波数332MHzにおける、空中線単体の垂直面パターンの実測値と計算値です。
緑色のパターンは、実測値です。中心方位±90度以内では青色のパターンとほぼ一致しています。
青色のパターンは、コーナーリフレクタ付の3個のダイポールを等振幅・同位相で給電したときの計算値(Avitec)です。移相器は無いものとして計算しています。
赤色のパターンは、図2に示した移相器付アンテナの中央のダイポールのみに給電したときの計算値(Avitec)です。長さ約1/4波長の移相器部分からの電波放射が存在すると仮定しているためアンテナ軸の方向にかなりの電界強度が存在しています。また、移相器のジャンパー部分(長さ約4p)は電流分布が最大であるため放射パターンに若干の影響を与えているものと思われます。
図5をみると、グライドパスアンテナの位相器部分は、電波放射が抑圧されるように設計されているものと考えられます。
また、グライドパスシステムは、直接波と大地反射波を利用して空間に降下角3度(民間空港用)の電波誘導路を形成していますので、垂直面パターンは適切な広がりを持つ必要があります。
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図5 周波数332MHzにおける垂直面パターン(緑色は実測値) |
図6は、水平面パターンの極座標表示です。青色は同相給電方式、赤色はコリニア方式、緑色は1ダイポール方式の計算値です。
(注意: 図6には、実測値は記入してありません。)
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図6 周波数332MHzにおける水平面パターン(極座標表示) |
図7は、垂直面パターンの極座標表示です。青色は同相給電方式、赤色はコリニア方式、緑色は1ダイポール方式の計算値です。
(注意: 図7には、実測値は記入してありません。)
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図7 周波数332MHzにおける垂直面パターン(極座標表示) |
4. 2周波方式グライドパス空中線の地面を考慮した放射パターンの計算結果
2周波方式グライドパスの空中線は、アンテナ鉄塔の側面に地上高1:2:3の比で、3段にコーナーリフレクタアンテナが取り付けられています。搬送波周波数が332MHzでグライドパス角度が3度のとき、3段の空中線地上高はそれぞれ4.313m(下段)、 8.627m(中段)、 12.940m(上段)になります。ただし、空中線前方の反射面は平坦で完全導体であると仮定しています。
図8は、地上高8.627mの中段空中線の前方向において仰角20度〜0度の垂直面パターンです。降下角3度およびその整数倍の6度、9度、12度で電界強度が極小(ナル)を生じています。
なお、グラフ表示は省略しますが、下段アンテナは6度およびその整数倍の12度、18度、・・でナルを生じます。また上段アンテナは2度およびその整数倍の4度、6度、8度、10度、・・でナルを生じます。
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図8 中段空中線(地上高8.627m)の垂直面パターン |
5.グライドパス空中線の特徴
(1) 空中線後方への放射が少なく、後方の電波反射体によるコースの乱れが少ない。
(2) 利用範囲が、方位±8度に限られる。通達距離は10NM(18.5q)以上です。
(3) 空中線利得が約10dB以上と大きいので、送信機出力が小さくても良い。
(4) 空中線頂部の地上高は、14m程度必要となる。