読み聞かせ
実践者にきく
このページは「読み聞かせ」を実践されているA子さんに、歴史や活動の経緯についてきいたことを載せます。A子さんは20年ほど前からこの活動に取り組んでおり、現在も公民館講座で「読み聞かせ」の指導に当たっています。

「読み聞かせ」という名称の起源。
1967年に創立された「日本子どもの本研究会」の活動で〈読み聞かせ〉という言葉がはじめて使われた。これはテレビの普及により子どもたちの「読書離れ」が始まったのを心配し
もっと子どもたちに本を、」との目的で〈読み聞かせ〉という名称を用い、今日の〈読み聞かせ〉スタイルを提唱したことがはじめである。
類似する表現として「読み語り」とか「お話しの会
とか、「語りの会とかある。絵本の読み聞かせについては、現在はこの読み聞かせという名称が広く一般に使われるようになった。

「宮崎における活動の端緒」
A子さんの場合は「親子劇場」の活動に参加したのがきっかけだった。文庫活動など読書に熱心な母親の一員だった。そのとき講演に呼んだ福音館書店の松居
直さんとの出会いが彼女のその後を大きく決定づけることになった。松居さんは「絵本の世界はとても広がりがあって大人も子ども楽しめるものです。」と言われ、「子どもに与える本は作者がとても苦労して書いたものが多く中には一冊の本のために何十年もかけて調査をして完成させることもある。」と語り「絵本は子どもに読んでやるものです。」と言った。
福音館は「ぐりとぐら」や「こどものとも」で知られる著名な出版社である。
その頃宮崎県内には絵本専門の図書館はなかった。平成8年に木城町に「木城えほんの郷」という絵本の図書館が完成したこともあり、今では多くの絵本に恵まれている。A子さんは松居さんとの出会いを出発点としてその後地域の女性と共に〈読み聞かせ〉を始めるようになった。

親がわが子へ絵本を読んでやったり、幼稚園で保育士が絵本を子どもに読んでやることはよくあることだ。しかし小学生・中学生あるいは高齢者の人へ絵本を中心にして読んでいくということは〈読み聞かせ〉活動以前にはなかったと言っていい。
ここにこの活動の特徴がある。
A子さんは「読み聞かせ
の実践の中で多くのことを学んだ。
主役はかならず「絵本
である。読み手が主役ではない。聞き手の子どもと絵本をつなぐ役である。読み手は脇役なのだ、ということ。だから、あまりに声色を変えて脚色して読むのは作者の意図にそぐわないこともあるので気をつけなければならない。
本も
これを読んでほしいと指定された場合をのぞき、対象年齢や本の内容、時間をしっかり考えることが必要です。と述べている。

最近は一種の読み聞かせブームで、図書館や学校でも理解を示すようになった。誰でもできることではあるけれど、言葉の発声という手段を通じて表現するものなので、発音や姿勢、服装にも注意するのは当然である。発声はわかりやすく、声も後ろまで届くような大きさが必要。速度も速すぎてはいけない。自分は何度も練習して読んでいるものだが、子どもたちにとっては、はじめて聞くお話し、はじめて見る絵である。想念が広がる妨げをしてはならない。
姿勢は本を支えるスタイルがにわかには出来ないので経験者に学ぶこと。服装は本の内容にマッチしたものがいいが、そうでない場合は脇役らしく目立たない黒系統のものがふさわしい。など多くのアドバイスをいただいた。

5月から始まる那珂地区公民館の「読み聞かせボランティア講座にはA子さんに講師として数回出演して体験を語ってもらうことにしているので、多くを学んでほしい。 

釧路市役所のホームページを閲覧していたら「絵本を選ぶポイント」という興味深い記事があったので転載する。

《絵本を読んでもらう楽しさってなーに?》
子どもは絵本を読んでもらうのがとても好きです。字を覚え自分で読めるようになっても、やはりお母さんお父さん、祖父母、保育士に読んでもらいたいのです。それは次のような楽しいことがあるからです。

・読み手のやさしい声、肌、ぬくもりに触れる安心感、心地よさ。
一冊の絵本を読み合い、イメージ、感動、楽しさを共有できる嬉しさ。
・正しい言葉、豊かな言葉、ユーモアのある言葉を自然に覚える。
わからない言葉や意味を、読み手からその場でわかりやすく伝えてもらえる。
すばらしい絵、豊かな絵が言葉のもつイメージを膨らませてくれる。
聞く事の大切さを知ると共に、人の話をきちんと聞く習慣が自然に育つ。


《絵本を選ぶ時のポイントは?》
子どもの年齢や理解力にぴったり合った絵本を選びましょう。いろいろなジャンルの絵本を選びましょう。その中で子どもは大好きな絵本、大切な絵本にめぐりあえるのです。子どもの好きなテレビや漫画のキャラクターだけにとらわれないでください。(ひとつのイメージに固まって、豊かな想像力が育ちにくくなります。)
子どもが大好きな絵本を何度も読んでほしがるときは、どうぞ繰り返し読んであげてください。(その子の想像の世界が広がっているのです。)
お母さんやお父さんが子どものころ感動した絵本、楽しかった絵本、大好きだった絵本も選んでみましょう。(絵本を通してお母さんやお父さんの思い出、子どもへの願いや愛情が自然に伝わっていくでしょう。)
     

私の幼年期や少年期をふりかえると、本が大好きな子供だった。よその家まで遊びに行って、そこの本棚にある本を見せてもらった。本を読むと空想が広がって楽しかった。「ロビンソンクルーソー物語」や「15少年漂流記」「岩窟王」など夢中で読んだ。中学校では図書部員になり棚の本を手あたり次第に読んだ。ジュールベルヌの「海底2万マイル」は魂を吸い取られそうな面白さがあった。芥川龍之介の冷徹な心理描写と構成には感服させられた。本は心の糧だった。
ひとに本を読んできかせてもらう…のは、すばらしい贈り物と同等である。読み手と時間の共有がある。時は金なり、というが本当は時は金よりも尊い「生命」と同じなのだ。その大事な時間を自分のために頂ける…。すばらしい贈り物である。

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