話し方体験記
(スピーチ例) 6月28日

   スピーチ稿(2分)
                      「あざやかな場面」
                                          ひろりん 6月28日

私達の世代は「集団就職」といって、中学を卒業すると田舎から大阪などの中小企業へ労働者として一斉に就職しました。各地から団体専用の「就職列車」に乗り合わせて都会へ出てきました。

井沢八郎の「ああ上野駅」という歌がありますが、あの時代の歌であります。私の同級生も何人も大阪へ就職しました。ですから、今でも同級会は郷里でするより、大阪でしたほうが多く集まります。この数年、時々同級会をしたり、誘い合って旅行をして楽しみました。

その一人、大阪で働いていたA君が今年亡くなりました。千の風になりました。肺ガンでした。肺ガンというのはなかなか自覚症状がないそうで、医者に行った時はもう手遅れで手術もできず、自宅で、苦しくなる呼吸を助けるため、ベッドのそばに酸素吸入用のボンベを置いて漢方薬にたよる免疫療法を続けていたそうです。

亡くなる二週間前に見舞いに行った友人の話によりますと、「A君の枕もとにはアルバムがあって、そのアルバムの中には、この二・三年前、同級生達と一緒に旅行に行った写真があり、それをしみじみと見ていたよ…その姿がとても印象に残った。」と言っていました。

元気な時は、旅行に行った時の写真を見ても特別何も感じません。
しかし病気になって、酸素ボンベをかかえてないと生きられない。もう旅行に行く元気もなくなった時に見る「旅行の写真」はなんと輝いて見えることでしょう…。まさしく人生の〈鮮やかな場面〉であります。


今は苦しいけれども、元気な時はこんな楽しい日々もあったのだ…と。なに気ない普段の生活も、実は〈鮮やかに輝く場面〉ばかりなのであります。

次のページへ行く 前のページへ行戻る トップへ戻る ホームへ戻る