話し方教室
2月15日 (スピーチ実例)
人は古い話より最新のニュースに関心を持ちます。

新聞でとり上げられている最新の話題をもとに「自分の考え」を入れて構成しました。客観的な事実は新聞紙面からとり、あとは自分の体験や調査を加えて完成させます。ゴム製救命ボートの値段は知人の漁船の船長に電話をして教えてもらいました。(製造メーカーにより値段は違いますがおおむね40万〜50万円)。私もヨット競技で海上救助訓練を何度も体験しています。

エマージェンシー(非常事)遭遇時にどうなるか、自分の実感を加えてスピーチ用に表現しました。
            −この話は宮崎日日新聞の記事を基にスピーチ用に構成しました−


 スピーチ(3分)                                      2月15日
                         命の値段                  ひろりん


種子島沖はマグロがよく釣れる海なのです。宮崎県からは200qも離れた海上です。
日向市のマグロ漁船「幸吉(ゆきよし)丸」という小形船も3人が乗り組んでそこへ出漁しました。9日(金)朝は強い雨が降っていました。はえ縄という長い釣り糸を浮かべる作業のあと是沢船長が船舶日誌をつけていた時、突然ドーンという大きな音がして船が激しく揺れ自分も転がりました。起き上がって外を見ると船体の半分がなくなっているではありませんか!そして白い大きな船が通りすぎて行きました。衝突されたのです。

あんな広い海なのに何故他の船が近づくのがわからなかったのか…といいますと、自分の船のエンジンの音が近くでしている。風向きによっては海は反射物がないので音が逃げていきます。いわゆる「音もなく近づく」状態になります。ましてや広い太平洋ですから、いつも周辺を見張っていることは実際は少ないようです。そのためこういう海難事故はよくあるのです。

種子島沖はサメが多い海域です。ヘタに泳ぐと体温低下で水死するかサメの餌食になってしまいます。
ところが、日向市漁協の是沢幸広さんが船長として乗り組んでいた「幸吉丸」は、これからがドラマチックなのです。
是沢さんは日向市漁協でも「模範船長」といわれるくらい安全講習は毎回ちゃんと受ける、遭難訓練にも進んで参加する「若手の見本・手本」になるような船長でした。
船は9.1トンで小型なので救命ボートの設置義務はなく、ライフジャケットの積み込みで船舶検査に通るのですが、安全意識の高い是沢船長(48)は、万一に備えて折畳式のゴム製の救命ボートを積んでいた。これは、船が浸水すると自動的にガスでふくらみ、円形の2bくらいのビニールの屋根つきの救命ボートになります。

是枝さんは他の二人に大声をかけて誘導して3人でボートに乗りました。アッという間の出来事だった…といいます。気がついた時は漁船の残骸も見あたらず、あてもなく漂流していました。

種子島沖から流されると黒潮に乗って高知沖までながされます。非常食の18枚の乾パンを分けあって少しずつ口にし、ゴムボートの底に2ヶ所穴があいてそこから海水が浸水するのをくみ出しなから、体は水びたしなので夜や明け方の寒さにふるえながら頑張っていました。しかし、3日目の朝になったら寒さによる体力消耗と空腹で「もうダメかもしれない…」と思うようになりました。その時です、かすかにヘリコプターの爆音が聴こえてきた。捜索ヘリだ!と身をのり出して手を大きく振り、幸いにも第
10管区の「海猿/捜索機ヘリ」に発見され救助されました。

この3人の命を助けたゴム製の救命ボートの値段は50万円。
しかしゴムボートが3人を助けたのではなく、是沢船長の知恵と準備が命を救ったのことは言うまでもありません。もし、船舶検査には必要ないから、といってライフジャケットだけであったら、寒い海中で体温が下がりおそらく助からなかったことでしょう…。小さい漁船で50万円の救命ボートを備えるというのは誰でもできることではありません。
是沢船長は、まさに地獄の1丁目から50万円で3人の命を買い戻したのです。
「人の知恵と準備の大切さを実感させる」出来事でした。 

  いい話を作るのは「餅つき」と同じ作業。
落語家はいくつか「得意ネタ」を持っていて、それを披露して笑わせる商売です。スピーチはそれほどまでに「芸」を必要としませんが、似ている部分が多いと思います。「受けるネタ(作品)」をいくつか持っているとよい。ひとに話してみてウケたネタを大事にして「自分の持ち作品」にするのです。最後にからなず、自分の気持をつけ加えることが肝要です。冒頭のタイトルをくり返して終るとすっきりまとまります。

これまで上六教室で好評だった話を思い出して、それを文章化し、ストックするのです。文章化する段階で「推敲」します。推敲というとむずかしいようですが、要するに話のシェィプアップです。余分な言葉を捨てて「切れのいい話し」にします。

いい話しを作る作業は〈餅つきと一緒〉です。「ひねって搗かなければ」なりません。ただ材料を混ぜ合わせただけではいい味の餅にはなりません。できるなら、その話を他の場所でも話してみて「練り上げる」と、さらに味が良くなります。


スピーチは2分を過ぎた頃から聴衆に飽きられはじめる…というデータもあります。時間は2分程度にまとめること。面白いところで未練なくスパッと終ること。それが飽きられないコツです。
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