その他 FAQ

( よ く あ る 質 問 )
 
 
ここではむし歯予防など日常的によく聞かれることを中心にQ&A形式でまとめてみました
 






Q.1 むし歯になりやすい部位はどこですか?

A.平成11年度の厚生労働省(旧厚生省)歯科疾患実態調査によるとむし歯になりやすい(むし歯の多い)部位は3歳児の場合、上の1番前(上顎乳中切歯)の歯と歯の間で次に下の1番前(下顎乳中切歯)の歯と歯の間となっています。これが5歳になってくると上の1番前(上顎乳中切歯)の歯と歯の間で次に上の一番奥と奥から2番目(上顎第2乳臼歯と上顎第一乳臼歯)の歯と歯の間になってきます。特に大きな左右差はないようですが私の子どもの場合、仕上げ磨きの際は上の奥が見えにくい(見せてくれない)ので歯磨きはまずそこからするようにしています。





Q.2 口移しで子どもにむし歯が伝染するって本当ですか?

A.むし歯は細菌感染によって引き起こされ、生まれたばかりの子供には口の中にむし歯菌は存在しませんが、その理論に基づいて乳幼児期に親から子供へのむし歯菌の感染を防ぐことが大事だという考えが一部の歯科医師や保健婦、マスメディアなどを通じて一般の保護者達にも浸透しつつあります。

 たしかにむし歯は感染症ですが、赤痢やコレラなど他の伝染病と同じ感覚で考えると大きな混乱を招きます。実際最近ではインターネットで子育て関連のホームページをみても感染を恐れて『子供に口移しであるいは同じ箸やスプーン、フォークなどで食べ物を与えることがあったが大丈夫でしょうか』とか『乳幼児健診で保健婦に食べ物を与えるときフーフーしてあげてもいけないと言われましたが本当でしょうか』などと不安に煽られた疑問が寄せられているのをよく見かけます。その他、むし歯を防ぐには親子を隔離しなくてはいけないのだろうか、またむし歯のある家族とは交際してはいけないのだろうかというような馬鹿げた話も出てきています。

 むし歯は菌が親から子供に感染したからといって子供がむし歯になるというようなものではありませんし、感染を予防したからむし歯を防げたなどという確かな臨床データもありません。親から子供へのむし歯菌の感染はごく自然な現象で、むしろ乳幼児期においては親子がキスをしたり同じ箸などで食べ物を与えたりするスキンシップの方こそが特に自閉症児などにとってはよっぽど重要と思われます。またむし歯菌が親から子供に感染してもフッ素を利用した正しいむし歯予防をすればそう簡単にはむし歯にはなりません。むし歯菌の感染を恐れての非現実的な感染予防を考えるよりも、食生活を正し、フッ素洗口、フッ素配合歯磨剤などフッ素を上手く利用する方がよっぽど現実的でかつ最も効果的なむし歯予防法と思われます。

*感染症:病原体が宿主の体内に侵入して増殖することを、通常『感染』といい、この感染によって引き起こされる全ての疾病を感染症という。
*伝染病:人から人に直接または間接的に伝搬する病気の場合、伝染病という。
 



Q.3 むし歯予防に使うフッ素は有害で、金魚鉢にフッ素を入れると金魚が死んだとある雑誌に出ていました。フッ素って危険ではないのですか?

A.まず金魚が死んだという雑誌の報道の件です。私はこの記事を見ていないのではっきりとは分かりませんが、恐らく金魚鉢内のフッ素濃度や飼育環境、比較対照群のことなど実験方法に問題があり、フッ素の安全性を語るにおいては全くの論外ではないかと思います。例えばこのような事例が権威のある学術誌(査読が厳しいので)に多数掲載されたとかいうのであれば話は別でしょうが.......。

 またフッ素の安全性についてですが、これはむし歯予防に使う程度(濃度)のものであればフッ素の応用に否定的な人たちが言うような『ダウン症、癌、遺伝毒性』などは起こらないことがWHOをはじめ多くの医学専門機関によって学術的に証明されています。ですが長期に渡るフッ素の過剰摂取により歯のフッ素症(歯の表面に軽度の白濁)、もっと過量になると骨のフッ素症を生ずることはあります。歯のフッ素症について興味のある方はこちら(http://www.geocities.co.jp/Beautycare/7474/No.2-Shika-Komoku-Home.htm 現代のフッ化物とフッ素症 )をご覧下さい。

 このように安全性を語る際、その量の問題を無視してはいけません。例えば水道水に含まれている塩素、これは高濃度のものを摂取すれば当然死にます。しかし濃度が低ければ全く問題ありません。私たちが飲む薬も然りです。これも多量に飲めば死に至ります。そういう科学的検証において濃度の問題を考えないのはナンセンスです。

 システマティックレビューという言葉があります。これは世界中の科学的論文を隈無く収集し、それらについて科学的に適正な方法で調査研究が行われているかどうかを批判的に吟味、評価して調査対象の集め方や解析手法が科学的に正しいと評価された論文だけをもとにして統計学的手法を用いて1つの結論を導き出すというEBM(Evidence-Based Medicine:科学的証拠に基づいた医療)に基づいた最も信頼性の高い医療・予防法の総説です。WHOをはじめアメリカ国立がん研究所、英国王立医学協会など多くの医学専門機関がこのシステマティックレビューに基づいて水道水のフッ素濃度適正化やフッ素洗口をはじめとする、むし歯予防におけるフッ素の利用で『ダウン症、癌、遺伝毒性』などは起こらないと結論づけています。

 しかし、それでもフッ素の安全性に疑問を持つ人が一部いますが、もしダウン症、癌、遺伝毒性などがあるというならば彼らは直ちにWHOなどに行きその主張を述べ科学的に論議して正しい科学を勝ち取ってくる義務が科学者としてあります。またフッ素と名が付けば何でも反対したり、新しいことをしようとすると何でも反対する、いわば(理由は問わず)反対のための反対している人もいるようです。惑わされないようにしましょう。

 他にもフッ素には賛否両論があると言って一見慎重を装っている歯科医もいます。しかし前に述べましたがフッ素の効果と安全性については世界各国の医学専門機関などによって学術的に既に証明されています。こうした慎重を装っている歯科医は自分がむし歯予防やフッ素に関して明らかに勉強不足であることを公言していることに気づいていないようです。

 (フッ素の安全性、その他についてもっと詳しくお知りになりたい方は、こちらのページ 『水道水フッ素化とむし歯予防 http://www.fluoride.jp/』 をご覧下さい)
 



 
Q.4 フッ素洗口液はどこで手に入りますか?またその使い方を教えて下さい。

A.フッ素洗口液は歯科医院または薬局(薬剤師がいる医薬品の販売店)での購入となりますが、取り扱っていない薬局もあります。詳細につきましてはかかりつけの歯科医に相談してみて下さい。商品名は『ミラノール』、『オラブリス』などです。

 そしてその使用方法ですがフッ素洗口液の場合、(フッ素の)粉を専用の容器に溶かして使います。通常の歯磨きの後キャップに一杯程度洗口液を口に含み30秒ほどブクブクとうがいをします。本来はこうして仕上げのブクブクうがいに使うのですが、まだうがいが上手にできない場合は、最初に1度、歯ブラシにその洗口液を十分湿らせて口の中全体にフッ素が広がるように磨くという方法もあります。このとき基本的には磨き始めから最後までフッ素を使います。しかし食後すぐや口の中に食べかすが一杯の時はお茶や水を飲ませ、ある程度食べかすがなくなったところでフッ素で歯磨きをします。もちろんその後は(特に夜の場合)食べ物は与えません。もし食べた場合はもう一度磨き直しです。また歯磨き後の水分補給ですがお茶か水にしてください。微糖の清涼飲料水やスポーツドリンクなどは糖分を含むのでNGです。




Q.5 レノビーゴを用いた歯磨きというのをよく聞きますが、これについて教えて下さい。

A.フッ素の応用は主に塗布、歯磨剤、洗口、スプレー、飲料水に分けられ、回数を多く使うものほど濃度も低くなっていきます。塗布は年に数回(9000〜12300ppm)、歯磨剤は毎日(1000ppm)、洗口は週一回〜毎日(100〜500ppm)、スプレーは適時(100ppm)、飲料水は毎日(約0.8ppm)といった使用頻度になります。

 このうちレノビーゴ(商品名)はスプレータイプに属するフッ化物で、また適時使用するということで濃度が100ppmとやや低めになっています。フッ素の応用は低濃度多数回応用が最もいいのですが、レノビーゴを用いた歯磨きで1日3回のみの使用であれば口の中に残るフッ素量が少なく、それだけ効果もやや低くなります。もちろんこれでもいいのですが、もし上手にうがいができるのであればフッ素配合歯磨剤(1000ppm)+フッ素洗口(ミラノールの場合250ppm)の方が望ましいと思います。

 何よりフッ素配合歯磨剤やフッ素洗口液の方が経済的であります。私の所でフッ素洗口液(ミラノール)は1包150円程度で販売(歯科医院によって価格は異なります)しており、これでフッ素洗口液200mlが1つ作れます。レノビーゴは確か一本35mlで1000円近くするのではなかったかなと思います。

 レノビーゴにしろ何にしろフッ素を使ったむし歯予防はいいことです。しかしレノビーゴを使うのであれば1日3回ではなく、もう少し回数を増やした方がいいかなぁと私は考えます。ですがこれでもカラ磨きや全く磨かないことを考えるとはるかにいいことは言うまでもありません。
 

 
Q.6 歯磨き粉は何がおすすめですか?
 
A.フッ素の配合された物(フッ素配合歯磨剤)を使って下さい。フッ素配合歯磨剤はスーパーなどで格安で販売されています。小学生以下のお子さんの場合でしたら子ども用の歯磨剤(辛くないので子どもが嫌がりにくい)でフッ素配合の物がよろしいかと思います。表に『フッ素配合』などと書かれているので分かるかと思います。フッ素が配合されていれば特にどのメーカーであっても変わりありません。




Q.7 むし歯があるのですが治療した方がいいですか?

A.治療するか否かですが、基本的にはまず歯科医院を受診する必要があると思います。しかし自閉症の場合、その障害の特性を理解している歯科医師も少なく、また子どもが歯科医院を極度に嫌ったり怖がったりすることも多いので、親子共々通院に対するストレスが大きくなり、できれば歯科治療は避けたいと思うのが親の立場からする本音ではなかろうかと思います。

 実際むし歯があるということですがお子さんの年齢も考えどの部位がどの程度のむし歯なのかによって治療するかしない(経過観察)かは変わってきます。例えば乳歯のむし歯で間もなく永久歯と生え替わることが予想されるときはこのまま経過観察でいい場合もあります。またむし歯の大きさにもよります。単なる着色程度の初期むし歯なのか、それとも爪楊枝などで引っかかりを感じる程度か、それとも明らかに大きく歯が欠けている(穴が開いている)のかによって対処方法が違ってきます。

 しかし乳歯が完全に崩壊しているほどの大きなむし歯であれば直下のこれから萌出してくる永久歯に影響を及ぼすこともまれにあります。よく言う『むし歯が生えてきた』と表現されるもので専門的には『Turner歯』といいます。これは乳歯の神経(歯髄)まで及んだむし歯がさらにその内部を進み根っこの先端(歯根尖)まで行き、直下にある永久歯のエナメル質まで進んだ時に起こります。ですから歯が大きく欠けているようなむし歯があるのならば一度治療の必要性があるように思います。




Q.8 自閉症児の場合、何歳位になればむし歯の治療はできますか?また歯並びが悪いのですが矯正した方がいいでしょうか?

A.治療のできる年齢ですが、一つの目安になるのが発達年齢が4歳と言われています。自閉症児の場合、運動面や対人面など発達そのものに個人的なばらつきがあるのでいちがいには言えませんが、年齢が4歳以上でも以下でも自分でボタンがはめられるようであれば(発達年齢として)大体治療が可能であると言われています。

 しかしながら多発性の重度のむし歯があったり、また重度の歯科恐怖症を伴っていたりすると一般の歯科医院での治療は困難で、大学病院などの2次医療機関において全身麻酔下で集中的(できるだけ回数を少なく、できれば一回で終わらせるため)に治療せざるを得ない場合もあるかと思います。


次に、歯並びに関してですがこれを矯正するかどうかということになるといくつか問題があります。まず感覚過敏があった場合、数年にわたって毎日つけていなければならない針金のような装置をつけていられるかどうかといった点です。他にも矯正を始めるとなると、歯形を採ったり、レントゲン撮影をしたりしなければならず、時には便宜的に抜歯をするケースもあります。それと定期的な通院が可能かといったこともあります。針金の調整や経過観察のために年に何回かは通院が必要で、時には1回の診療で診療台に座っている時間が長くなることもあります。

普通の子どもを歯科医院に連れて行くのと違って自閉症児を連れて行くというのは保護者からすれば大変な労力となります。私の知人で自閉症の子どもを矯正治療に連れて行っている人がいますが、そこの家庭では通院の際、前もって自宅で歯形を採る練習をしたり、その日にすることをしっかり絵カードを用いて本人に予告・説明していますが、これ位の熱意が保護者になくては難しいかもしれません。また熱意はあったとしても子どもがそれを受け入れてくれるかどうかは別です。いくら視覚支援で見通しを立たせてもそれが嫌だと分かったら無理強いは禁物です。そしてまた世の中にはまだ自閉症に関する知識の乏しい医師・歯科医師が多く、これを理解してくれる歯科医師に出会えるかどうかといった問題もありますし、それと何より現実的に経済的負担が大きいです。1回の矯正で少なくとも数十万単位の出費は必要です。

仮にこうした厳しい条件をクリアしても今度はその歯がむし歯になってしまい抜歯にでもなってしまったらもともこうもありません。自閉症児はその困難さ故、生活習慣からむし歯発症の危険性が健常児と比べてどうしても高くなります。自閉症児の矯正は不可能ではありませんが、もし矯正をするのであれば健常児の場合もそうですが、それ以上にむし歯予防に注意しなくてはなりません。





Q.9 歯磨きをしているのに子どもがむし歯になってしまいました。遺伝的に歯が弱い家系ではないかと思います。やはり生まれつき歯の質が弱いのでしょうか?

A.遺伝的に歯が弱い家系ではないかという考えは正しくはありません。また生まれつき歯の質が弱いということも普通はなく、むし歯のなりやすさは食生活をはじめとする家族の生活環境に主に問題があります。家族は通常同じ食生活環境にあります。例えば甘い食べ物を好み間食も多く、歯磨きの習慣にムラがある家庭などでは当然むし歯ができやすくなります。

 他にも断乳の時期もそうです。歯磨き(口腔ケア)後にミルクを与えたことなど就寝時の飲料摂取がしばしばあったなどすればむし歯になることがあります。これを専門的に『ほ乳瓶う蝕』といいます。一方、子どもにフッ素洗口などを幼少期から行ってきた家庭では(フッ素の使用状況によって)歯の質が強化されむし歯が逆に出来にくくなります。こうした家族の生活環境といった後天的な問題の方がむし歯の出来やすさと歯の質の形成に大きく影響してくるように思います。

 しかし先天性の歯の質の問題を強いて言えば、妊娠中、歯の形成期に相当する時期(胎生6週以降)に母体に妊娠中毒症など何か特別な異常があったとかいう場合などにはエナメル質減形成などとして極まれにみられることもあるようです。
 



Q.10 子どもが仕上げ磨きを嫌がります。どうしたらよいでしょうか?

 A.歯磨き(仕上げ磨き)を嫌がる子どもは、そのときいつまで磨かれるのかなどと見通しが立っていないことも多いです。そういう場合『今日は20数えたら終わりだよ。』などと最初に子どもに言い、(または絵カードなどで示し)『い〜ち、に〜い、さ〜ん』と数を数えながら磨いてあげると落ち着くこともあります。こうして数を数えることにより見通しを立たせます。また数の概念に乏しい子どもでもこれを毎日続けることによりある程度日に日に落ち着いてくるように思われます。

 他にも歯磨きを嫌がる要因としては我々には理解しづらい自閉症特有の感覚過敏や恐怖心があるのかもしれません。テンプル・グランディンが著書の中で『のりのきいたスリップはまるで有刺鉄線を着ているように感じられた』と述べていますが、これに似た感覚が仕上げ磨きをされる際、彼らの中で起きているとしたら少しは説明がつくような気もします。もしそう考えられる場合はやわらかめの歯ブラシを使うなどして刺激の軽減を図るのも1つの方法であると思います。しかし、ある日突然急に仕上げ磨きを嫌がりだしたとすれば口内炎や歯茎の腫れなどの可能性も考えられますので注意が必要です。

 どうしても嫌がる場合、無理やり押さえ付けて歯磨きをする方法もありますが、自閉症児の場合はパニックの原因になったり歯磨きそのものがトラウマになるなどかえって逆効果になってしまうケースもあるので、十分理解、納得させた後に行うなど慎重に対処した方がいいかもしれません。もし無理やり押さえ付けた、またはそうせざるを得ない場合は歯磨きの終わった後に『よく出来たね〜!』とおおげさに褒めながら(体を使った遊びは好きな子が多いので)高い高いなど子どもの喜ぶことをしてあげ、あくまでもこの場合、嫌なことでも頑張ればその後に褒美がある(好きなことをしてもらえる)ということを認識させれば少しは歯磨きができる(させてくれる)ようになるかもしれません。その他、お気に入りの歯磨き関連の育児ビデオを見せながらとか、きょうだい児がいる場合はその歯磨きの様子を見せたりという工夫をしている親御さんも数多くいるようで、これもいい方法だと思います。

 しかしそれでも歯磨きを嫌がる場合、だからといって何もしなければ確実むし歯になってしまうので、もしブクブクうがいができるようであればフッ素洗口だけでもさせるべきでしょう。また仕上げ磨きはさせないものの自分で歯ブラシを咥えることができればその歯ブラシにフッ素洗口液を十分湿らせてから持たせるといいです。これらができるだけで全くできないことを思えばむし歯予防に関しては違います。もちろん歯磨きで口の中の汚れを取り除ききれいにできるにこしたことはありませんが、それが困難であればいかに口の中に低濃度のフッ素を長時間停滞させることができるかだと思います。

 いずれにしても歯磨きを嫌がる自閉症児の口腔ケアは困難で、彼らの嫌悪刺激を少しでも軽減するための環境作りがより重要になってくると思われます。



 
Q.11 『食後にキシリトールガムを噛めばむし歯にならない』と聞きましたが本当ですか?

A.まず結論から言いますと、キシリトールガムでむし歯予防が出来るなどと過度な期待はしない方がいいと思います。ですが実際スーパーなどでもキシリトール入りの商品はたくさん並び売られており、患者さんに先程のような質問をされることがしばしばあります。これには近年某有名菓子メーカーが豊富な資金力を背景にフィンランドという北欧の幻想的なイメージを抱かせ、一部の研究者やマスコミを巻き込み、あたかもむし歯予防の特効薬であるかのような言い方で強力な売り込みをはかったことにあります。そしてその結果キシリトールは国民に広く知れ渡り、巨大マーケットに成長して『キシリトール配合』と書けば歯磨剤やうがい薬など何でも飛ぶように売れるようになりました。このキシリトールの詳細につきましては別項『キシリトールについて』をご参照下さい。




Q.12 親の口の中にある歯科用金属が原因で子どもの自閉症を引き起こしたとする訴訟が海外であったそうですが、そういうことはあるのでしょうか?

A.以前、MMRワクチンが自閉症の発症に関係があるのではないかと取り沙汰されました。一方、歯科でも歯科用金属の一部であるアマルガムが自閉症発症の原因ではないかとして騒がれアメリカでは訴訟も起きました。いずれもこれらの中に含まれている水銀が発症原因として疑われたのですが、現在のところ自閉症発症の原因はまだ正しくは解明されておらず、MMRワクチンやアマルガムに含まれる水銀が自閉症の発症リスクを高めるのではないかと主張するには科学的根拠が十分ではありません。また確かにアマルガムには水銀が含まれていますが、これは無機水銀で水俣病を発症させた有機水銀とは性質が異なります(しかしながら有機水銀が自閉症発症の原因であるという確かなデータもまたありません)。

 そしてMMRワクチンに関して英国政府をはじめ英国医学会などがこの両者の間に因果関係はないと結論付けています。

 一方アマルガムに関してはアメリカ歯科医師会(ADA)が『これらの行為(訴訟)は、慢性や不治の病を伴った患者に誤った期待を与える科学的根拠のない情報により、感受性の高い人々を誤解させる』と述べ、さらにアマルガムの安全性への疑問について『米国公衆衛生局 (USPHS)、疾病管理予防センター、食品医薬品局(FDA)およびWHOなどの主な米国や国際的な自然科学および健康機関が、満足できる回答をすでに提出してきている』と言及しています。つまりアメリカ歯科医師会(ADA)も両者の間に因果関係はないと結論付けており、歯科用金属が原因で子どもに自閉症を引き起こすなどということはないと言えます。 
 
*MMRワクチン
 麻疹(はしか)、おたふくかぜ、風疹の3種混合ワクチン。水銀から作られるチメロサールがこのワクチンの保存材として使用されている。日本では現在このMMRワクチンは使われていない。

*ア マ ル ガ ム
 歯科用金属の一種で水銀との化合物との総称。最近では他の材料の進歩により、あまり使われていない。




Q.13 最近テレビや雑誌で『痛くない、削らない、抜かない、1回で終わる』などというむし歯の治療法があると聞きました。そのような治療法があるなら子どもにも是非させてみたいのですが、どうでしょうか?

A. 恐らく3Mix-MP法あるいはヒールオゾン法のことではないかと思います。
これらの説明は専門的になってしまうので、ここでは省きますが、3Mix-MP法に関して専門分科会である日本歯科保存学会は『保存領域の治療に常用する薬剤としては、現状では容認しがたい。』 としており、さらには『その使用に際しては、慎重な対応が必要である』 と否定的な見解を示しています。

また3Mix法の発案者の岩久正明先生がご自身のHPで学術的なコメントを述べられています。
こちらを是非ご参照下さい。
岩久正明 先生のHP  http://www11.ocn.ne.jp/~hakuai-d/


同じく『痛くない、削らない』をキャッチコピーにしたヒールオゾン法ですが、こちらは国際的にも文献が多くあるようで、それらの論文の信頼性については各国の研究者の組織であるコクラン共同計画によって文献的検証が行なわれています。

その結果、
それぞれの研究でバイアス(偏見)がかかっているリスクが高い。
効果についての評価法に一貫性がない。
むし歯をオゾンガスで治療しても、むし歯の進行を止めたり治療したりできるという信頼しうる根拠は無い。
ヒールオゾンが従来のむし歯の治療法の代替療法や第一選択になるためには、さらに適切で厳密で質の高い根拠が必要である


などと、その効果の根拠については3Mix-MP法と同様にヒールオゾン法も否定的であるようです。


3Mix-MP法やヒールオゾン法に関してはこうした学術的見解があることを理解した上で、それでも試してみたいというのであれば、担当医からその安全性、効果などの説明を十分受けて、その後行うことをお勧め致します。


 



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