ふるさとの風景
奥柏への道
奥柏は山々に囲まれている。夕陽は西の山に沈むので、その山影が伸びている。
田舎というと広々とした農村をイメージしがちだが、柏は違う。狭い平地をすぐ山が屏風のようにとり囲んでいる。ことに冬は朝陽が山からゆっくり下りてくるのが待ち遠しかった。日照時間も少ない。
この風景は学校から帰宅するときである。現在はこのように舗装されているが、昔は砂利道。私らの幼年時代は「馬車」が奥の「せんば」という所から材木を載せてこの道をゆっくり下った。
馬車の馬は賢くて、道で幼児が遊んでいると立ち止まってくれた。いつだったか我が家の前で幼い弟が土遊びをしていたところへ荷を積んだ馬車がきた。馬が止まったので何故だろう…と綱ひきさんが御者台から下りて見ると幼児が遊んでいた…という実話がある。

しばらくしてその作業は「木炭トラック」に代わった。興味があったので見に行くと、発車まえに運転席の横にとりつけた円筒のカマに木炭や木を入れて燃やし煙をはきながら走った。この木炭トラックというのは戦時中に石油がなかったので、木炭の二酸化炭素を燃料とした代用エンジントラックである。道が田舎道なのに大きなトラックが大量に材木を積んで走るので、道の側壁の石垣がよく崩れた。タイヤの跡がへこんで雨の後はおおきな水たまりになった。私らはそれをよけながら通学した。
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