ぶらり旅日記
紅葉の宮島 2007
久しぶりに安芸の宮島を訪れた。前回は2004年の春だった。桜の美しく咲き誇る春の宮島を堪能したが、紅葉の秋の宮島も美しいときいたので一度訪れたいと思っていた。さいわい中学時代の同級生が二人いるので、その顔合わせも兼ねて訪れた。
世界遺産となっている厳島神社は、先年の台風被害も修復され美しく鎮座していた。
潮が満ちるとあたかも浮上する如く見える海上神殿となる。
その着想の秀逸さは他に類を見ない。誰がこの海上に浮く神殿のプランを示したのか…遊び心の極地ともいえる。上の写真は神社の裏側から写したもので、表の豪華絢爛さにはない直裁な建築美が見てとれる。
この神社の下に魚が泳いていることを想像すると驚嘆に値する。
「燃える秋」という表題をつけたいほどの見事な紅葉である。
宮島の紅葉谷を散策して、この緋色の模様に出合った。四季の美しさは日本が誇るものであるが、このように炎のような紅葉に出合ったのは驚きである。色づいた葉だけでなく陽光とのたわむれが織りなす美しさである。
森へ入ると、秋らしく澄んだ空気の中に紅葉木があちこちに見当たった。
動物研究者の解説によると、人間にとって紅葉は観賞の対象であるが、森の動物たちにとってはそんな感傷ではなく、木々がこのように強烈に色づくことは、もうすぐ厳しい冬が訪れることを予告し、食べものを蓄えることを促す色であるという…。自然が生き物に伝える一種の信号なのだという。たしかにそのとおりだが、美しい信号ではある。
紅葉にも微妙な色あいがある。
木の種類や土地の高さによってさまざまな紅葉が楽しめた。晴天に恵まれたことは紅葉観賞にとってラッキーだった。
これは宮島山頂から見下ろした瀬戸内海の諸島である。
青いおだやかな海に囲まれた小島や船の航跡が白く尾を引いている。ふるさとの柏を思い出した。この山頂まではロープウエイで登る。島全体は常緑樹が多いせいか緑に囲まれている。日曜日だったので観光客も多く、私達もここで昼の弁当を食べた。還暦を越したグループのハイキングも楽しいものだ。
宮島へはこのように大型フェリーが観光客や住民を乗せて往復している。
内海航路なので揺れることもなく15分程度の乗船である。宮島というのは桜の季節と紅葉の季節に訪れるのが最高である。惜しむらくは、もっとゆっくりした旅をしたい。そのためには宮島に一泊するのが良い。
この秋風景は広島市内の「平和祈念公園」だ。
晩秋の寒さのせいかベンチには人影がない。この街は62年前に原爆の灼熱の炎に包まれすべての人が苦しみもだえた過去を持つ。資料館もこの近くにある。なぜ戦争があるのだろう、正義を守るという大義のもと、平和を守るという大義のもと、さらには神の名前において人は戦(いくさ)をする。苦しみながら死んでいくのはすべて庶民である。
この愚挙を今もくり返している。人の業なのか。ここに来ると人間の恐ろしさをまざまざと見ることができる。美しい公園だがカメラのシャッターは重くなる。

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