話し方教室
スピーチ例 (10月19日)

 スピーチ例(2分)
                     由布院の魅力
                                               ひろりん

いま九州で一番人気のある観光地は由布院と黒川温泉です。
昨年の秋、私は由布院に行ってみました。


JR由布院駅を降りると、駅の横から「観光馬車」がでる。「バス」じゃなくて「馬車」です。これに乗りました。ポックリ、ポックリと馬の「ひずめ」の音を響かせながらスタートしました。そのゆっくりしたスピードがとてもいい。ちいさい町ですから、しばらく行くとすぐ農村風景になりました。
御者の兄ちゃんが手綱をとりながら由布院の説明をしてくれる。

エンジンの音がないから農村のしずかな空気が直接つたわってくる。なんかふるさとに帰ったような、いい気分になって、心が癒されました。

私がいちばん、印象に残ったのは、駅の構内にある「観光案内所」です。
ここにベテランの中年のご婦人が二人いて、きけば何でも親切に教えてくれる。


この観光案内所、最近は「インフォーメーション」というしゃれた名称で若い女性がスチュワーデスみたいな格好をして座っている。あれはダメです。若い女性は気がつかないし、親切心がない。若い男性の一人旅ならインフォーメーションに若い女性がいれば喜ぶでしょう。

しかし旅をする人の主流は「女性」ですよ。その女性が、自分より若くてきれいな人を見て喜ぶはずがない。
旅は心を癒すために出かけるのです。そういう《旅心》がよくわかっているのが由布院だなあ、と思いました。


私は実際に由布院へ行ったから語ることはいくらでもある。
しかしそのすべてを語ってはいけない。長演説になるだけだ。長い話をきかされるほうは閉口する。特に印象に残ったことを取り上げてエッセンス(いいところだけ)をスピーチにする。

由布院は若い女性がいないから「観光案内所」に中年の婦人を置いたのだろうか?そうではない。はじめは当然「若い女性を」と考えただろう。しかし、細かいことに気がつき親切なのは断然中年女性のほうが勝る。

由布院の観光のポリシーは「他の所と同じことはしない」ときいた。
馬車による手づくり観光や、プラットフォームにある「足湯」!駅前で荷物を預けたら荷物だけ旅館へ安価で運んでくれるシステムもある。観光客は手ぶらで観光できるから店で「おみやげ」を買う。

観光案内所の人選など「旅の人」の側に立っての《観光》を考えている結果である。

私が乗った馬車を曳いた馬は白馬で「ゆき」という名前の、NHKの朝ドラマ「風のはるか」にも出演した有名馬だった。この観光辻馬車を運営するのはかなりの手間がかかる。まず馬が数頭必要だ。飼育しなければならない。御者もいる。観光客を待たせないように、ほぼ30分おきに出発するから車両も何台か必要だ。厳冬期はお休み。これらの「経費」をどこから手当てするか…。それを考えるとバスのほうが安上がりだ。あえて馬車をやっているところに由布院らしさがある。

もちろん観光バスも出ている。スカーボロという名称のイギリスのクラシックタイプの小形ボンネットバス(9人乗り)である。おしゃれな車で記念写真の背景になっていた。
由布院は田舎町である。観光資源というものはない。宮崎のほうがはるかにすぐれた観光資源はある。よく考えなければいけないのは、観光客は「風景観光」は2番目の目的だ。1番目は心の癒しを求めて来るのだ。

田舎の風景の中を馬車に揺られて行くだけで十分目的は達成される。楽しいのだ。九州までわざわざ来て高層ホテルに泊まろうとは思わない。観光の要はそういう「人の心を読む」ということが大切である。人の心が読めないで人をもてなすことはできない。
観光馬車(休憩中) ポックリポックリと… 小形ボンネットバス
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