昔の子供の遊び
女の子の遊び (2)
還暦を過ぎた年齢の人が幼年期を過ごしたのは昭和20年代の中頃である。戦後の混乱も終息に向かい困窮な生活の中ではあったが、子供たちは元気に成長していた。ベビーブームで周囲に子供が多く、互いにさまざまな手作り遊びを楽しんだ。まだテレビもなく、ファミコンもない時代だ。むしろそのほうが子供たちの自由な発想や感覚の育成に良い環境であったと言える。当時の女の子たちから寄せられた話をもとに続編をここに書く。
 「お手玉」(おじゃみとも言う)
手で握れる程度の小袋を親に縫ってもらい、その中に「じゅず玉」を入れる。これは川原などに自生する笹竹のようなイネ科の数珠玉草の硬い実が材料となる。この実は名のとおり「数珠」のような光沢があり格好の手芸品だった。色は黒茶色が多い。これを採取する時は気をつけないと完熟したものはパラパラと落下する。

このため手をそっと下にあてて、こぼさないようにして採った。これを袋に詰めるとサラサラとよい音が響いた。この「お手玉」で遊ぶ方法は、歌に合わせて次々に片方の手から上にほうり回転させるように巧みあやつる。自分の熟練技をみせるもので、対戦するというものではない。歌は童謡のような短いフレーズ(節)をくり返した。
このじゅず玉は中心に糸がとおる程度の細い穴があいている。それを利用して木綿糸などを通してネックレスや腕輪を作った。前述のように光沢のあるきれいな硬い実なので、辛抱つよく作れば誰がやってもきれいなアクセサリーになった。中にゴムを入れて綴ると腕にピッタリなじんだ。

 「あやとり」(綾取り)
長めの毛糸を結んで輪にする。それを両方の手の指にとって拡げる。絡めたり抜いたりして、はしごとか箒とかのカタチを作ります。作り方は簡単ではないので先輩から必死で習いました。うまく完成した時は周囲に見せて得意になりました。操作が10本の指でたりないときは口まで使いました。そのパターンを何人かで取り合って変形させたり、より複雑なカタチを作ったりして遊びました。器用な子はいろいろ作品を作れて賞賛の眼差しを集めたものです。

「てんまり」
ゴム鞠つきのこと。女の子はそれぞれが愛用のゴムマリを持っていた。これを男の子に隠されると泣いて本気で抗議するほど大切なものだった。手鞠がてんまりになったもの。小学校低学年までの女の子の「スポーツ」の定番といえばこれ。遊びかたは単純だが、つくテンポに合わせた歌があった。慣れた子は早めのテンポで唄いながら鞠をついた。

はじめは易しいように足の間をくぐらせるが後半は股の間をくぐらせたりして難しくする。最後は背中でおんぶするように受けとめたり、それができない子はスカートの中でとめたりしていた。
競技ではないが、何回つけたかを競うために、つく度に大声で数字を言ったりにぎやかだった。
庭などで赤やピンクのゴムマリを手でつきながら遊んだ。かなりエネルギーを使い体が暖まるのでどちらかといえば秋や冬にこれで遊ぶ姿があった。つくときの「伴奏歌」を今でも憶えている人がいたらぜひ教えてほしい。
 

 「いのこ」(亥の子)
これは男の子の遊びですが、ついでにここに書いておきます。
11月中旬の亥の日に夕方から男の子たちがグループを組んで、「亥の子石」という丸い石に縄をつけてそれをかかえながら地区の各戸を周り、八方にひろげた綱をひいて、はやし唄と共に搗きます。これは家の倉などに穴を開けるモグラ退治や、豊年祈願などの恒例の行事でした。はやし唄は3種類程度ありましたが、シンプルなものを憶えていますので書いておきます。

「亥の子〜亥の子〜祝うた人は〜 」
「イチで俵ふんばいて、ニでにっこり笑うて、サンで酒を作って、ヨッつ世の中良いように、イツツついつもの如くなり、六ッつ無病息災で、七ッ何事ないように、八ッ屋敷を広げて、九ツ小倉を並べたて、十トゥでとって納めた〜エぇぇイ!」と拍子に載せて縁起の数え歌を唄います。この行事は各地にありましたが、はやし歌は地域によって違うようです。

この地鎮祭みたいな風習で庭にできた凹穴は神聖な所となり、雨が降るまでは土足で踏んではいけない…と言われていました。ましてやそこにオシッコでもひっかけようなら「チンチンが曲がるで〜」と言われこわかったものです。
亥の子を搗くと各戸から「お礼の小銭」がもらえました。それをまとめてから分配、お小遣いにもらえるのが楽しみでした。一部は米にかえ、それで世話役の家で「炊き込みご飯」を作ってもらいおにぎりにして食べました。樫田時広さんとこのおばあちゃんが世話好きで、そこに集まって食べました。

この風習もすたれてきましたが、現在もなお宇和島の一部地域では実施しているそうで、それには女の子も参加しているそうです。地域の共同体意識の薄くなった今日、このような行事は復活してほしいものです。
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