<営業をしないビジネスモデル>
フィリピンのセブ島近くに、カオハガンという、東京ドームとほぼ同じ大きさの島があります。
カオハガンの島主は、崎山克彦さんという日本人です。
脱サラして退職金でカオハガン島を買って移り住み、島民と共存共栄をしながら、小さな宿泊施設を営んでいます。
崎山さんの仕事は、コバルトブルーの海を見ながら、島についての本や雑誌に美しい文章を書くことです。
私もその一人ですが、彼の作品を読んだ人や口コミで知った人が島に遊びに行くので、売り込みや営業の必要がまったくありません。
しかも、カオハガン運営の趣旨に賛同した人だけが来るため、島内の環境を乱したり困った行動をとる人がいない。
このことによって、一般のリゾート地とは異なった、環境にやさしい理想的な観光地が実現しています。
営業という仕事は、それが好きでたまらない人以外には、けっこうつらいものがあります。
その気のない人のところへ出向き、商品の売込みをするわけですから、邪魔者扱いされることもあるでしょう。
普通の人は、説得されるのも買わされるのも、好きではないからです。
理想を言えば、お客さんのほうから「ぜひ売ってください」と言ってもらうのが、お互いにとっていちばんいい。
もう一人、私がよく聞きに行く講演会のある講師も、まったく営業をしないスタイルを確立しています。
その人は年間300日以上、講演をしながら全国を旅行しているそうです。
講演料は10万円、つまり1日2時間好きなことをしゃべるだけで、年収3000万円以上を得ているわけです。
一度も就職をすることなく、泊まり歩いていた安ホテルで宿泊客の人生相談などしているうちに、口コミで噂が広がった。
そのうち、ぜひ話が聞きたいという人が集まって、各地で講演会が開かれ始める。
さらに、その話をまとめて本にしたいという出版社や、グッズを作りたいという業者まで出てきて、トータルの収入はかなりのものだそうです。
そのような「流れ」で、その講演者は「頼まれたから話しに行く」という立場でお金持ちになったわけです。
追っかけも含めて毎回百人以上が集まるので、参加費2〜3千円程度でも、各地で運営する人は赤字の心配はない。
彼の話を聞きたいという人ばかりだから、どこに行ってもチヤホヤされるし、反論や妙な質問などしてくる人もいない。
本やグッズは、出すたびに確実に売れる。
誰も損をせずに、本人もまったくのノン・ストレスで、遊びか仕事かわからないような毎日を送って大金持ち。
講演料は有名人ほど高くはないし、グッズ類も新興宗教の怪しげな壷などと違って安いから、良心的だと評価される。
講演で話をしていること(感謝して味方を増やす生き方)をそのまま実践して、自らが大成功をおさめているわけです。
崎山さんと講演家、この2人のビジネスモデルのキーワードは、「自分のファンをつくる」の一言につきます。
熱狂的な固定ファンをつくれば、何をやっても売れるということです。
ファンが友人知人を次々と連れてくるので、新規顧客獲得の努力も必要ありません。
与えられた仕事を必死でこなし、厳しいノルマに追い立てられたところで、何年たっても「こき使われる」という状況は変わらないでしょう。
好きなことをやっていたら、どうも楽しそうだと人が集まってきて、やがてそれがビジネスとして成り立つようになる、というのが理想です。
それが「営業をしないビジネスモデル」成功の法則です。
(2005/10/30)