vol. 17   これでいいのか? 医療制度改革    (H18/6/15)  
高齢者医療の抜本的な見直しなどで医療費の抑制を目指す医療制度改革関連法が、14日午前の参院本会議で与党の賛成により可決され、成立した。

 これにより、10月からは、70歳以上で現役並みの所得(夫婦2人世帯で年収520万円以上)がある人の窓口負担が3割(現行2割)に引き上げられる。長期療養の療養病床で入院する70歳以上の患者は、食費や光熱費など居住に必要な費用が原則、自己負担となる。

 窓口負担については、2008年度からは、現役より所得が少ない70〜74歳も2割(現行1割)となる。
上記のニュースに昨今の「聖域なき構造改革」、「三位一体の改革」、「骨太の方針」などといった聞こえのきよいことばに隠された医療政策の本音が現れています。
「医療制度改革」とは名ばかりで、その実態は「医療給付抑制策」なのです。今回の改革では給付費の抑制策が焦点で、財務省などは医療費の一定額を保険対象外とする保険免責制度の導入なども求めていましたが、さすがに世論の反発が強く見送られました。
 ところで医療給付費とはなんでしょうか? たとえば3割負担の被保険者が病院を受診してその治療費(医療費)が10000円かかったとすれば、窓口での支払いは3000円になります。残りの7000円は国民が納めている保険料と、国庫や地方自治体からの支出でまかなわれているのです。この7000円が医療給付費です。
すなわち 医療給付費=医療費-窓口負担額です。
医療制度改革の目的は国庫負担を減らすためと考えられます。しかし高齢化がさらに加速する将来は医療費が増えざるを得ません。そうすると結局窓口負担の増加が必ず求められます。今回の法案成立はこうした動きの加速をしめすものです。また療養型病床では食費や光熱費が医療費から切り離され、一気に毎月の自己負担額は約3万円増えると考えられます。こんなことが平気(?)で可決されてしまいました。
 
憲法第25条には以下の条文があります。
  1. すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
  2. 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
一連の医療制度改革は憲法25条に照らし合わせて考えてみるべきでしょう。
 
 世界保健機構(WHO)によると世界の医療制度(2000年)の中で日本の健康達成度の評価は世界1位、平等性で第3位でした。一方、GDP(国民総生産)に占める医療費の割合は18位で世界の中でも低い水準です。日本の医療制度は世界的に見てもすばらしいものです。
 確かに国家財政はひっ迫しています。ですからその伸びを抑制するのは必要ですが、その「抑制」は健全なものであるべきだと思います。政府の方針はとにかく国としての支出を抑え、地方財政に任せる。さらに民間企業に参入させ、任せる。というやり方で実質上の医療費の伸びを抑制することなく国の支出として医療費負担を減らすというものです。また保険免責制度の導入などという考えは民間の保険契約の考え方で、国民皆保険制度を謳っている国のすることではありません。
 
 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060614-00000104-yom-polより
 医学の進歩や高齢化の進展に伴い、医療費が増大することは必定のことなのです。厚生労働省は将来における医療費の試算を過去何度も行っていますが、その金額が毎回減少しています。2025年の国民医療費の試算を1994年には141兆円としながら、1997年には104兆円に減り、2002年には81兆円、今年は65兆円と試算しています。なぜなのでしょうか?この調子で減りつづけると医療費抑制策はとらなくてもよいのではないでしょうか?(これは論理の飛躍ですが...。)
 
 一方、「医療制度改革」を医療者側から見ると、窓口負担の増加による受診抑制や、医療給付費の削減により収入がカットされます。しかも保険点数に直接反映しないさまざまな改革(マンパワーのいる努力)が必要とされています。労働集約型産業ともいえる医療の50%は人件費です。おそらくあちこちの施設では人件費を削らざるを得ない状況になってくるでしょう。そのような中でよりよい医療を展開することは困難です。医療の質の低下のみならず医療事故の増大にもつながりねない状況がすぐそこまでやってきています。
 
政治には興味のない私ですが、ついつい愚痴ってしまいました...。もしかしたら間違った解釈をしているかもしれませんが。
 
面白くない独り言ですみません。
 
 
      参考文献:相野谷安孝 著 「医療保障が壊れる」 2006年3月 旬報社
 
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