創作神楽山岐大蛇(日本神話) 
宮崎千年神楽シリーズ3

プロローグ
  高天原を追放された素盞鳴尊は根の国へと下り、故郷である出雲の国へと戻った。出雲の国の簸川(ヒノカワ=島根県の斐伊川)の上流へとさしかかったときに、とある小屋の中からすすり泣く声が聞こえてきた。何事かと中を覗いてみると、年老いた夫婦と美しい娘が泣いていた。 素盞鳴尊はわけを聞いてみた。
 老夫婦の話によると、このあたりには首が8個もあるという八岐大蛇という蛇が住み着いているそうだ。夫婦の名は手名椎(テナヅチ)、足名椎(アシナヅチ)といい、娘は櫛名田姫といった。 櫛名田姫は、夫婦の8番目の子で、上の7人の娘はいずれも生贄となって、今度は櫛名田姫の番だという。
 櫛名田姫は美人、素盞鳴尊でも相手は八岐大蛇である、素盞鳴尊は、名だたる銘酒を8つ用意して、大蛇の住みかへと運んだ。夜も更けてきた頃、素盞鳴尊は父伊邪那岐命から譲り受けた名刀十握(とつかの)(つるぎ)を握り、櫛に化身した櫛名田姫をお守りとして髪に差して、大蛇の住む洞穴へと向かった。大蛇は酒をたらふく飲み、酔いつぶれて眠っていた。 素盞鳴尊は眠りこけている大蛇の首を片っ端から切り落とした。途中で目覚めた大蛇も必死の反撃を試みるが、酔っぱらった大蛇は敵ではなかった。
 こうして八岐大蛇はすべての首を切り落とされた。大蛇の尾に剣を振り下ろしてみると、尾の中程で硬い衝撃と共に止まった。引っぱり出してみると、それは立派な剣であった。これが天皇家の三種の神器として伝わる(あめの)(むら)(くもの)(つるぎ)である。


一幕  神やらい      ・・・・入場・・・・・
素戔嗚尊「そもそもこれは日の神の弟、建速(たけはや)素戔嗚(すさのおの)(みこと)なり。我すぐる日、高天原におき、天津(あまつ)(つみ)国津(くにつ)(つみ)、諸々の罪を犯しし故をもち、八百万の神々の怒りにと触れ、千座(ちくらの)置戸(おきど)さられて、奥津にとつれ渡りて候。それゆえ国々を巡り新羅の国より出雲へと渡り、今簸川(ひのかわ)のほとりに足を入れ候が、あれなる川上より(はし)一本流れ来たり、これぞ人の住める印なれば、さればこれより一丁一丁清め上らばやと思うなり」          ・・・・舞・・・・・
二幕  (ひの)(かわ)上の約束     
          ・・・・入場・・・・・足名椎つまづく。皆に注意
足名椎「それに見えし御神は、いずれの神にてましますや?」
素戔嗚尊「我こそは日の神の弟、建速(たけはや)素戔嗚(すさのおの)(みこと)なり。汝ら翁夫婦(めおと)たち見れば、中に一人の姫の姿あり。何故もって嘆くぞや、その訳我に詳しく聞かせやの。」
足名椎「お〜そうこれは、出雲の国、(ひの)(かわ)上に住まいをいたす、我が名は足名(あしな)(づち)妻の名は手名椎、また姫の名は(くし)名田(なだ)(ひめ)と申してござ候。されば我、簸川上より()けいを持って水をとり、千町万町の田畑を興し、日登り長者とまで人に言いわれし者なれど、その報なるや、我が持ちたる八人の姫の内、七とせに七人まで、八岐大蛇に飲み取とられ。残るこの姫もまた、かの大蛇(おろち)に飲み取られんかと嘆き悲しみより候。」
素戔嗚尊「されば、それなる大蛇(おろち)の形とは?」
足名椎「お〜(扇子を落とし「あれ・・」)その大蛇の形とは、身体(からだ)一つにして、頭が八つ、尾が八つ。(たけ)八尾八谷に渡り、背には杉や松、檜生い茂り、(まなこ)はかまちのごとく燃え、腹は何時も爛れて血が垂れ、その大蛇いずる時、谷の水は霧となりて立ち(のぼ)り、岩はあられのごときもち降りて、それはさも恐ろしきものにて候。」
素戔嗚尊「されば大蛇(おろち)を退治せんには、()(しお)()の酒をもち参り、大蛇眠るとき我もしたる十握(とつかの)(つるぎ)を持って大蛇を退治いたさんほどに、すみやかに毒酒の用意をいたせやの。」
足名椎「心得申して候」

素戔嗚尊「されば、その姫を我にいさせよ。」足名椎コケル
足名椎「大蛇退治は姫と交換かよ。どげんするね手名椎?姫をやるのはもったいなかね。どげんかせんといかね。」・・・・「まこちこの人ニートじゃなかか?上村の男がよかにせやけど、もぞなぎいの櫛名田姫!東国原知事ならよかっちゃがね!こんな神楽してる人はぼくど。上村の人に聞いてみようかの?こんな男やけど良いやろか?しょうがねえの神楽やから、このまま進めんと話がちんぐぁらっとなるけんね。大蛇も出番待ってるし。」
         足名椎が
櫛名田姫説得中、手名椎が素戔嗚尊に抱きつく。
足名椎「ばあさんや!何しちょっとか!若い男好きやからほげなこつ、しんきなね。今日もこげな派手な衣装着てばあさんの結婚の話とはちがうちゃが」「てにゃわんのう大蛇を退治するし。」櫛名田姫うなづく
素戔嗚尊「されば汝らは、賢き姫なり」 
     ・・・・・・退場
(足名(あしな)(づち)手名椎)・・・・・

三幕 八塩折りの酒 
     ・・・・・・樽を担いで入場(足名(あしな)(づち)手名椎)・・・・・酒を準備
足名椎「おおせの御酒、このところまで持ち来たり、お〜あれを御覧そうらえや。群雲たなびきしは八岐大蛇いずるにて候、されば御神様ご用心なされ候」。
素戔嗚尊「心得申して候」・・・・

四幕 八つの酒樽 
     ・・・・・入場(
大蛇)・・・・・酒を見つけ争って呑みます。樽片付ける
五幕 大蛇退治
      ・・・・・入場(
素盞鳴尊)・・・・ 大蛇と戦い退治
素盞鳴尊「あら不思議なり、大蛇(おろち)をズタズタに切り腹いて見れば、中に一振りの(つるぎ)あり、これに群雲立ち込めたりならば、これより(あめの)(むら)(くもの)と名づけ、天照大神に捧げ奉らん。」  ・・・舞・・

エピローグ
素盞鳴尊はその剣を姉の天照大神に送り、櫛名田姫と出雲の地で結婚し、宮を建ててそこに暮らしたという。このときに素盞鳴尊が詠んだ歌が、「八雲立つ 出雲八重垣 妻篭みに 八重垣作る その八重垣を」です。このようにして舞台は天孫降臨を経て日本建国へと大きく移り変わって行きます。

原稿作:Kanai             曲:日向橘寿獅子七人衆       協力:上村自治会
素戔嗚小林学 演奏
長友芳立 大太鼓 :金井善嗣
手名鈴木智子 締太鼓 :清水三貴
大蛇:畑中勇人 笛   :山下礼生奈
名田姫末吉ひと美
手打鉦  :伊崎知可子