裸婦図

1920年(大正9)
163.5cmX109.1cm
山種美術館


華岳の絵の中ではいちばん好きです。
石垣らしい上に薄物をまとった一人の女性が座っている。足元から奥の林に向かって小川が流れ、静寂さが辺り一帯を支配している。

女性は近寄りがたいほどの品格がただよっている。裸婦の目に観音や観自在菩薩の清浄さをあらわそうとつとめ、乳房のふくらみにも同じ清浄さをもたせたいと願い、また肉であると同時に霊であるものの美しさを描こうとしたとは、華岳の言葉である。

霊肉一致の思想を集約的に表現しえたという意味で華岳の代表作となっているが、これ以後華岳は人物を描くことはなくなり、仏画の世界へ深く入り込んでいく。その意味では、華岳の一つの分岐点となった作品である。