昔の子供の遊び
なんでも手作りだった(2)
「はちまん」  春先になると畑の土手や石垣に「はちまん」というクモが巣を張ります。
私らは「はちまん」と言っていたが、正式には「コガネグモ」です。このクモは闘争性が強く、他のクモや小さい蛾などがアミにかかると白い糸を吐いてクルクルと丸く絡めてエサにしてしまいます。この動作は機敏で喧嘩早いことから戦いの闘将「八幡」のあだ名がついていたのでしょう…。

春の休日などに畑の土手などでこの「はちまん」を探して歩きます。小さなクモですが、はちまんの巣アミは中心部にX字型の「かくれ帯」という白い模様があり、その中心部に陣取っているのですぐわかります。なるべく大きな「はちまん」を小枝にとって歩きます。大きい「はちまん」を採取した子供は、周囲から、「あら、大きいはちまんやねぇ〜」と賞賛されます。もちろん本人も得意です。

その集めた「はちまん」を闘わせるのです。40pほどの細い棒の両端に二匹の「はちまん」を載せて、尻をつつくなどして棒の中心部で闘わせます。闘争性の強いクモですからはげしく渡り合い戦い、弱った相手をクモの糸で絡めてしまったほうが勝ちというわけです。あるいはみずから落下したのも負けです。この戦いは結構面白く、大人も見物してはやしたてるほどです。
強い「はちまん」を持っていると鼻が高いのですこしでも大きな「はちまん」を探して歩いたものです。
この「はちまん」は、その後水田の防虫剤散布などのせいで姿が減ってしまい、いつの間にかすたれてしまいました。四国南部の四万十市や鹿児島県の加世田市では現在も「くも合戦」コンテストとして存在しています。

「ゴムかん」  野山にあるアカメガシワという木は枝が同じところから左右にV字型に分かれて伸びます。そのあたりをナイフで切って、V字の先端にゴムひもをつけて弓のように引き小石などを飛ばして遊びました。ゴムかんの「かん」は操縦桿などの「桿」をさすものでしょう。これでスズメなどを撃ちました。当たることはなく「ドキドキ感」だけが楽しかったです。スズメは小石に当たるような馬鹿ではありません。

「ハゴ」  冬の子供の遊びの定番です。男の子は冬になると野山に「ハゴ」を架けに行きました。それで野鳥を獲るためです。寒くなって木の実がなくなると野鳥が地面に落ちている実などを食べる習性を利用してワナを架けます。時々シナイ(ツグミ)やチャッチャが獲れました。チャッチャというのはウグイスのことで、春の交尾期はホーホケキョと美声で鳴きますが、冬場などふだんは地味にチャツチャと鳴いています。うす茶色のスズメみたいな小鳥です。あれがウグイスとは当時まったく知りませんでした。

「クギうち」  これは五寸釘を磨いて地面に打ち込み、先に打った相手のクギをうまく倒して自分のものにする遊びです。土によく刺さるように研いだクギを(ポケットに入れて)持ち歩くのが危険とかで、のちに禁止されました。

「パン」  このパンというのは菓子パンのことではなく、手製のパッチンです。官製はがきを縦にハサミなどで二分割し、組み合わせて正四角にします。ジャンケンをして負けたほうがまずそれを土地の上に置きます。上から自分のパンで強く打つと衝撃と一瞬の低圧で相手のパンが飛び上がり裏がえることがあります。裏返せたら勝ちです。その相手のパッチンを自分のものにできます。この遊びは右手を強く振ってパンを打ちつけるので長くやっていると手が疲れました。しかし相手のパンを獲得できた時はうれしかったものです。小学校低学年の頃の遊びです。
  

 「ラムネ」(ビー玉のこと)
これは炭酸清涼飲料水のラムネ水に入ってるガラス玉を遊びに使ったことから「ラムネ」と言った。実際は同様のガラス玉が文具や玩具店などに売っていた。きれいな模様つきの玉もあった。遊びかたは、まず一個ラムネを土の上に置く。相手は目の位置から玉を垂直に落とす、地上の玉に当てれば自分のものにできる。まれに地上にラムネ玉を二個並べ、そのまん中に落下させて、二個とも弾かせると、二個取れるという高等芸もあった。これをくりかえして玉を取ったりやったりする。これが流行した頃は男の子のポケットにはラムネ玉がごろごろしていた。関東地方では「ビー玉」というが、これはガラスをビードロというポルトガル語から、ビードロ玉がビー玉になったという説がある。

ラムネは明治初期に輸入された「レモネード水」が和風発音で「ラムネ」になったといわれる。炭酸ガスの圧力を利用して栓をするため独特のカタチをしており、かつてはサイダーと並んでソフトドリンクの王者だった。今でもレトロなスタイルと味を珍重するマニアがいる。私のその一人だ。
まえ奈良井の宿(長野県)という昔の宿場町に立ち寄った時、そこのみやげ品店でラムネを買って店先の長いすに座って飲んだ。レトロな街道にぴったり合うなつかしい味だった。
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