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11月2日宮崎県立芸術劇場で「語りへの招待/藤沢周平の世界」公演が行われ、私も観客兼カメラマンとして参加しました。「語り…」というのは
作品を語り手の個性を生かした表現で聴衆に伝えるものです。ほぼ30分前後ある作品を原本を見ることなく口演するという信じがたい技の世界です。(私はそう感じました)今回は聴衆の希望もあって藤沢周平の三作品をとり上げて語り満員の聴衆を酔わせました。
この「語りへの招待」は鎌田弥恵さんに師事する薗田潤子さんが「宮崎でもこの語りの世界を楽しんでもらいたい、」と企画したもので今回で3回目の公演。これまで連城三紀彦や佐江衆一の作品をとり上げています。鎌田弥恵さんはNHK東京放送劇団に2期生として入団、かつて女風呂を空にしたと言われた伝説のラジオドラマ「君の名は」のナレーションを担当し、一世を風靡しました。1979年より舞台で文学作品の一人語りを始めて公演を続ける一方、朗読の指導も行っています。 |
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「晩夏の光」 藤沢周平 語り、薗田潤子
小料理屋に手伝いに行っていた「おせい」は、三年前やくざ者の男とねんごろになり、まじめ一方の亭主伊作を捨てて家を出た。しかし男は本物のやくざで金と体をしゃぶり尽した後は簡単におせいを捨てた。ふぬけのようになったおせいに、裕福な足袋屋の隠居から妾にならないかと話をもちかけられた。おせいは、昔の亭主のくらしぶりを見てから身のふり方を決めようと思い、昔の長屋を訪ねてみたが… |
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「夢ぞ見し」 藤沢周平
小寺甚兵衛は25石という小禄のお槍番勤めの侍である。妻の昌江は夫の風采のなさと愚鈍さにいささか腹が立っている。最近は夜の帰りも遅い。いったい何を…
そんな時、長身の若い男が訪ねてきた。溝江啓四郎と名乗る男は小寺家で居候をはじめる。まさえは弟のような啓四郎に心がときめくのだった…。
小藩の後継をめぐるお家騒動を背景に男の世界、女の心のあやをたくみに描いた物語を長谷由子が語る…。 |
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「贈り物」 藤沢周平 語り、鎌田弥恵
60過ぎの初老の男作十は寺の石垣作りの仕事を大八車でしていたが、持病の腹痛のため動けなくなった。そこへ通りかかった同じ長屋のおうめが、うずくまっていた作十を見つけ、やっと長屋に運んで、身よりのない作十の看病することになった。
おうめは30半ばの子持ち女だが亭主が女を作って逃げたので、浅草の水茶屋で働いている。数日後、根津の辰巳屋から亭主の遊び代十両を取り立てようと証文を持った男がおうめの家に乗り込んできた。 |
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まるで目の前でラジオドラマの世界が生き生きと展開するような楽しさがあった。うまい語りが人の想像力を縦横に刺激してくれる。これが「語りの世界」なんだ、と実感した。語り手は大変だろうが何の道具だてもない舞台だからこそ想像が無限に広がる…。至福の時であった。次回が楽しみである。 |
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