おねだり

 

 天気の良い午後のことでした。

 近くのドラッグストアーに、買い物に行ったときのことです。

お店に入ると、いきなり子供の大きな声が聞こえてきました。

 一生懸命何かを訴えている声で、思わず聞き耳を立てると、アレアレこだまちゃんの声ではありませんか!

「もうなくしたよ、1個しかないもん」
「これがいい これがほしい」
大変な駄々っ子振りを発揮しています。
ママは、「たくさん持っているでしょう、おもちゃばこを探してみて」
「だって、ないもん さがしたけどないもん」
「ほしい! かって〜」
 よく聞くと「かみかざりが1つしかないので買ってほしい」
ママは「おもちゃばこを探せば有るので、買わない」
・・すさまじい口論の割には100円くらいの出費ですみそうな問題のようでした。


 ママが諦めて折れるのか? ひっぱって、つれて帰るのか? 事態は大変な状況になっていました。
こちらで遠目に見ている人のことなど目にも留まらない様子で、ママはこだまちゃんの目の高さまでかがみこんで、覗き込むように話を始めました。

低い声なのでさっきの様には聞こえませんが、「たくさんはたらいて、お誕生日には買いましょうね」「何でも、ほしいものでも、はたらかないと買えないこと」「買ったものは大事にすること」そんな内容のようです。

 しばらく話を繰り返していると、「は〜い」はっきりと、大きなこだまちゃんの声がしました。
 それから、ふたりは手をつないでおかいものを済ませると、そのまま手をつないで外に出て行きました。


「ほっと」したのは一人だけではありません。レジのお姉さんも、買い物のお客様も、なんだかほっとして爽やかに微笑んでいました。

                       

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