青年の力


 若者が荒れている話を聞きます。テレビでもその手のニュースを耳にします。

最近、夜中に徘徊する若者に(声をかけて回る人)を取材したテレビ番組があり、家事の合間にちらちら見ながら、若者の間に「薬」が「流行っている」現状を知りました。

声をかけている方は熟年齢の男性で「**先生」と呼ばれていて、真剣な話に思わず手を止め見入った訳ですが、若者の暴力行為も薬を常用する話も怠惰な生活で働かない話も、日常的な出来事のようです。

私が青年期に、そんな話は大変珍しい事で「薬や未就労」などは、耳にした記憶が無く、時代なんでしょうか? 人のあり様が変わったのでしょうか?

前置きはこの位、私が出会った青年の力を書きとめ伝えたくて登場してもらいました。

 青年が、職場に仕事関係者として表れたのは4〜5年前のことで、新人の担当者としてあいさつに来てくれましたが、今までの関係者とはまるで違う第一印象を持ちました。と言うのも、彼の身なりが大変変わっていたからで、そのままオートバイでツーリングを楽しむ方が仕事をするよりよっぽどスタイルに似合っていからです。

私は、堅い地味な職場に現れた彼に興味を持ち、仕事で何度か話をする内に、まじめで優しい人柄だと言うことが解ってきました。さらにうち解けると、学生時代のこと、以前の職場のこと、実家や兄弟のことを聞くことが出来、事務所に気をつかって帰省のお土産も何度かいただいたものです。

ところが、しばらく出入りする内に痩せて疲労の表情が見え、私は気に掛かり「この頃仕事の調子はどうなのか?忙しいのか?」尋ねてみました。仕事の関係者というだけで立ち入った話は気が引けましたが、それはそれ年の功です。

聞けば、仕事面の苦労話や生活面の苦労話が出ていっそう気になりましたが、何の力にもなることは出来ませんし、彼も何の期待も無かったたことでしょう。

子育て経験者の私は、青年達が生きる術を見つけて行くことを、素直に願って「頑張れー!!」と心の中で応援していました。

彼は、仕事に何かを感じていたらしく生活を切りつめ、自分の進むべき道を模索し始めたようです。「物作りが好き」そんな素質を生かし、コンピューターで作る絵画やデザインの独学を始めたようです。時折「見せて頂戴」、お願いするとメールで送ってくれる彼の絵が、だんだん緻密になり完成度の高い作品に変わっていきました。同時に転職のための就職活動も始めた様で、目指す就職先に出来た作品を送っては、デザイナーとしての就職先を求めていました。

「頑張れーーー!!」もう一頑張り! もうちょっと! 忙しい仕事の合間を縫っての勉強や就職活動で、彼の表情はすっかり疲れて見えましたが、多分大丈夫、ここまで来たら大丈夫、痩せて細くなった顔に、勝ち取った知識や技術が自信をもたらした様で、迷いのないすっきりとした目をして、静かな落ち着いた表情をしていました。

そうして思う方向へ飛び立っていったのです。

「若い力は素晴らしい!!」つくづくそんな風に感じました。健康面でも危うい生活をしながら、生きる術を一つ手に入れて、仕事の関係者ではなくなり「採用されました」そう言って最後のあいさつに来た時、私はどんなに嬉しかったことか・・・胸がジーンとして言葉に詰まり、他人事とはいえ本当に嬉しいと思いました。

青年の力強さ、未知なる世界を切り開く大きな力を感じたからです。若い人はそんな力を持って居るはずで、青年は人生への挑戦者、私が気をもむことなど必要のないことでした。それでもやっぱり、「望みが叶って良かった おめでとう」と言わずにはおれません。



そんな彼から受け取ったメッセージは「青年の力は大きい」・・・

苦しみながら自らの人生を切開き飛び立っていった彼ならではの「言葉」なのです。

   トップページ        詩・雑記

                                   
 
                                       2005年9月10日 峰響子