童話 こだまちゃんの卒業

 

「こだまちゃん」「こだまちゃん」「・・・。。。」「・・・。。。」

あれれ、どうしたのかな?

活発でじっとしてられないこだまちゃん。

今日は返事がありません。

おむかいさんとタロのおばちゃんは、ふしぎに思いました。

春がやっとそこまでやって来た夕方のことです。

見上げる赤いほっぺも黒いひとみも元気がありません。

「おばちゃん・・・おじちゃん・・・」。。。

ちいさな声が聞こえました。

すると今度は、「え〜ん え〜ん」・・・

お向かいさんとタロのおばちゃんはびっくり!! どうして良いかわかりません。

こだまちゃんの声はだんだん大きくなりました。

ほっぺを伝って、つぎからつぎに大粒のしずくが落ちていきます。

こんなことは初めてです。

二人は、代わる代わるこだまちゃんの頭を撫でました。

すると、「あのね 引っ越しするの」ぽつりと言いました。

まつげにしずくをつけたまま、「みんなと ちがう小学校に行くんだよ」・・・。

「そうかい そうかい」お向かいさんはまた、頭をなでました。

タロのおばちゃんは、ポケットからキャンディーを出して、こだまちゃんの口に入れてあげました。

 

こだまちゃんはいろんなことを話し始めました。

ママのこと。パパのこと。おじいちゃんおばあちゃんのこと。

保育園の先生のこと。なかよしのお友達のこと。

そしてまた、ぽろぽろと涙を流すのです。
「パパは行かないの・・・ママがいやだって・・・」
「でも やさしかったよ いっしょに遊んでくれたよ」
二人は何も言えませんでした。
哀しそうに、こだまちゃんの胸にたまった水たまりを見ていました。
冷たそうな水たまり、言いたいことはいたいほどわかったのです。

 

「・・負けてはいけないよこだまちゃん・・」そう思いながら言いました。
「あそびにいっていいかい!」 「おばちゃんもいきたいよ」

「うん ママに言ってお迎えに来るね・・・」こだまちゃんは嬉しそうに言いました。

やっとほっぺがバラ色にもどり、涙もかわいていきました。

二人の手を取って「ホントに来てね ホントだよ」そう言いながら、小さく手をふってかえっていきました。

 

「さようなら おじちゃん おばちゃん おにいちゃん およめさん あかちゃん」「パパも」

こうしてこだまちゃんは、小さなろじと大きな悲しみを卒業していきました。


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