さくらの心

 

さくらさん 聞いて欲しいのよ

青空を透かして あたり一面もも色のさくらさん

あなたを見上げているでしょう 私

胸一杯に吸い込んで私もさくら色

とおる風が小枝を揺らすと

はらはらと踊ってみせるでしょう

これはね 私とおんなじ

こんなにも こんなにも こんなにも

「うれしいよって」おんなじなのよ

そう 私の心はさくらの心

この春をさくら色に上気して

「うれしい うれしい うれしい」って

踊っているよ

そんな心はさくらとおんなじ

 

いつしか君が見上げてるよ

まぶしそうな瞳を向けてね

堅い堅いつぼみのさくらさん

思わずもも色に染まったね

そして君が手をのばし 一差し指でふれたから

さくらは思わず小さく揺れたの

君のまなざしが「見せて欲しい」って言ったから

さくらはもも色の光を集めたのよ

君は青い頬を上気させたね

ほころんだ黒い瞳を 眩しそうに向けている

そのまさざしと頬の上気した色が

そのまま染まってほころんでゆくよ

春が来て 光のベールをふりまいて

あっという間に色を染めてくれるのに

そんなことより 君のまなざしの強さと来たら

春の光りはなんてもどかしいことでしょう


君が両手をのばして手のひらに包むと

細く優しい指先が桜貝の色をしているから

同じ色に もっともっと桜の色なりたい

君の上気した頬にも指先にも
もっともっと桜の色をあげましょう

君の瞳は驚きと輝きと桜色の吐息

大きなため息で見上げるから

君の頬と髪にふれたくて

大きくうつむいたのよ

思いきり花びらをとばしたの 気づいてくれた


もう堅いつぼみはほころんで
どこもかしこも君と同じ

透き通った頬の色になって

のびやかに君をかざりましょう

桜の色を手のひらに包んで
「さくらの心」を君に届けられたらね

本当に良いのに
君といっしょの春が 
「うれしい うれしい うれしいい」って

包んで届けられたらいいのにね


この頃になると思い出すのよ

胸一杯に私を満たす「さくらの心」

伝えることが出来たら良いのに

桜といっしょにさっさと風が連れて行ってしまうよ

花びらいちまい残さないで

さくらさん さくらさん 「さくらの心」持って行って
そうして 桜貝の指先に
「さくらの心」を今も忘れないでと置いてきて

「狂おしいほどのときめき」を
今も忘れていないと置いてきて
君の頬に置いてきて



2007年4月24日 峰響子


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