〔水平線〕 水平線といっても海のことではありません。被写体の目線とカメラ位置を水平に構えることです。カメラを手持撮影する場合はほとんどカメラマンの眼の位置にカメラを構えて撮ります。当然ですよね。大人のカメラマンの場合はこの撮り方をすると相手の目の水平線上にカメラがあることになります。これはとても平凡な写真になります。ここで頑張ってカメラを相手の水平線よりわずかに下の位置にしてみましょう。このちょっとした位置変化によりとても良い写真になります。
それがわかっても実行できない理由があります。相手の目線より下にカメラを構えるということは、カメラマンにとってはきつい姿勢をとることになるからです。だから「頑張って」撮ることになります。ここで強力な助っ人「三脚」の登場です。三脚にカメラを固定すればどんな構図も無理なくできます。記念写真などの際は特にお薦めします。イメージとしては三脚をあまり高い位置に立てない、ことです。この場合は前列の椅子に座っている人の目線よりやや下にカメラを設置します。
余談ですが前列座席にミニスカートの女性がいれば足の位置に工夫してやりましょう。まっすぐに足を置くよりやや斜めに足をそろえたほうがきれいに写ります。男性がいれば手の位置は両腿の上に置いて軽く握ります。すると男らしくカッコよい姿勢になります。股の上で両手を組む人が多いけれどあれはお薦めしません。
〔良い表情をつける〕 なに気なく「良い表情を付ける」と書きましたが、これはカメラマンのいちばん大事な仕事です。会話をしたり、手に物を持たせたり、します。人は手で物を持つと、注意力がそちらに分散され、顔表情の緊張感がゆるみます。いわゆる「ガチガチの表情」を回避できます。
良い表情を作るには隠れピースをさせたり、くつろいだ場では主人公の横に若い女性を座らせて(その女性は写さないが)、女性に主人公の手を(ひそかに)握らせたりして「笑顔」を作ります。たいていの男性は若い女性が手を握ると「うれしそうな笑顔」になります。
あるいは、5〜6枚撮っても「表情が堅い」場合は、「良くとれたけど、最後の一枚が良く撮れたら、あなたにあげますよ、」とカメラマンが言います。するとほどんどの人が「え、ありがとう!」とニッコリしますので、その瞬間にシャツターを押します。よい笑顔が撮れます。
この場合三脚にカメラを付けておき、カメラマンはファインダーを見なから言うのではなく、直接主人公を見て語りかけます。すると自然な笑顔が撮れます。素人はホンの一瞬しか笑顔を見せませんから一瞬の勝負です。手はいつでもシャツターを押せるように指を置いておきます。良い写真を撮るカメラマンというのは、そういう心理作戦も重要です。
「笑顔」がいいからといって、無理に「作り笑顔」にさせるのはいかがなものか、と思います。その人の自然ないつもの笑顔が出るように工夫するのはカメラマンの役目です。そのためには相手と出会った瞬間から、相手の良い表情をカメラマンは記憶しておきます。たいていカメラという物体がないときに自然な表情をします。写真を撮るため視界にカメラが現れると緊張するものです。その緊張顔を記録するより、ふだんの表情を記録したほうがいいのは言うまでもありません。といっても相手に「普段の表情」をして下さい。と言っても相手は素人です。よけいに混乱してしまいます。そこでカメラマンの「ポーズ付け」作業が始まります。
「ポーズを付ける」というとあまり良い響きでありませんが、棒立ち姿勢をやめて、よりふだんの動作に近い姿をカメラマンが例示してやるのです。これはカメラマンが日頃から「ポーズ集」などの本や雑誌を見て記憶しておき、それを応用します。いわゆる「撮られかた」の勉強です。人物撮りカメラマンとして熟達しようと思ったらこれは必須事項です。
私が東京のAカメラスクールに勉強に行ったのはそれの勉強でした。「素人撮りのカリスマ」と称されマスコミでの話題のA先生の講習やスタジオあるいは野外撮影実習から多くのことを教わりました。これは文字での表現は難しいものがあり。そのノウハウを宮日カルチャーの〔趣味のカメラ、人物の上手な撮り方〕というカメラ教室で同好の皆さんと楽しみ、そして研鑚したいなと思う大きな動機となりました。
笑顔とシャッターのタイミングが「ずれる」場合がよくあります。「アッ、さっき良い顔をしたのに…」と悔しい思いをすることがあります。そんな場合は「連写」を使うと一瞬の笑顔を撮ることができます。
ただし連写は野外とか、明るい室内で威力を発揮しますが、フラッシュが必要な「暗い場面」ではシャツター速度が遅くなるので、ブレが出やすいです。