<ママからのおねがい>
夜更かしをしないでください
ジャンクフードを好まないでください
乳製品を避けてください
体が冷える事をしないでください
がまんをしないでください。
強くあろうとしないでください
いっぱい運動をしてください
こうでなきゃだめというマイルールをつくらないでください
まちがってもまっいっかと思ってください
こんな日もあるさと鼻歌でもうたってください
理想など追い求めないでください
ここじゃないと思ったら逃げてください
あなたを大切にしない人と長くいないでください
この世界はそんなに強くできてはいないから
この世界は思ってたほどきれいではないから
(川村カオリ)
*****
乳がんのため38歳という若さで亡くなった川村カオリさんが、娘さんにあてたメッセージ。
川村さんは、まだ10代の頃に「ZOO」などのヒット曲で人気歌手となった女性。
テレビの特集番組で紹介されたものだが、どんな思いで書き綴ったことだろうか。
遅かれ早かれ、親のほうが先に死ぬことのほうが多い。
私は45歳で父親になったので、子どもと過ごせる時間は、平均的な父親と比べて短くなるだろう。
たまたまこのような人生を経験することになった自分は、子どもにどんなメッセージを残して去ろうか。
川村さんのように何か書こうと思っても、実際にはなかなか取りかかれずにいる。
この世の中はアンビバレントで単純に白黒はつけられないと、つい考えてしまうからだ。
「こうしてください」とアドバイスを遺すことに、ある種の危険性すら感じてしまう。
たとえば、「決してあきらめるな」というと聞こえはいいが、人生にはあきらめこそ肝心な場面も多い。
過去への未練を「あきらめ」て、ビタースイートな思い出を豊かな人生の糧にできるのが大人といえる。
“There is no rule but has some exception.(例外のないルールはない)”ということだ。
川村さんの「こうでなきゃだめというマイルールをつくらないでください」も、それ自体が「ルール」になっている。
「まちがってもまっいっかと思って」すませたり、「理想など追い求めないで」過ごすだけで、果たしていいのか。
「ここじゃないと思ったら逃げて」ばかりいては、いつまでも信頼できる人間関係や落ち着いた生活は築けない。
しかしまあ、仮に死を賭してメッセージを遺したとしても、子どもが100パーセントそれに従うとは限らない。
現実社会の中でもまれるうちに、その言葉の限界やさまざまな場面での例外に気づいていくことだろう。
子どもがいつか親を超えることを信じれば、「たたき台」として書いておくことに意義はありそうだ。
あなたがもし親なら、どんなメッセージを残しますか?
(2009/9/22)