<1日1冊>
本の読み方ですが、どのくらいのペースで読んだらいいかというと、目標は1日1冊が基本です。
1日1冊読めない人は、1日に3〜4時間の連続した読書の時間を取っていないという、ただそれだけなんです。
3〜4時間というと、つまらなく使っていませんか?
メールを打つのに2〜3時間も取ってないですか?
確かにメールの交換はおもしろい。
でも、おもしろいうというだけで不毛です。
人生に及ぼす効果は、何もありません。
つまり、人生の無駄づかいです。
だから、「昔なくて今あるもの」というものは、「これは本当に自分にとって必要なものかどうか」を考えてください。
どんなにおもしろくても、人生にはあまり意味がないものだなと思ったら、やめろとは言わないけれども、自分でコントロールしたほうがいいですよ。
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作家の浅田次郎さんの講演より。
この話の前提として、次の浅田さんの意見が述べられている。
(1)教養は、活字からしか吸収できない。
(2)映画やテレビからは、本の数百分の1しか教養は得られない。
(3)パソコンから得られるのは情報であり、教養ではない。
(4)世の中が豊かに見えるか、幸せな人生を過ごせるかは、何冊本を読んだかにかかっている。
(5)パソコンやゲームや携帯に囲まれている今の若い人は、大人と比べてハンディキャップを背負っている。
私も昭和生まれの人間だから、映像や音声よりも読書で育ってきた。
山間部の小学校に通っていた頃は、剣道以外にやることもなく、図書館の本をほとんど読んでしまった。
劣等生だった高校でも、空手道場に通う以外は、授業中も含めて読書読書読書の日々。
現在までに読んだ本は、トータルで1万冊くらいではないだろうか。
今も毎日読んでいるし、書店に行くと、本の匂いだけでエキサイトしてしまう(笑)。
本のタイトルをザーッと眺めているだけで、次々とアイディアが湧いてきて、直感が研ぎ澄まされる。
「速読術」なるものがあるが、たくさん読んでいるうちに、スピードはついてくるものだ。
量をこなせば、ノートに抜書きする大事な部分も瞬時に判断できるようになる。
本を買うときも、パラパラとめくっただけで、失敗はほとんどなくなる。
本を書く立場からホンネを言わせてもらうと、速読の類はけっこう失礼な話なのだ。
一字一句に気を配り、リズムを調整するために何度も読み返し、膨大な時間をかけて「作品」を練り上げる。
そんな著者の思いを知っているから、私は「遅読」派だし、本はとても大切に扱う。
現在は、本の読み方もずいぶん変わってきた。
冊数にこだわらず、読みながら「考える」ことに重点を置くようになった。
数ページ読んだだけで本を閉じ、ずっと考え続けることもある。
浅田さんの「1日1冊、3〜4時間」は、普通の社会人には少し厳しく聞こえるだろう。
しかし彼が言うように、2〜3時間はつまらぬ暇つぶし(kill time)をしているのではないか。
「情報」ではなく「教養」を深める時間を確保しよう、というメッセージだと受け取った。
蛇足ながら、私は平日でも1時間は本を読み、1時間は運動している。
自分の外に振り回されがちな生活の中で、自分の内側と静かに向き合う時間は貴重だ。
特にジムのトレーニングで自分の体とじっくり対話する時間は、私にとって大きな意味がある。
(2009/3/29)