<手紙>

年老いた私が ある日 
今までの私と 違っていたとしても

どうかそのままの 私のことを
理解して欲しい

私が服の上に 食べ物をこぼしても
靴ひもを 結び忘れても

あなたに色んなことを 教えたように
見守って欲しい

あなたと話す時 同じ話を
何度も何度も 繰り返しても

その結末を どうかさえぎらずに
うなずいて欲しい

あなたにせがまれて 繰り返し読んだ
絵本の あたたかな結末は

いつも同じでも
私の心を 平和にしてくれた

悲しい事ではないんだ
消え去ってゆくように 見える私の心へと

励ましのまなざしを
向けて欲しい

楽しいひとときに
私が思わず 下着を濡らしてしまったり

お風呂に入るのを いやがるときには
思い出して欲しい

あなたを追い回し
何度も着替えさせたり

様々な理由をつけて
いやがるあなたと

お風呂に入った
懐かしい日のことを

悲しいことではないんだ
旅立ちの前の準備をしている私に

祝福の祈りを
捧げて欲しい

いずれ歯も弱り
飲み込むことさえ 出来なるかも知れない

足も衰えて
立ち上がる事すら 出来なくなったなら

あなたが か弱い足で立ち上がろうと
私に助けを求めたように

よろめく私に
どうかあなたの手を 握らせて欲しい

私の姿を見て 悲しんだり
自分が無力だと 思わないで欲しい

あなたを 抱きしめる力がないのを
知るのはつらい事だけど

私を理解して 支えてくれる
心だけを 持っていて欲しい

きっとそれだけで それだけで
私には 勇気がわいてくるのです

あなたの人生の始まりに
私がしっかりと 付き添ったように

私の人生の終わりに
少しだけ 付き添って欲しい

あなたが生まれてくれたことで
私が受けた多くの喜びと

あなたに対する変わらぬ愛を持って
笑顔で答えたい

私の子供たちへ

愛する子供たちへ

*****

樋口了一さんの「手紙 親愛なる子供たちへ」より。
もともとは、ポルトガル語で送られてきたメールを日本語に訳して、歌詞にしたものらしい。

最近、まるで引き寄せられるように、直感で買った本が何冊かある。

ウォーキング・ツアー
象の背中 旅立つ日
続・象の背中 バトンタッチ
君に贈る最後の手紙

この「手紙 親愛なる子供たちへ」も、その一冊だった。

これらの本を並べてみて、ある共通したテーマに気づいた。
「遺書代わり」になるようなものばかりだということ。

たくさん年を重ねた、両親のことに備えてのことなのか。
年取った父親のもとに生まれてくる、子どものことを考えてなのか。
それはわからないけれど。

遺書といったら、自分で書くものだ。
しかしこれらの言葉の中には、すべての親と子に流れる気持ちが存在している。

読んだあと、最初に頭に浮かんだのはこの言葉。
「父さん、母さん、心配しないでまかせてくれ!」

動画はこちら(上の4冊もそれぞれ動画あり)。

http://www.youtube.com/watch?v=DNuEUygU1vA&feature=related

(2009/3/8)

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