<ぼけたらあかん長生きしなはれ>
年を取ったらでしゃばらず
憎まれ口に泣き言に
人の陰口愚痴言わず
他人のことは褒めなはれ
聞かれりゃ教えてあげてでも
知ってることでも知らんふり
いつでもアホでいるこっちゃ
勝ったらあかん負けなはれ
いずれお世話になる身なり
若いもんには花持たせ
一歩下がって譲るのが
円満にいくコツですわ
いつも感謝を忘れずに
どんな時でもへぇおおきに
お金の欲を捨てなはれ
なんぼゼニカネあってでも
死んだら持って行けまへん
あの人はええ人やった
そないに人から言われるよう
生きてるうちにバラまいて
山ほど徳を積みなはれ
というのはそれは表向き
ほんまはゼニを離さずに
死ぬまでしっかり持ってなはれ
人にケチやと言われても
お金があるから大事にし
みんなベンチャラ言うてくれる
内緒やけんどほんまだっせ
昔のことはみな忘れ
自慢話はしなはんな
わしらの時代はもう過ぎた
なんぼ頑張り力んでも
体がいうことききまへん
あんたはえらいわしゃあかん
そんな気持ちでおりなはれ
わが子に孫に世間さま
どなたからでも慕われる
ええ年寄りになりなはれ
ボケたらあかんそのために
頭の洗濯生きがいに
何か一つ趣味持って
せいぜい長生きしなはれや
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実家に行って、父の本棚を覗いていたら、「人生訓等資料」というクリアファイルが目についた。
中を見てビックリというか、大笑い。
私もこれにそっくりのファイルを、自分の本棚に立ててあるからだ。
本や雑誌を読んでいて、目に止まったいい記事をコピーし、ファイルしておく。
いつか生徒や子どもたちに話したり、講演や文章を書くときに引用するために。
同じ教師としての職業病なのか、単なる遺伝なのか。
父が書いた文章も、ワープロで打ったものが、いくつか入っている。
私のファイルもまた、同じだ。
中学校長時代の「古ノートの走り書きより」には、次のように書かれている。
「私はカバンの中にいつも一冊の古いノートを入れて持ち歩いている。
それには、本を読んでいて出会った気に入った言葉とか文章、講演会等で聞いた参考になることがら等が雑然と書き込んである」
オレの文章か、と思った。
というのも、私もまったく同じことをしているからだ。
しかも、かつて生徒向けに、「古いノートの断片」という雑文を書いたことさえある。
ますますテーマから外れるが、年を重ねるごとに、父と同じ無意識の「クセ」に気づくようになった。
車が動き出してからシートベルトを締める、いつも何か考えていて、いきなりひとり言を叫ぶ。
眠りに入るまでの一連の動作(2人の妻だけが知る)、断り下手で、いくつもの仕事を同時にかかえる…。
そのファイルの中に、ちょっとおもしろい文章を見つけた。
それが、上の文章だ(出典不明)。
「老いては子に従え」ということわざがあるが、そんな脱力系の指南。
「勝ったらあかん負けなはれ」
これがもうすぐ45歳になる私の、今後の課題かな。
頭ではわかっていても、まだまだ若造には負けんぞ、という気持ちがどこかに残っている。
くだらないことだが、私はまだ腕相撲で男子高校生に負けたことがない。
オヤジに負けまいと、次々と挑戦してくるのだが、今のところ余裕で退けている。
「いや〜、もう若いヤツにはかなわんな」と、「ひきつらない笑顔で」負けられる日が来るといいな。
(2009/1/24)