<弁当を作る>
 
あなたたちは、「弁当の日」を2年間経験した最初の卒業生です。
だから11回、「弁当の日」の弁当づくりを経験しました。
「親は決して手伝わないでください」で始めた「弁当の日」でしたが、どうでしたか。

食事を作ることの大変さが分かり、家族をありがたく思った人は、優しい人です。

友だちや家族の調理のようすを見て、技を一つでも盗めた人は、自ら学ぶ人です。

こまかな味の違いに調味料や隠し味を見抜いた人は、自分の感性を磨ける人です。

旬の野菜や魚の、色彩・香り・触感・味わいを楽しめた人は、心豊かな人です。

一粒の米・一個の白菜・一本の大根の中にも「命」を感じた人は、思いやりのある人です。

食材が弁当に納まるまでの道のりに、たくさんの働く人を思い描けた人は、想像力のある人です。

自分の弁当を「おいしい」と感じ、「うれしい」と思った人は、幸せな人生が送れる人です。

シャケの切り身に、生きていた姿を想像して「ごめん」が言えた人は、情け深い人です。

登下校の道すがら、稲や野菜が育っていくのを嬉しく感じた人は、慈しむ心のある人です。

「いただきます」、「ごちそうさま」が言えた人は、感謝の気持ちを忘れない人です。

家族が揃って食事をすることを楽しいと感じた人は、家族の愛に包まれた人です。

谷宮小学校の先生たちは、こんな人たちに成長してほしくって2年間取り組んできました。
おめでとう。
これであなたたちは、「弁当の日」をりっぱに卒業できました。

松下義男

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長年愛読しているマンガ雑誌、「ビッグコミックオリジナル」の「玄米せんせいの弁当箱」より。
とても美しい文章だと思ったので、紹介したくなった。

上は、実際に「弁当の日」運動を展開している、香川県の竹下和夫校長先生が、卒業文集に寄せられた文章が元になっている。
月に1回、材料の買出しから調理、弁当箱につめるまで、すべて子どもの手でさせているらしい。
すばらしい教育、食育だと思う。

参考:『“弁当の日”がやってきた』(竹下和夫著)

(2008/5/25)

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