<後藤静香>
■第一歩
十里の旅の第一歩
百里の旅の第一歩
同じ一歩でも覚悟がちがう
目標が
その日その日を支配する
■法則
考えるよりも為せ
受けるよりも与えよ
責めるよりも許せ
そしるよりも誉めよ
悲しむよりも悦べ
まちがいない人生必勝の法則
説明するひまさえ惜しい
断行すればすぐわかる
まねでもよし 行ってみよ
■今のままで
お前は
たしかに生まれた
何のために生まれたのか
お前は
たしかに生きている
何をすればよいのか
お前は
たしかに死ぬ
今のままで
死んでもよいのか
■考えよ
もっと落ち着いて考えよ
あまりそわそわしすぎる
太陽をみよ
月をみよ
星をみよ
花をみよ
お前のように浮き浮きしている者が
どこにある
せめて一時間でも、じっとしておれ
ただ一つのことでも
本気に考えてみよ
■瞬間
瞬間が全部であり
瞬間が永遠である
瞬間が初めであり
瞬間が終わりである
一切を
ただこの瞬間に集中する
刻々の完成が
永遠の完成である
今の今なる自己の完成が
永遠の自己の完成である
■四つの段階
見るものはある
しかし、知るものが少ない
知るものはある
しかし、感ずるものが少ない
感ずるものはある
しかし、つかむものが少ない
つかむものはある
しかし、行うものが少ない
■心眼
深きものを浅く見るなかれ
高きものを低く見るなかれ
清きものを醜く見るなかれ
広きものを狭く見るなかれ
深きを見得て浅きをさとり
高きを見得て低きをさとり
清きを見得て醜きをさとり
広きを見得て狭きをさとる
心眼を養うべし
■棄てよ
傲慢を棄てよ
書物がわかる
傲慢を棄てよ
人の話が耳にいる
強情を棄てよ
調和ができる
強情を棄てよ
身も心も軽くなる
■旅人の目
上っている友が悦んでいう
「誰を見ても善い人ばかり
何をしても都合がよい
私のような幸福者はいない」
下っている友が悲しんでいう
「誰を見ても悪い人ばかり
何をしても都合が悪い
わたしのような不幸者はいない」
上りの旅とくだりの旅とは眼がちがう
■価値
長さ一分の百聞の一
価一円のピンがある
一万円の懐中時計の
両針をとめるために使ってある
ただ一円のピンが
万金の時計を支配する
だれでも自分を軽蔑するな
どんな小さい粗末なものに
どんな大きい使命が
あるかも知れぬ
価値とは、物それ自体の値ではない
■誰のお陰ぞ
今日たべる米
誰がつくったか
いま着ているもの
誰が織ったか
いま住む家
誰がたてたか
かく思うこの身は
誰が育ててくれたのか
■楽しみ
種をまくときは
種まきが楽しみ
草をとるときは
草とりが楽しみ
虫がついたら
虫とりが楽しみ
実ったら
とり入れが楽しみ
*****
つぶやき:
勤務先(私立高校)の図書館で、「「心」が強くなる48の詩」という本を見つけた。
後藤静香(せいこう)という人の、ちょっと変わった詩が紹介してあった。
不思議とひかれる文がいくつかあったので、ここに紹介した。
後藤氏は明治18年、大分県生まれ。
大正時代に社会教育に専念し、月刊誌や著作、講演などの活動を行った人だという。
私がこの本に目を引かれたのは、離婚した次の年の年賀状に自分が書いた、次の言葉を見つけたからだ。
<出ずる月を待て 散る花を追うことなかれ>
「どういう意味?」などと聞かれもしたが、当時の私には何よりの言葉だった。
この言葉をどこで見つけたかは忘れたが、後藤氏の詩の一部分であったことがわかった。
私の住む宮崎県の隣の県出身の人でもあり、ちょっとした縁を感じる。
以下に、その他の詩から、目に止まった文をメモしておく。
<富士に登った人間は 登ろうと志した人間だけであった>
<人生は広さよりも深さである>
<必要な木は育つ 不要な木は枯れる>
<何を為すべきか われらの領分である 何が現れるか 神の領分である>
<人間らしく生きた時間の合計のみが 人間の年齢であり 動物らしく生きた時間の合計は 動物の年齢である>
<腹立たしきとき 花は見えず 人を憎むとき 鳥の声はきこえず>
(2007/11/12)