<口ぐせが人生をつくる>
ある時期、私は東京の高輪プリンスホテルに住んでいたことがあります。
そして、毎朝7時にホテルのロビーラウンジでコーヒーを飲むのを習慣としていました。
そのコーヒーの値段は1杯500円くらいという、その頃としてはかなり高いものだったと思います。
あるとき、ホテルに私を訪ねてきた人が、500円のコーヒーを飲む私を見て、えらく感心したのです。
そして、自分にはそういう真似はできないと言いました。
そこで、私はこう答えました。
「そういう考え方をしている限り、あなたは上へは行けませんよ。
私は今ここで、あなたの月給と同じくらいの35万円の部屋代を毎月払っていますが、もったいないとは思っていません。
500円のコーヒーを飲むことだって同じです。
それはどういうことかというと、このラウンジの外に見える2千坪の庭を、私は自分の庭だと思っているからです。
これだけ広大な庭を持ち、しかもその手入れもしてもらっている。
実にきれいな庭の景色を前においしいコーヒーを飲むことができる上、500円で庭の手入れまでしてもらっていると思えば、安いものでしょう。
そう考えると、このコーヒーはタダと同じですよ」
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この話が載った本が出版されたのは、1995年。
市立図書館で見かけたのだが、読んでみてビックリした。
私とまったく同じ発想だったからだ。
私も当時、宮崎の海沿いのリゾートホテルの最上階(45階)から太平洋を見渡しながら、普通の喫茶店の3倍はするコーヒーをいつも飲んでいた。
今でも外食をするときは、たとえばステーキや焼肉であれば、最高級の宮崎牛を注文する。
まあその代わり、酒・タバコ・パチンコなどは一切やらないが。
考えてみれば、学生時代からそうだった。
家賃1万円、木造でトイレ共同、風呂なしのオンボロアパート。
でも、木枠の窓に腰かけて飲むコーヒーだけは、ブルーマウンテン。
オーストラリアとニュージーランドを無銭旅行したときも、最後は高級ホテル「ハーミテージ」に宿泊して、セスナでマウントクック頂上の氷河に着陸。
だから逆に、離婚して無一文になったときも、ぜんぜん貧しさは感じなかった。
カーテンのない窓からは美しい星空が見えたし、安い露天風呂につかって木々のざわめきを聴いていれば、心は億万長者だった。
さすがに寂しかったけど(笑)。
この人が成功の秘訣だと主張する「口ぐせ」を、この本をきっかけに私も変えた。
もともと楽しんでいたリッチなメンタリティ(別名ヘリクツ&こじつけ)に加えて、言霊の波動バリバリのポジティブな口ぐせまで身につけた。
それで、今の幸せ感があるんだろうなと思う。
この本は今思えば、後日「口ぐせシリーズ」で有名になった佐藤富雄さんの著書だった。
人気が出てリバイバルということか、文庫本で復刊したようだ。
(2006/3/28)