<スピリチュアル格闘家・試合前>

「日曜日の昼下がり、僕がアイスコーヒーを飲みながら読書をしていたら、いきなり降ってきたんです。あ、沖縄に合宿行こうって」

「合宿では月光浴をしました。やっぱり自然のリズムで生きると、物事の流れもよくなるんですよ。グレゴリオ暦(世界標準暦)というカレンダーで僕らは生きていますけど、便宜的なもので、本当の自然の流れというものは、また違うものなんです」

「自然のリズムの中で生きていくことは、シンクロニシティ(共時性=心に思う事象と現実の出来事が一致すること)も多くなるんですよ。そういった意味で月光浴をすると、いい流れができるんですよね」

「内観するための瞑想なので、それぞれ気が向いたら終わります。月の光を浴びていると、心がスーッとしてくるんです」

「先に感謝するんです。神様、勝たせてくれてありがとうって。本当の祈りというのは、感謝を先にすることなんですよ。先に“こうなってほしいんです神様!”とお願いすると、叶わないかもしれないって思いも入りますから。そうすると、神様のことを疑うことになるんですよね。僕は無宗教ですけど、そうした絶対的な存在は信じているんです。だから毎朝、神に“神様、最強王者にしてくれて、ありがとう”って書いていますよ」

「すべてこのとは、自分で決めているんですよ。だから“勝たせてくれてありがとう”と言えばいいんです。成功の秘訣は、愛と感謝ですから」

「みんなネガティブなパワーで、相手をねじ伏せようとしますよね。でも、そういうのは限界があるんです。ネガティブなパワーって、たいしたことないんですよ。僕が、対戦相手を感謝するじゃないですか。そうすると、“やってやるよ”と思っていた相手も、ポジティブなパワーになっていく。それだけポジティブなパワーって、ネガティブなパワーよりも強いんです」

「試合だけではなく、人生においてもすべての人を幸せにさせるのが、愛と感謝なんです」

「これから人生、勝ち負けというシステムが崩れますよ。実は負けたときに気づくことって、けっこう大きいんですからね。受験や事業に失敗したり、失恋したときに初めて気づく、意外な真実もありますし。成功して見出すことは、失敗して足元を見つめ直したときと比べて、気づく真実は少ないと思っています」

「頑張っても勝てないものは勝てないです。頑張って勝とうとするのは、古い考え方で、フィジカルだけで克服しようとしてはダメです。どんなに練習をやっても、自分のマインドが一番ですからね。そもそも苦しい、乗り切ろうと思うのではなく、当たり前だと思えばいい。オリンピックでは、いくら人一倍努力しても、勝てない人は勝てない。なぜかというと、大舞台になったときこそ、自分自身の心の状態が、大きく左右するからです」

「苦しいと過剰に意識するのではなく、苦しい体験をしていると、冷静に考えるべきですね。努力だけでは勝てない。努力の反対は、感謝なんです。学びの進化形は、遊びなんですよ。遊びの感覚で取り組めばいい。苦悶の表情を浮かべるよりかは、同じことをやっていても、笑っているほうがいいに決まっていますから」

「“必死”というのは、“必ず死ぬ”と書きますよね。必死の力なんて出さない。10回しかできないことを、13回する必要はないんです」

「“何かをやらなければならない”というのは、ネガティブアプローチといって、実は身にならない。“何かをしたいからする”というのが最も大切なことなんです。やらなければならないという考え方で練習をしていると、ストレスがたまってくるし、試合当日にはボロボロになりますよ。フィジカルだけで克服するのは、限界があります。肉体と精神と魂、三位一体になっていますから、すべてを引き上げていかなくてはなりません」

「発想が、すべてネガティブなんです。必死になるとか、イジメ抜く、努力するとか。努力は、“奴隷の力”と書きますからね。だから楽しく、気合を入れる。そういったものに意識を向けないと、充実した練習にはならない。必要以上に辛いという意識を向けると、それだけで終わりますから」

「我慢はしないですね。自分でルールを作るのであって、他者が決めるものではないですから。結局、本当に幸せな人は、自由人なんです。自由な人って、我慢する必要がないですからね。“We Are All One”の精神だと、他者を傷つけることは自分を傷つけることになる。そういう世界になれば、本当は法はいらなくなってくるんですけどね。自由に楽しく、やりたいことをやればいいんです」

「あと6・7年で、民主主義社会の構造も変わっていきますよ。物質的社会も崩れます。意識レベルが変わるということです。ビジネス界とか、トップの人はみんな気づいていますよ。IBMなんて、テレポーションの研究をしているんです。ビル・ゲイツだって、自分の資産のほとんどすべてを寄付すると言っています。トップの人はわかっているんですよ。パワーゲームで利益を上げても、あまり意味がないことが。みんなに分け与えることが、得ることだと気づいてくる。いかに世の中に還元できるか。それが大事なことだと気づくようになるんです。自分の利益のためだけにやっていると、限界がある」

「僕は昔、自分のためだけに闘っていましたからね。デビューした当時は。だけど、今は利他主義です。他の人に、どういう利益を与えられるか、そればかりを考えて行動しています。そうなると楽しいですよ。1万円札よりも、人の感動ですから。そのエネルギーをムシャムシャ食べていくほうがおいしい。与えることは、得ることですから。経済も、そういう流れになってきていますからね。あげるのは、嬉しい。もらうことよりも、裕福な気持ちになりますね。自分の夢を実現するためには、自然と利他主義になっていくんです。自分が何か物事をやるときにこそ、人に対してどんな利益を与えるべきかを考えていくんですよ。そうすると、嫉妬もなくなるし、エネルギーになってまだ戻ってくる。だから僕は“We Are All One”の旗を4年間も広げています。僕の役割は、メッセンジャーですからね」

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つぶやき:

変幻自在のトリックスター、須藤元気さんのインタビューより。
趣味が「精神世界の勉強」というように、格闘家らしからぬ発言のオンパレードだ。
私は彼の大ファンで、試合や記事はすべてチェックしている。

著書「須藤元気・幸福論」には、空海の影響で四国88カ所お遍路の旅をしながら考えたことを、ユーモアあふれる軽快なタッチで綴っている。
その間、カウンターを片手に歩きながら、「ありがとう」をなんと21万90回言ったそうだ。
彼の言っていることは、ほとんど私の考えていることと同じなので、コメントは以上。

(2006/2/1)

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