<おなかがすいたらごはんたべるんだ>
師が弟子に言った。
「賢者は世の中の 明るきところだけど見て 生くるものじゃ」
すると弟子が尋ねた。
「どうしたら 明るいところばかり 見ていられるんですか」
弟子に答えていわく
「暗くなったら寝て 明るくなったら 起きればいいのじゃ」
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ある人が長い研究のすえ 水の上を歩く方法を見いだした。
ほんとうにすごいことだ。
たくさんの人たちが 彼に拍手を送った。
世の中が大騒ぎになった。
けれど彼を見て ある漁師がこう言った。
「ばかげたことだ。
魚は水野なかにいるっていうのに」
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映画のフィルムを逆回しすると あげるものは貰うものになり 奪う物は奪われるものになる
散る花は咲く花になり 寄せる雲は 散る雲になる。
映画のフィルムのように 心も逆回しにしてみると
憎しみは愛になり 苦悩は愛着になるだろう。
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農夫が馬に聞いた。
「おい、馬よ。お前は上り坂が好きか、下り坂が好きか?」
馬はしばらく農夫を見つめていたが こう言った。
「俺にとっちゃそんなことは問題じゃないんだ。
重要なのは 俺の背中に 何を積んでゆくのかってことさ」
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トリの父ちゃんは 心が豆腐のように柔らかだ。
だから誰かが心に 釘を打ち込んでも 自然に抜け落ちてしまう。
スニの父ちゃんは 心が木のように堅い。
だから誰かが心に 釘を打ち込んだら 抜けなくなってつらい思いをする。
いつも心が痛んでいる。
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近くにあると どうってことないのに 遠く離れると 大きく見えてくるもの。
それがまさに 幸せだ。
遠く離れていると どうってことないのに 近くにあると 大きく見えてくるもの。
それがまさに 苦悩だ。
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人はなんの考えもなく 因縁の種をまく。
なんの考えもなく 種をまいてしまうので なんの種をまいたのかも わからない。
そして後になって その種が芽ばえ 花を咲かせてから
妙な花が咲いてしまったと 愚痴をこぼすのだ。
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いい相性とは 風のような男が 旗のような 女性に出会うこと。
涙もろい女性が ハンカチのような男と 出会うこと。
悪い相性とは 渇いた男が 砂漠のような女性と 出会うこと。
美しい女性が 暗闇のような男と 出会うこと。
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窪みが穴になり始めるのは シャベルを握った時からで
塀が高くなり始めるのは 石を持ち上げた時からだ。
目的地が近づきだすのは 一歩を踏み出した時からで
問題が解決しだすのは それに着手した時からだ。
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父の前では子どもであり 妻の前では夫である。
子どもの前では父であり 弟の前では兄である。
相手によってたびたび変わる 僕って何者なんだろう?
富める者の前では 貧しきものになり 貧しき者の前では 富める者になる
僕って一体何者なんだろう?
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つぶやき:
「おなかがすいたらごはんたべるんだ」(イ・ギュギョン)より。
副題は、韓国の賢者による「短いお話、長い考え」。
私は「映画のフィルムを逆回しすると…」が、いちばん印象に残っている。
言われてみれば「あたりまえ」のことばかりだが、よく読むとかなり深い。
今日たまたま心に引っかかったものを抜粋したが、他にもたくさんの文章がある。
長く読んで短く考えるよりも、短く読んで長く考えていきたい。
(2005/12/23)