<あなたへの質問>
砂の上をはだしで歩いたのはいつですか
草のうえに座ったのはいつですか
野の花をじっと見つめたことがありますか
風はどんなにおいがしましたか
耳を澄ますと何が聞こえますか
沈黙はどんな音がしますか
じっと目をつぶると何が見えてきますか
好きな花を七つあげられますか
「美しい」とあなたがためらわずに言えるものは何ですか
街路樹の木の名前を知っていますか
草や木を友だちだと考えたことがありますか
何歳のときの自分が好きですか
人生の材料は何だと思いますか
問いと答え 今あなたにとって必要なのはどっちですか
これだけはしないと心に決めていることがありますか
世界と言う言葉で思い描く風景はどんな風景ですか
あなたにとって「わたしたち」というのは誰と誰ですか
いい一日とはどんな一日ですか
「ありがとう」という言葉を今日何回口にしましたか
ゆっくりと暮れてゆく西の空に祈ったことがありますか
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つぶやき:
詩人の長田弘さんの作品。
ざっと読むと、ただ質問が並べてあるだけの詩だ。
私はたまたま最初に、この詩を目を閉じたまま「聞いた」のだった。
ひとつひとつ問われるごとに、頭の中にさまざまな情景が浮かんでくる。
久しぶりに自分自身を見つめて、いろいろなことに気づいた。
少しずつ、心が癒されていく思いがした。
忙しい日々、ついつい目の前の雑事をこなすのが精一杯で、あっという間に時が過ぎていく。
大人には、独りになって目を閉じて、静かに自問自答する時間が必要だ。
人生の質は、自分に対する問いの質によって変わってくるのだから。
(2005/8/21)