<究極の成功法則>

彼にとって野球はまさに最愛のものであり、どんなに打ち込んでいても、それによって何か他のものを犠牲にしているという感じはない。
だからどんなに練習が辛くても、体がしんどくても、イチローは一生懸命に取り組むことができる。

イチローにとって野球をすることは、好きな牛タンを毎食べることと、なんら変わりないのである。
好きな物は食べる。嫌いなものは食べない。
好きな野球はする。嫌いなことはしない。
実に単純明快である。

嫌いな食べ物でも体によいものは、どうすればストレスなく食べられるかを考える。
野球でも、どうやったらストレスなく取り組めるかを考える。

だから、自分が努力しても結果的にストレスのもとになってしまうものには、見向きもしない。
たとえば、どんなにすばらしい成績でも、上がったり下がったりする打率には興味がない。
一打席一打席、上下する打率に一喜一憂していたら、ストレスがたまるからである。

イチローがこだわるのは、ヒットの数だ。
ヒット数は増えることはあっても減ることはないから、変なストレスは生まれない。
こんなふう発想を転換することで、前向きな姿勢を保っているのである。

「遙かなイチロー、わが友一朗」(義田貴士/KKベストセラーズ)より。

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「目標を紙に書いて、イメージすれば、実現する」
これは、事実といっていいだろう。
不思議なことではなく、一種の物理現象なのだから。

私自身、その方法でたくさんの願望が現実のものになった。
しかし、いわゆる成功法則には、思わぬ落とし穴があった。
目標の達成、つまり「成功」が「幸せ」につながっていないのだ。

もちろん、目標を達成したときには、手に入れたものが大きいほど喜びを感じる。
だがしばらくたつと、それが普通のこととなり、やがて虚しさに変わってくる。
そしてまた、次の目標を設定して走り始める。

理由はあまりにも単純だった。
自分にとって、「本当に好きなこと」ではなかったから。
心の底から好きなことをやっていれば、成功は自動的であり、成功法則などいらないのだ。

方向性を間違えると、セミナーを渡り歩き、高額な教材を次々と購入する「成功おたく」になる。
熱意を持てとか、集中力をつけろ、絶対にあきらめるなと言われ、そのような人格になろうと必死で努力する。
「本当に好きなこと」をやっていれば、熱意も集中力も忍耐力も、勝手に湧き上がってくるということに気づかない。

イチローがもし事務の仕事についていたら、野球ほどの成功は難しかっただろう。
彼は並外れた情熱の持ち主ではなく、情熱的にならざるを得ないほどの目標を持った人だったのだ。

究極の成功法則は、「目標達成の方法」ではなく、「目標設定の方法」だった。
その方程式は、「好きなこと」と「得意なこと」の重なり合う部分を取ることだ。

(2004/10/31)

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