<No Rain, No Rainbow.>
グアム島、恋人岬の南に位置する、タモン・ベイサイドのホテル。
海を見渡す丘に建つチャペルで挙げる、結婚式の朝。
人生の区切りへの気持ちも新たに、部屋の窓を開く。
降りそそぐ陽光の向こうに、エメラルドグリーンの海が広がる。
まるで今日の結婚を祝ってくれるような、美しい南国の風景。
…のはずだったのだが、現実はいきなりの雨模様。
しかし、グアムで3日も過ごせば、こんな雨くらい気にならなくなる。
こちらはスコール(にわか雨)が一日に何回もあって、すぐに晴れ渡るからだ。
思った通り、しばらくベランダで珈琲を飲んでいると、今までの天気がウソみたいに日が差してきた。
そこに、信じられないような虹が姿を現した。
しかも、生まれて初めて見る「ダブル・レインボー」。
この2本の虹を見られるのは、とてもラッキーなのだそうだ。
まだ眠っていた妻を起こして、その2本の虹を二人で見る。
どちらも「すごいね」という言葉しか出てこない。
今度こそ、大自然からの祝福だと受け取ろう。
しばらく眺めていると、外側の虹が薄くなって、やがて消えていった。
すると驚いたことに、残った虹がなんと円になって、私たちの足下の海まで近づいてきた。
丸い形になる虹は、こちらでもとても珍しいと聞く。
英語に“No Rain, No Rainbow.”という言葉がある。
「雨が降らないと、虹は見えない」。
その言葉の本当の意味を、私は今日の朝に知った。
海外で挙式をするという二人の希望に、どちらの家族も賛成して、みんな集まってくれた。
これまで、数々の「雨」を乗り越えてきた。
一生忘れることのできない、涙と笑顔の結婚式となった。
グアム島で過ごした数日間、たくさんの素敵な出合いがあった。
その中に、少年とも青年ともいえる一人の若いポーターの、屈託のない笑顔があった。
ホテルを出入りするたびに、職場で笑顔を心がけている私でさえ照れるような、満面の笑顔で迎えてくれた。
仕事として、そう高い給料をもらっているとは思えない。
チップといっても、平均は荷物を運んで1ドル(約100円)だという。
それでもこんなに楽しそうに働く彼を、私はひそかに自分のモデルの一人に加えさせてもらった。
他のポーターたちも、いくら客とはいえ、いつも陽気に笑いかけてきてくれた。
式が終わってホテルに戻り、リムジンから降りると、全員でお祝いの出迎え。
ウエディングドレス姿の妻は、どれだけ嬉しかったことだろう。
お金にもならないのに、そこまで他人のことで大喜びして、何の得になるというのだろう?
ハッピーだからお祝いしてくれるのか、お祝いするから自分もハッピーになれるのか。
そこに何か、彼らの「幸せの秘訣」みたいなものを感じた。
(2008/6/14)