<「娘への手紙」への質問に答える>
【Mさんのメール(1)】
突然のメールですみません。
初めまして。
Mと言います。
眠れない夜に携帯で心穏やかになれる言葉を探していた時、このページに辿り着きました。
出会ったのは、心に風の吹いた言葉のページでした。
私は、英語も読書も苦手で…だけど「つぶやき」も含めて、一気に読みました。
メールをさせて頂いたのは、感想を述べるためではなく…愛という不確定要素についてです。
娘さんに対する愛情が、すごく伝わってきて、羨ましくもあり嫉妬したくもなり…それでも自由な交流が叶えばいいな、と心から思います。
私は今年で30歳になりますが…16歳で父親が、20歳で母親が、それぞれの人生を歩み出し、それまでも親からの愛を感じずに生きてきました。
そして今月の終りには、私自身たった3年の永遠の誓いにもピリオドを打ちます。
ここへきて、私の性質というか性格の偏りがAC(アダルトチルドレン)であると発覚し…その主な原因が親。
娘さんも私も、他の子どもも…みんな、生まれて初めて接する人間が、大人が、女性が、男性が、親です。
よくも悪くも全ての判断基準が親になると思うんです。
私は、親のトラウマで愛に対する距離感が掴めなかったり、絶えず恐怖や不安を拭えません。
そこで、うかがってみたいんです。
もし不快にさせてしまったのなら、すみません。
中元さんにとって愛とは何ですか?
凶器と化した言葉を心から取り除くとき、中元さんはどう対処されますか?
大人になってからでも恐怖を感じない愛という感情は作れると思いますか?
二人の父親の存在に娘さんが、混乱するとは考えませんでしたか?
中元さんが娘さんに愛を注ぐとき、愛の見返りを求めていますか?
もし、娘さんが中元さんの愛を利用しようとしたら、どうされますか?
初めてのメールにも関わらず、失礼な質問の数々、申し訳ありません。
不快に思われたなら、なかったことにしてください。
父親として本当に素晴らしいし、感動しました。
私には、わかりませんが、親子というものは双方にとってかけがえのない存在なんでしょうね。
携帯のため、読みづらいと思います。
直接、回答がなくてもいいんです。
サイトのどこかで触れてもらえれば…幸いです。
【中元の返信(1)】
おはようございます(^_^)
私は精神科医でもヒーラーでもありませんので、失敗に学んできた一個人としてご質問にお答えさせていただいます。
ご両親との関係性が、Mさんの人間関係に影響を与えているのですね。
ご自身がアダルト・チルドレンの要素を持っていることに気づかれ、状況を少しでも改善しようと努力されている、切実な気持ちが伝わってきました。
インターネットで心穏やかになれる言葉を探しておられることも、Mさんの必死な前向きさを感じます。
> 中元さんにとって愛とは何ですか?
私を選んでくれた人を、いちばん大切にすることです。
私のもとに生まれてきてくれた娘もそうですし、私を人生のパートナーに決めてくれた妻も同じです。
そういえば、愛という字は「心を受ける」と書くんですね。
> 凶器と化した言葉を心から取り除くとき、中元さんはどう対処されますか?
取り除こうとすると、なかなか消えてくれないのがマイナスの感情や言葉です。
今の私は、それを受け入れて、十分に味わいつくすことにしています(うつにならない程度に)。
大喜びしてもいずれ慣れて飽きて落ち着くように、それらも薄くなっていくかもしれません。
歌手の野口五郎さんによると、コンサート直前のネガティブな気持ちを払拭するために、スタッフたちとメチャクチャ汚い言葉を連発して叫ぶそうです。
これ、スッキリするでしょうね。
良い感情も悪い感情も、人間の自然な感情ということでは同じですから、良い悪いをつけすぎないほうがいいようです。
> 大人になってからでも恐怖を感じない愛という感情は作れると思いますか?
大人になってからのほうが、気持ちが楽になることを私は体験しています。
年をとるって、本当にいいですよ。
作家の曽野綾子さんに、「中年以後」という本があります。
立ち読みでも図書館でもいいので、この本のP16〜25を、ぜひMさんに読んでいただきたいなと思いました。
「許しと受容の時」というタイトルで、「人は誰でも、生まれた家庭環境に、なにがしかの屈折した感情を持っている」から始まる文章です。
> 二人の父親の存在に娘さんが、混乱するとは考えませんでしたか?
考えました、というより、元妻にもそう言われました。
娘本人は、友だちに「二人もお父さんがいるんだよ」と言っていたようです。
堂々とそう言える社会をつくりたい、とも常々考えています。
> 中元さんが娘さんに愛を注ぐとき、愛の見返りを求めていますか?
求めていません。
少なくとも、血のつながっている娘には。
> もし、娘さんが中元さんの愛を利用しようとしたら、どうされますか?
喜んで利用されます(^_^)
私自身も、Mさんの質問に答えることで、改めて気持ちの整理がつきました。
上記の内容は、もちろんMさんのプライバシーに直接影響のない範囲で、他の方々のためにも後日サイト内で触れさせていただこうと考えています。
この件については、ご了承いただけますか?
Mさんの心の安らぎをお祈りします。
では、失礼いたします。
【Mさんのメール(2)】
こんにちは。
先日の不躾なメールに対して、優しい返信をありがとうございます。
メールを送信したあと、中元さんを傷つけてしまったのではないかと反省しました。
何かに、懸命に頑張っている人に対して言うべきことではなかったのではないか、また言うにしても他に最適な表現や言葉があったのではないか…と。
中元さんから返事を頂き、少しホッとしました。
ありがとうございます。
名前以外でしたら、サイトに何を載せて頂いても構いません(^-^)
中元さんの娘さんに対する迷いない愛情が伝わってきて、感動しました。
『無償の愛』と子を持つ知人が口癖のように言っていたんですが、彼女が言うと違和感を感じました。
きっと発言に一貫性がないからですね。
中元さんの娘さんに対する愛は、無償の愛だと感じました。
二人のお父さんがいる…そう思える娘さんは、とても立派だと思います。
人を思いやれる優しい心を育んでいるんでしょうね。
なぜ愛について、うかがったのか…お話させてください。
<このあと、Mさんの家族がいわゆる「昨日不全家族」であったこと、その中でMさんが一生懸命に生きてこられたことが切実に語られた>
親というのは、子どもを物扱いして責任を負わなくても罪にはならない。
親なんか苦しめばいい、火炙りにでもしてやりたいほど憤りを感じて眠れなかったときに中元さんのサイトに出会ったんです。
そこには、愛や感謝…許すことを通して心が開放されていく、そんなメッセージが並んでいて、衝撃を受けました。
それと同時にキレイゴトだ(申し訳ありません)とも思いました。
もし、それが本当なら、私の中の父親(両親)という精神的な足枷を違う角度で見れるんじゃないか、許すことはできなくても、こだわらずに生きていけるんじゃないかと思ってメールさせて頂いたんです。
それでも、虐待や放棄が飛び交う中で、会うことも許されない娘さんに変わらぬ愛情を注ぐことに意味はあるのか?
それとも愛情を注ぐことで、この人は心の隙間を埋めようと娘さんを利用しているのか?(または自分の罪を軽くしたいのか?)
と、非常に歪んだことを考えついたんです。
だから最後の質問で、愛を利用されたら…と聞きました。
そしたら喜んで利用されますって答えがあって…私はよくわからないですが、泣いていました。
自分を愛するところから始めてみようと思います。気分がコロコロ変わってしまうかもしれませんが…。
本当にありがとうございます。
【中元の返信(2)】
わざわざ丁寧なお返事、ありがとうございました。
今読み返すとまったくの言葉足らずで、大変な状況の中を生きてこられたMさんに対して軽々しい部分があったのではと反省しています。
また、文章の端々にMさんの正直なお気持ちと誠実さが感じ取られ、非難中傷の飛び交うインたーネット上において、筆者として恵まれていると感じました。
Mさんが非常に条件の厳しい家庭で育ち、その影響がその後の人生に大きく影響しているのは、読ませていただいた通り事実として存在しています。
しかし、だからといって、Mさんが今後も幸せになれない、心の平安が訪れないということにはならないと思うのです。
「娘への手紙」と矛盾するように聞こえるかもしれませんが、たとえ血がつながっていても、違う人間ですし、まったく別の人生です。
これからMさんがどう生きられようと自由なのですが、自分を傷つけるような生き方だけはしてほしくありません。
Mさんには、負の先払いがあった分、幸せになる権利、いや義務さえあると思います。
私の場合は、過去の何が影響しているのでしょうか…。
自分を愛してくれる人につらくあたり、ギリギリまで試す癖がありました。
それで離れていった人の後姿を見送りながら、「ほら、やっぱり偽りの愛だった」と自分を納得させようとするのです。
> 自分を愛するところから始めてみようと思います。
おっしゃる通りだと思います。
当時の私は、心に欠けているものがある自分を愛することができませんでした。
そんな者に、疑いなく人を愛せるはずがないですよね。
ダメな自分をゆるせるようになったきっかけは、娘の存在でした。
そして、現在のパートナーとの出会いです。
私は40を過ぎてからこんな状態ですから、まだお若いMさんは、絶対大丈夫です。
> それと同時にキレイゴトだ(申し訳ありません)とも思いました。
キレイゴト、そうなのかもしれません。
元妻には、「自己満足」と言われたことを覚えています。
でも私は、「キレイゴトは、究極のホンネ」だと思っているんですよ。
私の日常を見れば、「これがあの文章を書いた男?」とガッカリされるはずです(笑)。
それでも私の心の中のどこかに、キレイゴトに見えるホンネが確かに息づいているんです。
掲載のご許可、ありがとうございます(^_^)
お互いに、今幸せでいるようにしましょうね。
(2008/3/18)