<二大成功哲学の謎>

よく知られている成功哲学の教材には、次のようなことが書いてあります。
「明確で強い願望を持て」
そうすれば、潜在意識の力で「思考が現実化」するそうです。

ところが、これに真っ向から異議を唱える人もいます。
「願望を持つと実現しない」
執着はよくないことで、ただ感謝していれば、すべてがうまくいくというのです。

願望を持つということは、裏を返せば現状に満足していないということ。
これは、今の環境や条件を与えてくれた神様?に対する不平不満であり、宣戦布告なのだそうです。
そう言われてみれば、そんな気もしないではありません。

困ったことに、まったく逆の主張をしている両者とも、億万長者として有名になっているのです。
ここでは仮に、前者を「成功哲学系」、後者を「精神世界系」と呼ぶことにします。
成功して幸せになりたいと願っている人は、一度はこれらの異なる主張に混乱してしまいます。

さあ、どちらが正しいのでしょう?
その前に、ビジネス界でよく用いられる「時間管理のマトリックス」を紹介します。



×緊急
○重要


○緊急
○重要


×緊急
×重要


○緊急
×重要

 タテの軸は、重要度。
 つまり、上に行くほど重要度が高くなる。

 ヨコの軸は、緊急度。
 つまり、右に行くほど緊急度が高くなる。

 A:緊急で、かつ重要なこと。
 B:緊急ではないが、重要なこと。
 C:緊急だが、重要ではないこと。
 D:緊急でもなく、重要でもないこと。

Aの仕事を真っ先にこなし、Dをカットしていくのが基本です。
問題は、BよりもCが優先されがちなこと。
ただ急いで片づけたいだけで、あまり意味はありません。
あえてBに時間を使うことが、本当の意味でいい仕事をする秘訣だと思います。

ただ、これは「重要度」と「緊急度」の2つの観点だけで分けた場合です。
最近、このマトリックスには意外な欠点があることがわかりました。
「楽しさ度」が抜けているのです。

いくら能率的に仕事をして成果を上げても、楽しくなければ何の意味もありません。
お金持ちや有名人が自殺することがあるように、成功しても幸せでなければ虚しいだけです。
今までの時間管理法には、3本目の軸である感情が必要なのです。

「緊急度」と「重要度」だけでは、平面しかできません。
「楽しさ度」を加えると、イキイキとした立体になります。
まるでルービック・キューブのように。

「時間=人生」です。
人生で最も大切なものを1つだけ選ぶとすれば、「緊急度」「重要度」「楽しさ度」のうちどれですか?
こう考えると、「重要じゃないけど楽しいこと」を最優先、というのもアリですよね。

さて、「成功哲学系 vs 精神世界系」の話に戻ります。
もうお気づきかもしれません。
この議論には、「願望を持つ」「願望を持たない」の2つの観点しかないのです。
第3の軸である、「やっていて自分が楽しいかどうか」が抜けています。

明確で強い願望を持って、目標に向かって頑張って努力して、自分は「楽しいか」?
執着せず力を抜いて、ただ「ありがとう」と感謝していて、自分は「楽しいか」?
「どちらが正しいか」だけでなく、「どちらが楽しいか」という観点も忘れないようにしましょう。

私は、そのときの気分や状況によって使い分けるスタイルを、楽しみながら「実験」しています。
いくつかの結果を出して現時点で報告できるのは、「やっていて楽しければ、どちらにも同じような効果がある」ということです。
楽しいと感じるかどうか、これがあなた自身にとって、「正しさ」のキーワードではないでしょうか。

「楽しい」という気持ちは、単なる感情ではなく、人間に与えられた「能力」なのかもしれません。
やっていて楽しいと感じることは、「その方向性で正しいよ」という内なるメッセージとも考えられます。
だから、成功者たちの多くが「好きなこと、ワクワクすることをやっていれば成功する」と言うのでしょう。

追伸として、少し深い部分についても書いておきます。
願望を持つのは、人間の潜在意識の力を活用する方法。
感謝するというのは、神様?の力を借りる方法ということになるでしょう。

しかしそのどちらも、この宇宙というか自然というか、何か偉大なもの(サムシング・グレート)に属しているといえます。
人間は、何でも思い通りになる神が、思い通りにならないという体験をしたくて作ったものという説もあるほどです。
もしそうならば、人間もまたそういった存在の一部であり、潜在的に万能の力を持っていると考えられないでしょうか。

つまり、感謝すればうまくいくというのは、大きな存在から見た表現。
強く念じれば実現するというのは、人間という小さな側からの視点ということです。
どちらにしても根本は同じことであり、結果として思いは現実化するわけです。

(2005/12/28)

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