<この村はどんな村?>
若い旅人が、ある村の入り口で、日なたぼっこしている老人に質問した。
「この村は、どんな村ですか?」
「お前さんのおった村は?」
「意地悪な人ばかりで、ケンカばかりしていて、面白くありませんでした」
「この村も、そうじゃ」
次にもう一人の旅人が来て、同じように老人に聞いた。
「この村は、どんな村ですか?」
「お前さんのおった村は?」
「みんな思いやりがあって、優しい人ばかりで、楽しく仲良くやっていました」
「この村も、そうじゃ」
*****
私の知っている女子学生が、レジのアルバイトをしているスーパーのことを、とてもいいバイト先だと言っています。
でも、そこはごく普通のスーパーなのです。
時給も他の店とそう変わらず、いい客もいれば、ちょっと嫌な客もいるはずです。
古参のパートのおばちゃんのことも、「仕事には厳しいけれど、サッパリしていて明るい人」と言います。
でも、「ネチネチはしてないけど、言葉や態度はキツイよね」とも言えるのです。
やさしいという店長も、リーダーである以上、いつもニコニコしているわけにはいかないはずです。
プラス思考でよく例に出される、「グラスハーフエンプティ、グラスハーフフル」という考え方があります。
コップに水が半分入っている場合、ある人は「もう半分しか残っていない」と嘆き、ある人は「まだ半分も入っている」と喜ぶというものです。
事実は「コップの中に水が50%存在する」ということですが、評価や見方は人によってまったく違ってきます。
旅行をすると、有名な観光地には、心ない観光客が捨てていったゴミが落ちているものです。
しかし、目の前に広がる大自然はとても美しく、いい人たちとの出会いがあるのもまた事実。
旅行から帰って、どちらを思い出して周りの人に話すかは、その人の自由です。
ポイントは、ここからです。
最近そのバイト先の店長さんが、「小人数でがんばってくれているから」と、時給を値上げしてくれたそうです。
たしかに、「とてもいいバイト先」だと思います。
実は彼女は、先日まで喫茶店でもアルバイトをしていました。
そこでも「ずっと働きたかった店だし、みんなとてもよくしてくれて、私はラッキー」と、いつも言っていました。
出してもらう食事は美味しいし、事情で辞めるときにはプレゼントまでもらって、たしかにラッキーなバイト生です。
たまたま連続でいい店に当たったから、彼女は楽しくアルバイトをできるのでしょうか。
それとも、どこに行っても笑顔でラッキーだと「言う」習慣を持っているから、その通りの環境が与えられるのか。
彼女の話を聞きながら、上の寓話を思い出しました。
(2005/11/6)