<目標の「達成」と「設定」>
大学時代に、「マーフィーの法則」という成功哲学に出合いました。
「願望をイメージすれば、潜在意識に組み込まれて実現する」といった、聖書を実生活用にアレンジしたものなのですが、けっこうハマりました。
当時、好奇心から私がノートに書いた目標は、次のようなことでした。
「高校の英語教師になる」
「空手の道場を開く」
「高級マンションに住む」
「テレビに出演する」
「本を全国出版する」
「ビジネスを成功させる」
これらはすべて、期限としていた30歳までに現実のものとなりました。
書いたことさえ忘れていて、あとで見返したときにビックリしたというのが実情です。
最近再び成功哲学を深く学んだので、今なら何の不思議もない物理現象として理解できるのですが。
目標を紙に書いて、持ち歩く。
夜寝る前と朝起きたときに、声に出して読む。
強くイメージして、写真などを壁に貼る。
こんなことをやっていれば、たしかに夢はかないます。
目標や期限がより明確で具体的になれば、達成は加速するでしょう。
若いうちには、試してみるのもおもしろいかもしれません。
しかし、流行りの成功法則には、ある「落とし穴」がありました。
目標の「達成方法」については、高額な音声教材をはじめとして、書店にあふれる成功本や、インターネット上の起業家サイトなどで、いくらでも知ることができます。
それぞれの主張すべてに共通する原則があるので、ある程度の効果は期待できそうです。
問題は、目標が達成された結果、本当に「幸せになれるのか」ということです。
結論を書くと、目標「達成」の方法より、目標「設定」の方法のほうが大切です。
「設定」の時点で本心とは違う誤った目標を持ってしまうと、達成までの道のりが、自分をごまかしながらのつらい日々となってしまいます。
達成感からくる喜びはつかの間で、長い間の「幸せ感」にはつながりません。
私自身、一般に成功と呼ばれる物質的な目標を達成したとき、最後に残ったのは虚しさだけでした。
特に、離婚で家族を失ったあとに自分の得たものを眺めたとき、何の価値も感じませんでした。
そして、その空虚感を埋めるために、また次の目標を追いかけるというミスをくり返したものです。
ある自己啓発セミナーの最終日に、参加者が目標を大きな声で宣言するという演習がありました。
「私は今年、営業成績トップをとります!年収3千万円!」
そう叫ぶその人を見て、すごいなあとは思いましたが、本当に好きな仕事なのか疑問にも感じました。
自分が心から大好きなことを目標として「設定」すれば、実際のところ「達成」のテクニックはあまり必要ありません。
自分のことをよく知っていて、本当にやりたいこと、熱中できることを最初に「設定」する。
それを忘れなければ、その分野における「成功と幸せ」は約束されたようなものです。
(2005/1/11)