<プロレスラーになろう>

私は若い頃から格闘技が好きで、自分でもやっていますが、似たようなジャンルに「プロレス」があります。
プロレスの試合にはある程度の筋書きがあり、最後にどちらが勝つのか決まっているところが、格闘技との大きな違いです。
お互いに学ぶべきところが多く、最近では格闘家とプロレスラーの交流も増えてきました。

スポーツと違って、ルールがアバウトなプロレスの試合には、なんともいえない人間味を感じます。
たとえば、有名な5秒ルール。
5秒以内なら、凶器攻撃などの反則が黙認されているようなのです。

少しくらいは、反則もあり。
人間だもの。
人間関係に神経質な人は、この「いい加減さ」を楽しんでみてはいかがでしょう。

格闘技ならまず当たらない大げさな技も、プロレスラーはロープに飛ばされてちゃんと戻ってきて、まともに受けてみせます。
これが、相手のいい面を引き出して自分も光るという、観客論に徹したプロレスの真髄なのです。
自分の主張ばかりで、人の話を聞こうとしない人に、ぜひ見てほしい場面です。

自分が出るべきところは出て、引くべきところは相手の力を借りながら、お互いの総合力でひとつの作品を作り上げる。
ベテランのレスラーほど、力の抜きどころを知っています。
全力疾走でヘトヘトになるようなことは避け、人に任せられる部分は任せて、自分の個性でしかできないことに集中する。

格闘技は、極端に言うと勝ち負けだけの味気ない世界なので、あっという間に試合が終わったりします。
プロレスでは、相手にもメチャクチャ攻撃してもらわないと、自分も観客も楽しめないのです。
仕事なども、プロレスのつもりでやってみると、今までになかった味わいが出てくるかもしれません。

格闘エンターテインメントに徹するプロレスラーを見ていると、筋書きのあるドラマであることを忘れそうになることがあります。
それだけ彼らが真剣に体を張ってやっている証拠ですが、基本的にショーであるという事実には変わりはありません。
熱く激論していても、心のどこかではショーなのだとクールに見つめている感覚、日常生活や人生に応用できるのではないでしょうか。

(2004/10/28)

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