<2つの問題解決法>

蒸し暑い日が続くようになってきました。
今年も、夏がそこまで近づいています。
日本のこの季節には、エアコンは必需品です。

私の少年時代には、家にエアコンなどありませんでした。
もちろん車も同じで、窓を開けて風を入れるのみ。
それでも、暑さが今のように不快ではなかったように思います。

昔は涼をとるために、いくつもの工夫がありました。
風鈴、うちわ、縁側、冷やしたスイカ、学校のプール。
川で泳いで木陰で涼み、蚊帳(かや)を吊って眠りにつきました。

それらは実に、日本的な対処法だったと思います。
もちろん、暑さ自体は何も変わりません。
ただ、実際ほど暑く「感じない」ための工夫だったわけです。

暑さに限らず、さまざまな問題への対処法は、大きく2つに分けられるようです。
問題そのものを変えてしまう、「西洋的な解決法」(エアコンなど)。
問題に対する見方や感じ方を変える、「東洋的な解決法」(風鈴など)。

以前私が関心のあった、人生の「成功」や「幸せ」についての議論。
これらを求める方法も、同じように2つの流派があったように思います。

夢や目標に向けてガンガン行動する、テンションの高い「ドーパミン系」。
多くを求めず与えられたものに感謝する、穏やかな「セロトニン系」。
(ドーパミンは「やる気」のホルモン、セロトニンは「癒し」のホルモンです)

なんとなく前者が西洋的で、後者が東洋的な印象があります。
私の場合は、人生前半のドーパミン系から、後半はセロトニン系へと移行しました。
単に年を取っただけ、とも表現できますが(笑)。

昨今の不景気を反映して、契約社員の突然の解雇が問題になっています。
いわゆる「派遣切り」された中には、危機管理の貯金さえしていなかった人もいるそうです。
明日からの生活もままならないとは、本当に気の毒に思います。

ただ、マスコミで報道されるのが、彼らの怒りや抗議活動の様子ばかりなのが残念です。
まるでほとんどの人が、「西洋的解決法」で会社と対抗しているように見えてしまいます。
もし私が会社の社長なら、そんな人たちを再雇用するのは、少し怖い気がします。

もし、テレビのインタビューで、次のように答える人が一人でもいたらどうでしょう。
「今まで給料をもらって、安い寮まで提供してもらって、とてもありがたかったです。
 今回はこんなことになって残念ですが、お世話になった会社には感謝しています」

新規雇用を考えている社長さんで、果たしてこのような人材を見逃す人がいるでしょうか。
次の職探しをしながらも、これまで安心して生活してこれたことへの感謝を忘れない。
これこそが「東洋的解決法」なのだと思います。

同じようなことは、人生のあらゆる「別れ」においていえるのではないでしょうか。
失恋や離婚のあとに、相手の悪口を言うような人を、私は愛そうという気にはなれません。
死別においてさえ、深く悲しみながらも、それまで一緒にいてくれた感謝を忘れずにいたいと思います。

もっと日常的なことでも、西洋的に「前を向く」より、東洋的に「後ろをふり返る」ことを大事にしたい。
故障した車を手放すとき、「今までいろんな所に連れて行ってくれてありがとう」と言える自分でありたいと思います。
体のどこかが痛いとき、愚痴ばかり言わず、痛くない他の部分に感謝できる人のほうが幸せな気がするのです。

(2009/6/21)

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