少女の肖像(少女の頭部)
Portrait of a Young Woman (1668-70年頃) 44.5X40 ニューヨーク メトロポリタン美術館蔵

 制作年代に関して見解のわかれる作品で、デ・フリースは1660年頃、プロッホ、ビアンコニは60年代前半、ウィーロックは66-67年頃、ゴルトシャイダーは71年頃、プランケルト、スレイトケスは72-74年頃に描かれたものと見なしている。フェルメールは同じような部屋の一角を舞台に限られた状況を描き続けながらも同一の構図は用いないのが通例であったが、この<少女の頭部>はその点全くの例外であって、明らかに<青いターパンの少女>の形に従って描かれている。多くの愛好家を魅了してきたマウリッツハイス美術館の少女像とつねに比較され、そしてほとんどつねに好意的ならざる評価に甘んじてきた作品であるが、批評に際しては両者がそもそも把握において少なからず異なっているこれを考慮に入れねばならぬであろう。理想化が著しい青いターパンの少女像に対して非常に個性的な容貌の少女をあらわしたこの作品は紛れもない「肖像画」だからである。そして肖像画である以上宿命的なことであるが、額の広く目と目のあいだが大きく開いたこの少女の一風変わった顔付きに共感を覚えぬ限り、ひとはこの作品自体を受け容れることもまた容易にはできないのである。