合 奏
The Concert (1663-64年頃) 69X63 ボストン イザベラ・ステュワート・ガードナー美術館蔵

 題材の点でも、また卓子を前景に置き人物を奥に配した構図の点でも<音楽のレッスン>と明白な関連をもった作品だが、寸法が異なっていることから対幅とは考えにくい。登場人物は、真横、真後ろ、四分の三正面という三者三様の角度から捉えられている。弾かれているのはリュートとチェンバロであるが、歌曲の伴奏にこの両者が共に用いられることはまずなかったから、この組み合わせは音楽的には全く異例と言ってよい。とすれば歌とチェンバロを合わせるために音楽教師が自らリュートを手にとって手助けをしつつレッスンを授けている場面と解釈するのが自然であろう。壁にはヤーコプ・ファ ン・ライスダール風の風景画と並んで画家の義母が所有していたディルク・ファン・バビューレンの<遣り手婆>−もしくは現在アムステルダム国立美術館にあるその模写−が掛けられている。フェルメールの絵の画中画がときに寓意的意味を秘めているが、男と娼婦の金銭による愛をとりもつ遣り手婆をあらわしたこのユトレヒト派絵画の反映を音楽に没頭する三人の男女の関係に見出すのには少々無理があるようだ。音楽が古来「調和」の寓意とも切り離せぬものである以上、ウィーロックの推測するようにファン・バビューレンの画中画がその前で繰り広げられる情景との対比のために描き込まれた可能性も考慮に入れねばならないであろう(リュートとチェンバロの他ヴィオラ・ダ・ガンバ、シターンと、ハーモニー、すなわち調和とことに縁の深い弦楽器ばかりが登場しているのに注目されたい)。ブランケルトと共にこの絵と<音楽のレッスン>を一連の単独女性像の後に位置付けるが、デ・フリース、ブロッホ、ビアンコニなどこれらを1660年頃の作品とする見解がむしろ一般的であることを断っておきたい。