中断された音楽
Girl Interrupted at her Music (1661-62年頃) 38.7X43.9 ニューヨーク フリック・コレクション蔵

 17世紀後半のオランダ風俗面には「音楽のレッスン」を題材にしたものが多いが、それらの中には「恋のレッスン」と題されてもおかしくないほどに恋愛と縁の深いものが少なくない。演奏を中断して楽譜を覗き込む紳士とあまり気乗りのせぬ表情でこちらに気を取られている娘をあらわしたこの作品もまたその例外でないことは、おそらくは代表的な古典主義の画家セサール・ファン・エーフェルディンゲンによるトランプのカードを高くかざしたクピドの絵が大きく描き込まれていることからも明らかであろう。ガブリエル・ロレンハーゲンの寓意図像集にもある通り「アモル(=クピド、愛)は音楽を教える」のである。しかしこの画中画が今ではほとんど識別できぬことからもわかるように本図の画面はひどく痛んでおり、卓上の静物の一部を除いてはフェルメールの名人芸を伝える筆触はもはや全く残されていないと言ってよい。が、だからといってブランケルトのようにこの絵を画家の真筆作品のリストから外してしまうのもどうかと思われる。同時代の別の画家に帰すわけにはゆかないし、また後世の意図的な贋作とも考えられぬからである。なお壁に掛けられた鳥籠だけは後代の補筆であってフェルメールの意図にはなかったことが判明している。