<何も変わらない新しい人生>
シェリー。
じいちゃんとばあちゃんと、ふみ子姉ちゃんとドライブして、ちょっと遠くに出かけてきた。
今日はパパの大切な人の家族と、食事会があったんだ。
じいちゃんたちは初対面だったんだけど、とても素敵な家族で、すぐにうちとけたよ。
あれはもう、9年前になるかなあ。
君を車に乗せて、南バイパスを宮崎に向かって走っているときだった。
「パパがママ以外の女の人と結婚したら、寂しい」
もう覚えていないだろうけど、君はそう言ったね。
「いつもパパが横にいてくれると思って、夜は眠るんだよ」
そんな君の気持ちを考えると、これからどうすればいいのか混乱した。
あの頃のパパは、今よりもっと涙もろかったし、気持ちがとても不安定だった。
「パパ、最近ママがすぐ怒る」
「パパは月に1回しか会えないから、やさしくできるんだよ。
ママと新しいお父さんは毎日一緒で、いい子に育ってほしいから、厳しく叱ってくれる。
パパだってシェリーと暮らしていたら、もっとうるさく言うはずだよ」
「…うん、わかった」
この会話は、面会日にオーシャンドームに行く途中の車の中だった。
素直にうなずく君がいじらしくて、自分が情けなくて、あの日パパは君を抱きしめて泣いた。
「ごめんね、ごめんね」と何度も謝るパパを見て、いつも笑っている君も、一緒に泣いてくれた。
ママが今のお父さんと結婚式を挙げた、次の面会日。
「幸せそうなママを見て、涙が出た」
優しい子に育ってくれて、パパは本当に感謝したよ。
最後に二人で、温泉「ぱうぱう」に行ったね(水風呂に飛び込んで、パパに水をかけたろ?)。
露天風呂で遊ぶ君の様子を見ながら、「もう今日で会えなくなるのでは?」という予感がしていた。
大好きなシーガイアや、アンパンマンの映画にさえ、なぜか行きたがらなくなっていた頃だ。
あの頃のさまざまな場面や、忘れられない言葉が次々と浮かんでくる。
今日までのどの一日、どの一時間、どの一分を切り取ってきても、君のことを考えていない瞬間はなかった。
どこに行っても、何をしていても、いつもシェリーの存在はパパとともにあった。
だからこそ、君にいちばんに伝えたい。
そして、もしできることなら、パパに「おめでとう」って言ってほしい。
シェリー、パパは再婚しようと思う。
この歳になって新しい人生を始めることに決めて、不安がないわけじゃあない。
ただ、これだけは言える。
私の娘に対する愛情は、どんなことがあっても揺るぎはしない。
ダメなパパをそのまま受け入れてくれた彼女からの、パパの娘シェリーへのメッセージだ。
「パパが新しい家族と一緒にいても、声がかけづらいとか、自分は邪魔だなんて絶対に思わないでね。
パパとシェリーちゃんは、これからもずっと親子なんだから。
いつでも遊びに来てね、二人が笑顔でいることが、私にとっても幸せです」
(2008/2/9)