<桜の花びら>
シェリー。
久しぶりに会ったね。
今年に入って、たったの2回めだ。
それも君のママと新しいお父さんが見ている中での、わずかな時間…。
でも、会えるだけでも感謝しないとね。
君はあいかわらず、明るくて元気だった。
声が大きいのは、生まれたときから変わらない。
顔も性格も、ますますパパに似てきた。
やっぱり親子だなあ、とうれしくなる。
いっしょに公園で暴れまわって、パパはへとへとになったよ。
たまたまその日は、パパの誕生日だった。
そう言うと、「えっ、ほんと?」と君は驚いていた。
そして、公園に咲いていた花を少しだけ摘んで、葉っぱをハート型に切ったのをつけて、パパにくれた。
「プレゼント、これでいい?」と心配そうに。
うれしかった。
パパにとっては、君に会えたことが最高のプレゼントだよ。
おじいちゃんとおばあちゃんにも会えて、よかったね。
みんな君に会いたがっていたんだよ。
ふみ子姉ちゃんは、病気で入院していて残念がっていた。
「かれん」にクッキーを買いにいくとき、すぐにパパの車を見つけたね。
車に乗るとすぐ、「パパの車のにおいだ!」と言った。
そして、「パパ、『シェリー』を聞かせて」。
ちゃんと覚えていたんだね。
君の名前になった、尾崎豊の「シェリー」。
パパのいちばん好きな曲だ。
歌詞も覚えていたので、びっくりした。
公園では、もう桜が散りはじめていた。
君と会わないうちに、季節もすっかり変わってしまった。
桜の花びらを追いかけながら、
「もし落ちる前に花びらをつかんだら、幸せになれるんだよ!」
と君が言うから、パパは桜の気をゆさゆさ揺らして、どんどん君に花びらを落としてやった。
大喜びだったね。
絶対幸せになれるよ。
あっという間の2時間だった。
「パパのおうちに泊まりたい」という願いをきいてやれなくてごめん。
前みたいに、パパの腕まくらで眠ったり、オーシャンドームで朝から夕方まで泳ぐこともできなくなったね。
もういっしょにお風呂に入ることもないかな。
でも、会えてよかった。
シェリーと会って、パパはすごく元気になった。
これでまた明日から頑張れる。
「夜おふとんに入るとき、いつも横にパパがいてくれると思って眠るんだよ」
という言葉、忘れないよ。
パパも同じだ。
おやすみ。
また会おうね。
(2000/4/10)