<時の流れ>
シェリー。
もう6年生になったんだね。
来年は中学生なんて、信じられないような感じだ。
ずいぶんと背が伸びたね。
毎朝じゃなくなったけど、仕事に行く途中、車の中から君の登校を見送っているよ。
同じ時間に同じ場所で車を止めて、何年も時が過ぎると、いろいろとおもしろいこともある。
あたりまえだけど、そこに居合わせる人とすれ違う人の順番が、いつも同じなんだ。
ある小学生の女の子は、いつもみんなと離れていたけど、今は下級生を連れて先頭で歩くようになった。
すました顔で通り過ぎていた中学生の女の子は、今年パパの高校に入学して、なんとパパの英語の授業を受けてるよ。
別にあいさつを交わしたわけでもないのに、話してみたら、いつもそこにいたパパのことをよく覚えていた。
そして今度は、この前まで小学生だった子が、新しい中学校の制服を着て歩いている。
毎朝バス停まで軽自動車で来る父娘は、あいかわらず仲がいい。
この前は、なぜか男の子から「おはようございます!」と元気にあいさつされたよ。
バス停に立つOL風の女性は、さすがにちょっと老けてきたかな(笑)。
そしてシェリー、パパもこの頃は、ずいぶん白髪が増えたよ。
もうあの頃のように、若々しいパパでなくなっていくのが、ちょっと君に申し訳ないような気がして。
君との思い出がつまった車を、今の車に替えたとき、ナンバーを君の誕生日にしてもらった。
その車もまた、少しずつ古くなっていく。
マンションに住む君が喜ぶかと思って、柴犬の赤ちゃんをもらってきたのが6年前。
そのあとすぐ会えなくなったから、コロは君を一度も見ないまま、立派な成犬に育った。
おじいちゃんとおばあちゃんも、さすがに年を感じるようになってきたみたいだ。
たった一人の孫と引き離してしまったから、パパは一生懸命に親孝行をしてるけど、君とひと目会うことの喜びと比べたら…。
おじいちゃんが今でも、独り言でシェリーの名前をつぶやくことがあるのを、パパは知っている。
もし、孫に会えないまま死んでしまうようなことがあったら、パパはどうしようかと思ってしまう。
この数年間、君にもママにも、そしてみんなにも、いろいろなドラマがあったんだろうね。
そして今も、そしてこれからも、時間はどんどん過ぎていく。
いつか、過去のわだかまりが少しずつ消えて、みんなが笑顔で会えるときがくるといいね。
(2006/5/10)