<独りの露天風呂で>
シェリー。
もう君は、10歳になったんだね。
そしてパパにとっても、父親になって10回目の記念すべき年だ。
誕生日の登校もいつものように見送ろうとしたけれど、なぜか君の姿はなかった。
今年のプレゼントも図書券を届けたけど、もう本を買ってもらったかな。
「いい本をたくさん読みなさい」というメッセージが、今のパパにできるいちばんの教育だから。
パパも小さい頃、じいちゃんとばあちゃんに本と音楽を好きなだけ与えられたのがよかった。
毎朝立ち続けるパパのことが、少し前に写真入りで新聞記事になったよ。
日本の親子みんなが幸せになれるように、思い切って出たんだ(シェリーに残しておきたいという気持ちも実はあったけどね)。
ずいぶんいろんなことを言われたけど、ちゃんとわかってくれる人たちもいた。
今日は仕事のあと、ホテルマリックスラグーンのパウパウという温泉に寄った。
月に一度会えていたときに、よくここに来て露天風呂に入ったよね、覚えてる?
デッキチェアーに寝転んだり、段々にお湯が流れ落ちるところに2人で上ったりしてた。
水風呂が大好きな君はいつも飛び込んで、パパに冷たい水をかけてびっくりするのを見て、大きな声で笑っていたね。
会えなくなる直前にここへ来たとき、なんとなく「シェリーとお風呂に入るのは、もうこれが最後になるかもしれないな」と感じていた。
そんなことを思い出して、今日はパパも頭のてっぺんまで水につかってみたよ。
君は生まれたときからお風呂が大好きで、いつもパパがいれてやっていた。
赤ちゃんのときは、お湯が熱すぎないように、耳に水が入らないように、すごく気をつけてね。
気持ちよさそうで、かわいかったなあ。
ママと別れたとき、パパをなぐさめようと思ったのか、「大きくなったら、シェリーがパパのお嫁さんになってあげるからね」と言う、やさしい娘だった。
シェリー、パパも40歳になった。
「パパがママと違う人と結婚したら、寂しい」という言葉は、今でもちょっとだけひっかかってるけど、毎日楽しく過ごしているよ。
(2004/7/9)