<ありがとう>
シェリー。
久しぶりだね。
君に会えなくなって、3年が過ぎ去った。
春からは、もう小学4年生だね。
パパはこの3年間、君のことを考えなかった日は1日もなかったよ。
ずっと前、朝仕事に行くときに、君がランドセルを背負って学校に通う姿を見かけた。
それからずっと、その時間に君とすれ違えるように、ゆっくりと車を走らせていた。
時には車を止めて、元気な君の姿を遠くから見ていた。
毎日、毎日、君を見守っていた。
新しい家族の中での幸せを祈りながら。
あるとき、北海道に住むパパの友だちから、メールが届いた。
「このままでは何も変わらない。ママが大好きなシェリーの気持ちを動揺させないように、将来に向けて1°だけ角度を変えろ」
そうだ、今わずか1°方向転換するだけで、長い時間を経ると、まったく別の場所に到着することになる。
その翌日から、パパは車の外に出て君を見送ることに決めた。
文字通り、雨の日も風の日も立ち続けた。
一度も目が合うことはなかったから、気づいていないか、パパの顔を忘れたんだと思っていた。
君にも家族にも迷惑をかけたくなかったから、それでいいんだと自分に言い聞かせていた。
それなのに去年の暮れ、ある朝突然に、君がパパのほうを見て手をふってきた。
もし将来いつか、大人になった君と会うときのために、実はパパは、大好きな映画俳優のロビン・ウィリアムスばりの笑顔を練習していたんだ(「ミセス・ダウト」は何度見ても泣けるよ)。
でも、予想もしなかったことがいきなり起きたから、実際はポカーンとしたマヌケな表情を見せてしまったよ。
知っていたんだ。
気づいていたんだ。
車の中に入ってハンドルを握ったら、久しぶりに涙が流れ落ちてきた。
3年間の中で、たった数秒の出来事だったけど、あの瞬間が与えられただけで、パパはあと何年でも頑張ることができる。
パパの人生で、大切な大切な「1°」だった。
こんな小さなことで感謝できる父親になれたのは、シェリー、君のおかげだ。
翌日からまた、元通りの日々が続いている。
それでいいんだ。
素敵なプレゼントをありがとう。
1日だけ、じいちゃんとばあちゃんにも、念願だった君の姿を一目見せてやることができた。
その日も、ちょっとだけ手をふってくれたね。
ありがとう。
何年も孫に会えずに寂しがっている、じいちゃんとばあちゃんのことがずっと気がかりだったから、シェリーのやさしさが本当にうれしかった。
いろいろ複雑な気持ちもあるだろうに、ありがとうね。
みんなみんな、君の幸せを心から祈っているよ。
感傷的になるといけないから、しばらく間をおいてみた。
そして、これは朝に書いているんだよ。
じゃあ、またね。
(2004/1/25)