<誕生日おめでとう>

シェリー。

今日は8歳の誕生日だね。

8年前のこの時間、君はじいちゃんとばあちゃんの家のすぐ近くにある病院で生まれた。
夜中の病院中に響き渡るような元気な君の産声が、今もはっきりとパパの耳に残っているよ。

パパはママのそばで、君がこの世に生まれ出てくる瞬間を見ていた。
それはパパが、初めて「父親」になった瞬間でもあったんだ。

今日の午前中に届くように、お祝いの電報を送ったよ。
「くまのプーさん」のぬいぐるみが、メッセージを持っている。

「くまのプーさん」の、英語の絵本を覚えているかな。
パパがアメリカ人のように読むのが好きで、君には何回もくり返し読まされたね。
パパがいれば、英語ペラペラになれたのにね。

*****

シェリーちゃんへ

おたんじょうびおめでとう。
もう8さいですね。
しょうっがこうは楽しいですか。
あいたいです。

なかもとやすお(パパ)

*****

パパは、本当に君に会いたい。

「全部ひらがなにしてください」
と言うパパに、電報のオペレーターの女性はなんとなく事情を察してくれたのか、
「小学校2年生なんですか。それならお嬢さんは『楽しい』という漢字は読めるでしょうね。他も適当に漢字にしておきますね」
と言ってくれた。

そう、パパは君が今どれくらい漢字が読めるのか、どんなことに興味があるのか、何も知らない。
それでパパは本屋さんに電話して、「小学2年生」という本を毎月届けてもらうことにしたよ。
いつか君と会ったときに、同じ時代の流れを生きてきたパパであるためにね。
苦手なアイドルやアニメの名前とかも、これからはどんどん覚えていくつもりだ。

今までずっとお金や図書券を送ってきたけど、返事がないから、パパからのプレゼントがどうなっているのかぜんぜんわからない。
だからパパは、もしパパが死んでしまっても、君があとからパパにどれだけ愛されていたかわかるように、こうして文章を残しておくことに決めた。

パパは、会おうとしていないわけじゃない。
このことだけは何十年後でもいいから、絶対にわかってほしい。

今年の誕生日はどうしようか迷っていたら、パパの生徒の一人が言ってくれた。
いろいろ問題があって学校にもなかなか来ない子だけど、パパの本「HOW TO 旅」を読んでくれて、パパとはけっこう話してくれる生徒だ。
この言葉はうれしかった。

「シェリーちゃんは、尾崎豊の『シェリー』から名前をもらったんでしょ。『シェリー』は愛する女性を想って作られた曲ですよね。会ったりプレゼントをもらったりすることよりも、父親がそんな名前をつけてくれたなんて、娘としては幸せですよ、絶対」

もうすぐ午前0時になってしまう。
すでに君が生まれた時間は過ぎた。
さあ、また新しい一年間だよ。
シェリーにとっても、パパにとってもね。

パパも離婚して5年。
もう「娘さんの誕生日だね」と声をかけてくれる人も少なくなった。

今日は仕事をして帰ったら、すごく疲れていて眠ってしまった。
夜はテコンドーの道場に行って、帰りにラーメン屋で一人でカレーライスを食べた。
そうしたら、その店でドリームズ・カム・トゥルーの「HAPPY HAPPY BIRTHDAY」が流れたんだよ。
不思議な偶然だった。

*****

午前0時を過ぎたら イチバンに届けよう
お誕生日おめでとう

今日はあなたを取り囲む すべての人達にも
特別な一日

出会えて良かった 素直に言える一年に一度の日

たくさんの素晴らしい出来事が
まだまだ あなたに訪れるように 祈りながら

お誕生日おめでとう

午前0時を過ぎたら イチバンに届けよう
Happy birthday, Happy birthday
Happy birthday to you

今日はあなたを取り囲む すべての人達にも
Very special, Very special
It's a very special day

出会えて良かった 素直に言える一年に一度の日
You're very precious
Have a super great extra good time!

たくさんの素晴らしい出来事が
まだまだ あなたに訪れるように 祈りながら
Happy birthday to you!!

BA-BA-BA-BA-BANG!!!

(2002/6/15)

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