<花とシェリーとママ>

シェリー。

なんでもないことだけど、ちょっと書いておく。
今朝仕事に行く途中、桜の花びらがたった1枚だけ、パパの車の窓ガラスに落ちてきた。
パパの顔のまん前に、少しぬれた薄桃色の花びらがくっついたんだ。
なかなか風流だったから、ずっとそのままにしておいたよ。

花には、君とママのいろいろな思い出がある。
ママと初めてドライブしたのが、生駒高原だった。
すごくたくさんのコスモスが咲いていてね。

パパもママも若かった。
たくさん写真を撮ったよ。
たぶんまだ、どこかにしまってあると思う。

君が生まれる年の春、つまりママのお腹が大きいときに、法華岳公園の菜の花畑にも行ったよ。
パパはそこの展望台に登って、丘の上に咲いた一面の黄色い菜の花に囲まれたママを見下ろして、カメラのシャッターを切った。
パパの最高傑作だ。

あのときのママが、今まででいちばん美しかった。
そしてシェリー、君もいっしょだった。

君が歩けるようになった頃、パパとママと3人で、西都原のお花畑に行ったんだけど、もう覚えていないだろうね。
パパとママが別れてからずっとあとで、大塚台のおじいちゃんと3人で、北のほうから運んできた雪で遊んだのを覚えてるか?
パパがすべって転んで、君は大笑いしただろう。
あの場所だ。

あのときは、コスモスだったのか、菜の花だったのか…。
元気に動き回る君の姿を、パパはビデオカメラで追いかけていたので、どっちだったのかさえ覚えていない。

宮崎は狭い。
どこに行っても、君とママの思い出の場所ばかりだ。
こんなことじゃダメだな。
パパも早く前を向かないと。元気を出さないとな。

(2000/4/5)

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