<落ち着いてきたようだ>
シェリー。
心配していた台風の影響もなくて、今月も予定どおり君と会うことができた。
今日はパパのデジタルカメラに夢中だったね。
いつもの私立図書館に行って、庭でシャッターをきりまくっていた。
君があっという間に操作を覚えてしまったので、パパはびっくりしたよ。
図書館の中のパソコンも、少し教えただけでどんどん使って、好きな本の資料まで印刷して。
私立図書館と市民文化ホールの間の芝生には、「家族」という名前の2つの銅像がある。
ひとつは女の子が子犬と遊んでいるもので、少し離れたところに、彼女を見守るやさしそうな両親の像。
こんな「家族」が、パパの夢だった。
そしてそれを手に入れて、幸せだった。
でもパパは忙しすぎて気持ちに余裕がなくて、「家族」を持っていかれちゃったよ。
その家族の像の前で、君と記念撮影。
うれしいような、寂しいような。
おじいちゃんとおばあちゃんの家にある、シェリーの部屋がやっとできた。
今まで荷物が置いてあったけど全部かたづけて、ときどき遊びに来る君のために、机や本箱、おもちゃなどを置いて、一部屋空けてもらったんだ。
これからはここが、君のもうひとつの部屋だ。
もっと大きくなったら、好きなときにここに来ればいい。
おじいちゃん、おばあちゃん、パパ、シェリーの4人で外に出てお食事。
スパゲティーが食べたいという君のリクエストで、イタリア料理店へ。
量が多いので、明太子スパゲティーを半分こして食べた。
そのあと、ふみ子姉ちゃんが今度引っ越す家をみんなで見に行った。
隣の家の人がめずらしいことにアヒルを飼っていて、それを見た君はすごく喜んでいたね。
家に戻って、お絵描きやトランプをして遊んでいるうちに、あっという間に時間が過ぎて、約束の5時が近づいてきた。
また「シェリー」をいっしょに歌いながら連れていった。
君がずいぶん落ち着いてきたようで安心したよ。
今日君と話をしていたら、「高校生になったら、パパの学校に入る」と言われた。
そうか、もしそうなったときのために、今からがんばっていい学校にしておかないといけないな。
少なくとも、君が自慢できるような立派な英語の先生にならないとね。
パパのクラスにも両親が離婚した生徒が何人かいて、みんながパパのように毎月お金を送るわけではないらしくて、経済的な事情から自分が本当に行きたい大学に進めない子もいる。
もしシェリーが将来、お金のことで夢をあきらめそうな状況になったら、きっとパパはできるだけのことをしてやるだろう。
パパも36歳、さすがに再婚の話も入ってくる。
でも結婚生活は難しい。
相手だけではなくて、その家族や親戚、友人関係までも背負うことになるのだから。
結婚を甘く見てはいけないと実感している。
パパと結婚したいと言ってくれる女性がもしいたとしても、パパの心の中にいつも娘の存在があることや、将来、シェリーのことでたくさんのお金を使うかもしれないという条件が気になることだろう。
もちろん、今お互いにすべてがうまくいっているとしても、人生は病気や事故など、いつ何が起こるかわからない。
いくら慎重に考えても足りないくらいだ。
それでいて、やってみないとわからない賭けみたいなところもあるからややこしい。
まだ君には早すぎる話だけど、一般的に女性にとって結婚とは、自分が死んだら相手の家のお墓に骨を埋める制度だから、将来はしっかり考えてほしくて書いてみた。
(2000/9/9)