<朝日新聞> 2000/10/22


(写真左が中元)

離婚で別れた子に会いたい

父親3人「みんなで声あげよう」

ホームページで意見交換

面接権 法律明記を要望へ

離婚後に子どもと離ればなれになった親が会う権利を確保しようと、父親3人が、インターネット上にホームページを立ち上げた。
1年9ヵ月間、娘と会えず思いを募らせる父。
失そうした元妻を子どものために待ち続ける父。
そして、月1回半日しか娘と会えない父。
ネットで出会った3人は21日、横浜市で初めて対面した。
賛同者を募り、全国の「子供に会えないお母さん・お父さんネットワーク」をつくることにした。
面接する権利や養育費の支払いを法律に盛り込むよう求めていく。

「元の配偶者が再婚して子どもに会えなくなりました」
「お父さんが死んだことにするのは、子どものためでしょうか」――。
3人がつくったホームページ「ファーザーズ・ウェブサイト」には、離婚して子どもに会えなくなったお父さんや、子どもを引き取ったのに養育費を支払ってもらえないお母さんたちがアクセスし、意見交換している。 

主宰者で東京都渋谷区の父親(41)は、左腕の入れ墨を見せてくれた。
「いつか娘に会えた時に父のあかしが欲しくて、娘の名前を刻みました」。
年末に再婚予定の女性も了承しているという。

別れてから1年9ヵ月間、もうすぐ3歳になる娘に会っていない。
離婚の話が出た後、元妻が連れて実家に帰ってしまったからだ。
離婚調停中、何度か訪ねたが、娘を奥の部屋に隠すなどして会わせてくれなかったという。

親権をめぐって高裁まで争った。
が、判決は「3歳に満たない幼児にとっては母親の愛情が不可欠」として母親に親権を与えた。
娘との面接は取り決められなかった。
現在も、学資保険と生命保険を娘のために支払っているという。

北海道の父親(41)は、仕事から帰ってみると、妻の荷物がなくなり、子ども2人もいなくなっていた。
離婚後、面接交渉権を家裁に申し立てたところ、会わせてくれるようになった。
その直後、前妻は借金を残したままにして失そう。
父親は借金を肩代わりして子どもたちを引き取り、再婚した。

来年第三子が生まれる。
「あくまでも2人の子どもの母親は前妻。いつでも会わせたいと思っている」と話す。
しかし、母親からはこの7年間、連絡がない。

宮崎県の父親(36)は月1回、6歳の娘に会うたびに子への思いを、自分のホームページにつづっている。

調停では、親権は母親になったが、二十歳までの養育費支払いとともに、月2回の面接が決まっていた。
養育費を毎月支払っていたが、元妻は再婚を理由に面接を拒否。
再び家裁の調停になり、話し合いの末、月1回半日以下に変更した。
「感情を優先し、会わせるという約束を守らないことで犠牲になるのは子ども。決して男性の立場を守りたいわけではない。これまで制度のことを知らなすぎた」という。

3人は、こうした悩みを離婚経験者らでつくる別のホームページで打ち明けた。
ページの常連とネット上で話し合ううち、「ぐちを言い合うだけではなく、民法の改正につなげよう」とまとまった。

まずは、子どもを引き取った親に対する別れた親からの養育費の支払いと、別れた親が確実に子どもに会うことができる面接権を「共同養育権」として法律に明記するのが狙いだ。

ホームページのアドレスはhttp://kigaru.gaiax.com/home/fathers

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奪い合い目立つ親権

裁判所は「母親」重視

厚生省の人口動態統計によると、離婚件数は毎年過去最高を更新し、1998年度は24万組を超えた。
うち9万組は結婚5年以内で、幼児がいるケースも増えている。

しかし民法では、夫婦共同で親権をもてるのは結婚中だけ。
離婚後には一方に決めなければならない。

届け出による協議離婚では、親権は話し合って決める。
養育費や面接について書く欄はない。

調停離婚や裁判離婚で親権を争う場合は、「どちらが子どもの幸せか」を基準に決めるが、最近は、裁判所が「幼い子どもには母親が必要」として母親側に認めるケースがほとんど。
母親に経済力がない場合、親権は父親が持ち、母親と子どもが一緒に暮らすこともできる。
これは、監護権と呼ばれる。

子どもと別れた親が、子どもとの面接や養育費の支払いを約束することもできるが、強制力がなく守られないことも多い。

厚生省によると、93年度現在で父親から養育費を受給している母子家庭は15%。
16%は、離婚直後は支払われていたが、滞っていた。

母子家庭でつくる団体「しんぐるまざぁず・ふぉーらむ」が昨年8月、シングルマザー116人を対象に調べた。
その結果、子どもが父親と「全く面会していない」は73%、「月1回から月1回以下」が20%、「月2回以上」は6%だった。
母が会わせたいと思っていても、父が住所も知らせずに引っ越し、会ってくれないケースもあるという。

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